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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ433

「日本海軍の潜水艦が大型フェリーを撃沈」潜水艦・どんりゅうが中国軍上陸部隊の人員と装備を満載した大型フェリー4隻を撃沈したニュースは日本国内では通信衛星の破壊によって情報が届かずマスコミが報道することはなかったが、中国政府の発表によって世界を駆け巡った。
「日本海軍によって撃沈されたフェリーは我が国在住の日本人の希望者を送還するために運行していました」日本政府が通信衛星の破壊による情報通信網の遮断への対応に追われていることを見越して中国政府は一方的な虚構を流布し始めた。この記者会見には日本人の記者も参加を認められているが、それは日本の編集部へは連絡不能であり、日本人を参加させていることがこの会見の信頼性の確保するのに有効と言う中国的な計算が働いている。
「これが撃沈された大型フェリーの1つ、孔子号です。本来は上海と日本国内を結ぶ航路で運航していました。舷側に魚雷を受けて爆発したため急激な浸水で横転しました」「これって世越(セウォル)号の写真じゃあないのか」「うん、あのブリッジの形には見覚えがある」広報官がスクリーンに表示した画像を見てアジア人の記者たちは小声でささやき合った。2014年4月16日に発生した韓国の世越号沈没事故はアジア圏では大きく取り上げられたのでマスコミ関係者であればまだ鮮明に記憶している。やはり中国が自国民の大量虐殺と言う日本の凶悪事を周知・喧伝したいのはロシアの参戦によってウクライナ侵攻まで遡って共犯とする批判世論が高まっているヨーロッパのマスコミらしい。所詮、アジアは中華帝国の属領なのだ。
「日本政府には在中国の日本人を送還することは事前に通知していたのですか」「勿論、到着予定時間と運行航路を含めて具体的に通知しています」ヨーロッパ人の記者の英語の質問に若い男性広報官は流暢な英語で嘘を並び立てた。昔から「中国人は息をするように嘘をつく」と言われるが正にその通りだ。全く乱れがない。
「それで日本政府の回答は」「日本政府は我が国在住の日本人はスパイや工作員にされている危険性があるからと受け入れを拒否しました」この虚構で海上自衛隊の潜水艦が大型フェリーを撃沈した理由への伏線が引かれた。
「つまり日本政府は在中国の日本人も国家防衛法や国家情報法によって破壊工作やスパイ活動を始めるに違いないから入国を拒否したい。ところが強制送還されたから入国させる前に撃沈したと言うんですね」「私はそのようなことは言っていません。貴方の推測です。第一、我が国も日本と同様に二重国籍は認められていませんから正式に帰化していない限りは国家防衛法や国家情報法などの愛国義務は適用されません・・・それでも状況を見るとその可能性は否定できませんね。日本軍はロシア軍が合法的な武力行使であることを確認させるために日本人を爆撃機に同乗させているのを知りながら撃墜しました。今回は日本軍による武力弾圧で鎮まった在日外国人の反戦運動が再燃することを危惧してその前に海に沈めた。在り得る話です」広報官の英語の虚構答弁はますます流暢になってきた。この調子ではヨーロッパでの批判世論が反転して日本に向かって来かねない。これではオーストラリアのアポリジニの武器・ブーメランのようだ。ブーメランを日本で広めた昭和42年放送開始の特撮ドラマ「怪獣王子」には自衛隊式階級の国防隊レンジャー遊撃隊が活躍していた。
「大型フェリーに乗船していたと言う在中国日本人の名簿を公開してもらえませんか。日本国内で家族や親族、友人知人を探して取材したいんです」ここで日本人の記者が要望を口にした。この記者としては多くの国民を殺害した海上自衛隊の残虐行為を際立たせて国民の支持を破砕することが目的だったのだが広報官は顔を硬直させて黙り込んだ。
「名簿は個人情報に属するので公開できません」「それは変でしょう。どちらにしても日本大使館には通知するんですよね。それでは大使館で確認しますから結構です」「現時点では大使館には通知しません。現在、日本は通信不能の状態に陥っているようです。したがって通信が回復してから正式に通知します」日頃は冷静な広報官が思いがけず馬脚を現してヨーロッパの記者たちは唇を歪めた笑顔を見合わせた。若い頃から官公庁や企業の記者クラブで勤務して編集部の遠隔誘導を受けながら発表内容を正確に送ることだけを習練してきた日本人の記者と違ってヨーロッパやアメリカの記者たちは真実を独自に探求する取材力を鍛えられている。ここでも一部の記者は自国の船会社の人脈から舟山軍港に4隻の遠洋航路の大型フェリーが集められたと聞き、交通渋滞の案内で陸軍部隊の車列が舟山軍港に向かって移動していると察知していた。だから海上自衛隊の潜水艦が撃沈したのは日本に上陸させる陸軍部隊を満載した輸送艦代わりの大型フェリーであることくらいは察しがついていた。今の関心事は「何人が犠牲になったのか」だが、下手に触れれば第2次世界大戦中の日本の大本営発表並みとは言え数少ない公式発表の機会さえも失いかねない。舟山軍港で確認すれば済む話だ。
  1. 2023/03/20(月) 15:32:19|
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