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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ465

「国後島をミサイルで攻撃できないかな」矢臼別演習場に埋設したコルゲート・メタルの第5旅団司令部では兵棋(敵味方を意味する駒)を並べた道東の地図を眺めながら幕僚たちが呟いていた。戦車や火砲などの重装備を陸揚げできないロシア軍は国後島から攻撃ヘリコプターを飛ばして執拗に攻撃してくる。当初はジェット攻撃機のスホーイ25だったが第5旅団に編入された第1高射特科群第303、304高射中隊の改良ホークが撃滅した。ところが改良ホークはこれで射ち止めになったため第5高射特科隊の11式短SAMに代わったが射程距離約10キロと能力が劣るので選手交代した攻撃ヘリコプターに返り撃ちになることが多く普通科の隊員の携帯SAMの方が戦果を上げている。そのためロシア軍はウクライナ侵攻で消耗した残存戦力から使える兵器をかき集めているようで当初は最新鋭のカモフ52だったが、最近は一世代古いミル28が主力になっていてそのうちアフガニスタンで活躍したミル24が登場するのではないかと言われている。しかし、戦力で圧倒している現状を維持するためにはこちらも第5旅団に編入された北千歳の第1地対艦ミサイル連隊の88式地対艦誘導弾で国後島の航空基地とミサイル陣地を破壊して元から断たなければならない。
「88式の射程距離は200キロから150キロだから87キロの根室からなら十分届きます」「その言い方は連立与党だった社民党がソ連への脅威になると批判したのを封印するための詭弁だろう。ここでは200キロとハッキリ言えば良いんだ」3部の特科の幕僚の見解を部長が訂正させた。新潟に襲来したロシア艦隊も艦隊艦ミサイルを地上攻撃に使用したらしいが、1発で艦艇を撃沈する威力があるのだから地上での破壊力も十分だ。むしろ動かない地上の施設なら全弾命中だろう。対米英中戦争末期、航空機による体当たり攻撃を発案したのは陸軍の方が早かったが、固定目標なので搭乗員は突入直前に脱出して落下傘降下する手順だった。ところが回避行動をとる艦艇を目標とする海軍は命中するまで操縦する必要があり、搭乗員に犠牲を強いる極悪非道な戦術になって臆病と呼ばれることを嫌う陸軍も模倣した。
「問題は防衛出動が発令されてない現状で敵基地攻撃が容認されるかです。石田内閣も連立与党との神学論争だけで終わってしまって国会での議論は有ったのか無かったのか・・・」「正大党の場合、防衛問題を日蓮の立正安国論で『南無妙法蓮華経を唱えることが安全保障だ』と考えるから話が噛み合うはずがないんだ」この1部の幕僚は防衛大学校の研究課程に入校した時、連立与党の正大党の背後にある巨大宗教団体を敵視する日蓮宗系の過激派団体の折伏(勧誘)を受けているので批判はしても思考形態は同じ穴の狢(むじな)に過ぎない。
「おまけに野党は看板は替えても社人党の非武装中立論だから本音では防衛力を持つこと自体に反対だ。結局、海上にトマホークを持たせるかって予算の話になるはずだったが・・・」「そこまで行かなかった」今度は4部の幕僚たちが予算に絡めて嘆き節を続けた。
「しかし、各種ミサイルの追加が届かないようでは戦力は先細りです。叩ける間に叩き潰しておかないと道内でゲリラ戦を展開する以外に我々にできることがなくなります」部下の幕僚たちの嘆き節を受けて4部長が旅団長と副旅団長、旅団幕僚長に問題提起すると3人は顔を見合わせてて目だけで議論した。数秒後、旅団長が決断を下した。
「次にロシア軍が攻撃ヘリを飛ばしたら緊急避難として基地を破壊する」「しかし、領域外への武力行使は・・・」「北方領土は我が国固有の領土だろう。日本の警察予備隊が警察権を行使して何が悪い」旅団長が先祖返りして警察予備隊と自称したのは治安出動で戦闘を遂行している現状に対する自嘲気味な皮肉だ。
「問題は航空のFー2のように空対艦ミサイルと搭載していたからロシア軍の空対空ミサイルに殺られた何でことにならないように防空態勢も万全にしておかなければならん」「航空の基地警備隊が携SAMを持っているはずです。警護を要請しましょう」旅団幕僚長の指摘に3部の運用課長が答えた。入間基地からレーダーを破壊された根室分屯基地に展開していた第2移動警戒隊はロシア軍の参戦が確実になった時点で釧路演習場に移動したが、ここには陸上自衛隊が陣地を構築しているため網走や稚内と同じく基地警備隊は分屯基地を守っている。
「国後からヘリと思われる航跡が6機発進した」数日後、第2移動警戒隊からの防空情報が道東に配置されている陸上自衛隊の各部隊に伝達された。第1地対艦ミサイル連隊は夜間に矢臼別演習場の陣地から根室分屯基地に移動したが途中にある第6高射群の各高射隊が全滅した展開地跡では戦死した隊員たちの亡霊が整列して出迎えてくれた。
「目標ロシア軍国後島航空基地、距離87・4キロ、個別目標1中隊格納庫4棟、2中隊燃料タンク5基、3中隊と4中隊はミサイル陣地」JTSQーW4=指揮統制装置では航空自衛隊の偵察機が撮影した画像を元に目標の位置を入力した。したがって全弾命中だった。
  1. 2023/04/21(金) 15:52:20|
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