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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ435

「ロシア軍は戦闘機を多数、発進させています。エスコートは4機では足りません」「フォックスは全機スクランブル、ベア(2空団のコールサイン=仮称)もスクランブル・スタンバイ」八戸基地を発進したPー3Cがオホーツク海に入るとロシア軍は樺太の空軍基地から次々に戦闘機を発進させてきた。宗谷海峡と津軽半島が自衛隊によって封鎖されているためウラジオストックの太平洋艦隊の艦艇をオホーツク海に回航することができず制空権を確保することで地上部隊を乗船させた大型フェリーの安全を確保するつもりらしい。
「千歳ATC(管制隊)から通報、ランディング(滑走中)の民航機が爆発して滑走路が2本とも使用不能になりました」「何だって」そこに届いた防空指令所の報告に北部航空方面隊指揮所は凍りついた。兵器管制幹部の運用幕僚は全機スクランブルを発令した時に民間航空機が1機着陸態勢に入っていることは確認していたがこのような事態までは想定していなかった。
「コリアンだったのか・・・」兵器管制幹部の運用幕僚が指揮所のレーダー・コンソールで民航機のデーターを確認すると韓国からの直行便だった。石田首相は国民の支持率が3分の1であっても日韓の友好関係の修復を明言している現政権に期待して外交関係を維持しているが、大多数の国民は前政権が推し進めた反日外交を支持していて軍の独断専行による武力行使も過激な抗議運動によって当事者の軍事法廷が開けない状況なのだ。それでも日本では新型コロナ・ウィルス感染症に渡航制限が解除されてからは韓国旅行が大人気で、中国の指示を受けた反日活動家が日本の旅行社の団体ツアーで貸し切りの千歳便に爆弾を仕掛けて基地機能の停止を図っても不思議はない。奴等にとっては一石二鳥=一挙両得なのだ。
「三沢、タンゴ、全機スクランブル、ヘッドは武装変換してスクランブル・スタンバイ」この事態に北部航空方面隊司令官から権限を委任されているの防衛部長が善後策を命じた。防衛部長は防衛大学校出身の戦闘機パイロットで戦闘航空団の飛行隊長から着任した。
「しかし、タンゴはASM(空対艦ミサイル)を搭載しています。エスコート・ファイター(護衛戦闘機)には無理があります」「ミサイルが邪魔ならオホーツク海で投棄させろ。AAM(空対空ミサイル)なしでもエスコートなしよりはましだ」すると防衛大学校の後輩になる戦闘機パイロットの運用幕僚が口を挟んだ。こちらはまだ操縦桿の感触が掌に残っているらしく機体重量が増大している戦闘機では空中戦が不利になることを心配している。
ミッドウェイ海戦では多くの哨戒機で捜索しながらアメリカ艦隊が発見できなかったため南雲艦隊はミッドウェイ島の航空基地を爆撃することを決定し、艦上爆撃機に陸用爆弾を搭載して発進準備を進めていた。すると想定外の位置で「アメリカ空母艦隊発見」の通報が入り、草鹿龍之介参謀長は艦船用爆弾への武装転換後の出撃を意見具申した。その作業中に日本側の護衛戦闘機に撃破された編隊からはぐれたアメリカ軍機の爆撃を受けて壊滅的大損害を出した。草鹿参謀長は一刀流の家元でもある武道家のため「攻撃は万全の一太刀で死命を決する」が持論で山口多聞第2艦隊司令官のように「陸用爆弾では致命傷は与えられないが飛行甲板に穴を開ければ着艦不能になる」と言う戦機に即応する発想は浮かばなかったのだ。この戦訓から海上自衛隊では「海軍士官に武道の一本勝負は有害」と課程教育から武道を一掃したが、航空自衛隊では継続しているのでまだ悪しき影響が顔を出すことがある。
「タンゴ001、ホット・スクランブル、ベクター010(飛行方位10度)、クライム・エンジェル010(上昇高度10000フィート=3048メートル)・・・エスコート・スピアー023(矛・海上自衛隊第2航空群のコールサイン=仮称)」「ラージャ、どうせなら俺たちがロシア艦隊を殺った方が手っ取り早くないか」「確かに・・・」スクランブルで三沢基地を発進したFー2のパイロットが意外なことを言ってきた。確かにオホーツク海のロシア艦隊は海上自衛隊のPー3Cで対処してFー2は日本海を新潟に向かって航行してくる主力艦隊を迎撃するためにASMー3を搭載している。それが千歳基地の滑走路閉鎖と言う不測事態を受けて代替えの護衛戦闘機にFー2を当てたのだが、対艦攻撃の準備を整えているのならこれを使えば護衛戦闘機は不要になる。先ほど運用幕僚は余計な意見を述べて反省したが、今度は防衛部長が自分の短慮を後悔することになった。
「タンゴ、エスコート・ミッション・キャンセル。コレクト(訂正する)・ミッション、アタック・ロシアン・フリート(ロシア艦隊を攻撃せよ)」「ラージャ」発進し終わったFー2の編隊に指令を与えて防衛部長は戦々恐々しながら司令官を振り返ったが苦笑してこちらを見ていた。むしろ隣りの席の幕僚長の方が怒っていた。
「自衛艦隊司令官には私から連絡しよう」「はい、お願いします」司令官の言葉を受けて副官がコンソールのダイヤルで自衛艦隊司令部の司令官につないでヘッド・セットを手渡した。
  1. 2023/03/22(水) 14:45:35|
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