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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ440

「RQー4がロシア艦隊を捉えました」「間に合って良かった・・・」オホーツク海と東シナ海の戦闘が始まった日、航空総隊司令部には宇宙作戦隊から「日本の監視衛星と通信衛星に中国の物と思われる飛翔体が接近している」との警報を受け、続いて監視衛星を運用している内閣府から「監視衛星の映像が遮断した」と言う緊急事態の連絡が入った。そのため那覇基地と小松基地に展開している偵察航空隊のRQー4グローバルホークを発進させて監視を開始していた。グローバルホークは最高速度は347ノット=時速653.9キロと早くはないが上昇限度は通常のロシア軍の主力戦闘機・スホーイ35の飛行高度18000メートルを超える19800メートルであり、航続距離は22779キロと日本海や東シナ海の全域をカバーできる。前回、中国の輸送艦隊が奄美諸島に向かっている時に中国本土からの強力な電磁波と日本国内の電子通信企業で雇用されている中国系技術者の破壊工作によって全国同時のシステム・ダウンが発生したが、今回は日本側も対策を講じているので衛星の破壊と言う荒技を使ったようだ。しかし、前回ほど重大な影響は与えられないはずだ。
「ロシアの海軍と空軍は冷戦時代にはアメリカに対抗していた強力な軍だ。中国とは比べ物にならない」「日本人は日本海海戦の完全勝利で過小評価しているがユーラシア大陸を一周して疲れ切っていた敵を準備万端整えて待ち構えていれば完全勝利するのは当然だよ」「陸軍も満洲で辛うじて勝ちを拾った現実を忘れて無敵を気取るようになった日露戦争が昭和20年の敗戦に至る序曲だったな」総隊司令部指揮所ではスクリーンに映し出されたロシア艦隊の映像を見ながら防衛大学校の同期の総隊司令部の運用幕僚と陸海自衛隊の連絡官が話し合っていた。前回の第5航空軍のPー1が東シナ海で撮影した中国の輸送艦隊に比べてロシアの艦隊は規模が格段に大きい上、隊形も完璧だ。これだけで指揮官の能力と各艦の艦長以下の乗組員の操艦練度の高さが判る。航空レーダーの映像では前回の戦訓を踏まえて海上自衛隊の対潜哨戒機を阻止するべく多くの戦闘機が上空で護衛している。
「手順としては小松からFー35を発進させて三沢から来るFー2に艦隊を攻撃させる。次に厚木のPー1が残った艦艇を全滅させる・・・だったな」「問題はオホーツク海でFー2の半数が撃墜されたことだ。おまけにASMー3を搭載していたから残弾数はかなり心細くなったようだね」海上自衛隊の連絡官の指摘に運用幹部は気まり悪そうな顔でうなずいた。航空総隊としてはロシア軍の航空戦力の主力は大陸の日本海沿岸に配備されていると見ていて、本格的侵攻に備えて三沢基地のFー35の2個飛行隊を小松基地に展開させた。同時に百里基地のヘッド、築城基地のタンゴを里帰りさせてオホーツク海のロシア艦隊の動向に対処させる作戦計画だった。それが裏目に出たのは昨日のことだ。
「大体、国産の地対艦ミサイルをFー15に搭載できないのは何故なんだ」「加倍政権の時に搭載できるように火器管制装置の改修を計画したんだが当時の商売人政権は『国産ミサイルよりもアメリカ製を買え』と迫って常軌を逸した改修費を要求してきたんだ。そうなると財務省はFー15とFー2は使用目的が違うから2機種を取得しているんだろうと毎度の論法を弄して財務省に絶対服従の内局も反対に回って一巻の終わりだった」「そのツケを有事に生命で払わさせられてるんだな」海と空の同期の会話を聞いていた陸の連絡官は昨日の戦闘で第3地対艦ミサイル連隊の88式地対艦誘導弾がロシア軍の艦隊に随伴していた小型船が放射する同じ周波数のレーダー波によって誤誘導されて一発も命中せず、結局、網走港に接岸されて戦車と地上部隊を上陸させたことを思い出した。仮に第3地対艦ミサイル連隊が妨害対策を強化している12式地対艦誘導弾を使用していればこのような事態には陥らなかったかも知れない。そう思うと無念の歯噛みで最近は歯茎が弱くなった歯が折れそうになった。
「小松、全機スクランブル」「Fー35は航跡がハッキリしないから見失うな」「ラージャ」階下の防空指揮群が接続した入間基地の中部防空指令所の音声が総隊指揮所にも聞えてきた。スクリーンに映っているロシア軍の編隊は一目では数え切れない機数なので初動とは言え4個飛行隊で迎え討つしかないだろう。中部防空指令所は三沢基地の北部防空指令所からステルス機のFー35の機体がレーダー波をあまり反射しないため航跡の画像表示が不鮮明になることを助言されているようだ。中部航空方面隊の担当空域を拡大しているスクリーンの隅の山形県上空ではFー2の編隊がKCー767から空中給油を受けている。今飛んでいるヘッドの飛行隊長の話では古巣で再会した2個飛行隊でロシア艦隊に痛撃を与えて昨日死んだタンゴの飛行隊長と2人で「トラトラトラ=ワレ奇襲ニ成功セリ」を電文の替わりに絶叫するつもりだったらしい。そう言えばタンゴの飛行隊長は阪神ファンで「六甲おろし」が十八番だった。しかし、全弾命中させても日本海海戦や真珠湾空襲のような大戦果とは言い難い。
  1. 2023/03/27(月) 16:03:14|
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