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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ451

「ロシア軍の揚陸艦が柏崎と上越に着岸しました」「何隻だ」「柏崎が3隻、上越が4隻、計7隻です」「築城から空対地ミサイルと爆弾を搭載したF―2を向かわせます」天皇がオンラインでの出席を取り止めてからも自衛隊とロシア軍の攻防戦は継続していた。今日の中央指揮所には統合幕僚長と陸海空幕僚長だけでなく陸上総隊、自衛艦隊、航空総隊の各司令部から幕僚長が招集されていて指揮所から届く作戦の推移を詳細かつ具体的に解説している。
結局、ロシア艦隊を護衛する戦闘機は小松基地のPAC2の射程距離内には入らなかったが、海上自衛隊が佐渡島付近に派遣していた通常型護衛艦の中距離艦対空ミサイルで16機が撃墜された。これで空対空ミサイルを搭載した戦闘機はなくなったと判断した航空自衛隊はFー35とFー15に護衛戦闘機との空中戦を開始させて空対艦ミサイルを搭載したFー2による攻撃を開始した。ところが揚陸艦を護衛している巡洋艦や駆逐艦が強力な妨害措置を講じながら長射程の艦対空ミサイルを発射して多くが撃墜された。このため空対艦ミサイルと護衛艦の艦対艦ミサイルによって数隻に損傷を与えたものの7隻の着岸をゆるしてしまったのだ。
「これ以上のFー2の損失は拙い。陸の地対艦ミサイルが新潟に展開していただろう。あれにやらせろ」「ただいま大日原演習場がロシア軍の戦闘機の攻撃を受けている模様です」「ロシア軍は増援の戦闘機を派遣しました。現在、日本海側はAWACS1機の探知情報なので海面ギリギリの低高度で飛来する機体を見逃したのかも知れません」」統合幕僚長の指示に陸上総隊と航空総隊の幕僚長が回答した。陸上自衛隊が派遣した富士特科教導隊の88式地対艦誘導弾は阿賀野市の大日原演習場に展開しているが陸上自衛隊が演習場以外に陣地を構築できないことは中国とロシアも承知しているので迷うことなく徹底的な集中攻撃を加えてくる。
「特科教導隊のSSMー1は教育展示用だから実弾の保有数が少ない。破壊されると陸は海上防衛から手を引くしかなくなる」「何で保有数を増やさなかったんだ。戦争が始まってからと言うもの攻撃を途中で中止する理由はそればかりじゃあないか」総隊幕僚長以下が諦め顔を見合わせていると釜田防衛大臣が怒気を含んだ口調で質問した。しかし、自衛官と対面の席に並ぶ事務次官以下の内局の官僚は気まずそうに顔を背けた。
「我々は継線能力の欠落が我が国の防衛態勢の最大の弱点だと指摘して武器・弾薬、航空燃料の保有数の大幅増を要求したんです。しかし・・・」「過去の実績から見て使用しない武器は会計検査の指摘事項になる可能性が高く内局としては受け入れられませんでした。ミサイルや弾薬の増量も弾薬庫を増設しなければならず地元住民の反対を招くことになりますから基地対策上好ましくありません。ましてや航空燃料の大幅な増量は新たに複数の燃料タンクの建設が前提になるので現在の基地の面積では用地の確保が難しく無理です」事務次官は不満を鬱積させている自衛官に非難される前に言い訳めいた説明を始めた。
「だからって岩場の口車に乗って魅力化を図るために隊舎を個室化するのに折角の防衛予算を浪費したんだろう。1会戦分の武器と弾薬は間もなく打ち終わりになる。アメリカから弾薬の供与は受けているが武器は国産化を進めているから必ずしも規格が一致しない」「大日原から連絡です。演習場全体に爆弾とナパーム弾を投下されたため壊滅状態に陥ったそうです」国家公務員としては同格とされている統合幕僚長と事務次官が正面対決していると陸上総隊司令部に接続しているモニター画面が戦況を報告してきた。やはりロシア軍は昨日の北海道・網走への上陸で遠軽演習場を空襲したが、ロシア軍では考えられないほど短時間で武装転換を終えた航空自衛隊の戦闘機に攻撃されて戦果不十分なまま撤退した。その結果、網走港に停泊して人員と物資の陸揚げを待っていた2隻を含む大型フェリー4隻を地対艦ミサイルで撃沈された。それを教訓として今日の演習場への攻撃を徹底的に強化したのだろう。
「ナパーム弾はCCW(特定通常兵器使用禁止制限条約)で禁止されているだろう」「あの条約が禁止しているのは民間施設と文民の所在地域に対する使用であって軍事施設の演習場には適用されません」唐突に東京六大学の私立大学法学部出身で元法務省政務官だった防衛副大臣が専門知識を披露したが東京大学工学部出身の陸上幕僚長にはたき込まれた。
「それで我が方の損害はどうなんだ」「Fー35は無事ですがFー15は12機が撃墜されました。Fー2は14機撃墜です」「護衛艦は2隻が空対艦ミサイルの至近破裂でレーダーが損傷して戦闘不能になりましたが航行に支障はありません」「先ほど報告した通り特科教導隊が甚大な損害を受けたようです。人的損害は確認中です」釜田防衛大臣はオンラインで閣議に出席していることを忘れたようで意外に真面目な仕事ぶりを中継してきた。
「これでは陛下はご宸襟を悩まされるはずです。昭和の陛下とはお育ちが違うのです」ここで天皇に替わってモニターに映っている宮内庁長官が元警視総監らしい冷静な感想を述べた。
  1. 2023/04/07(金) 14:53:23|
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