2023年は4月20日にマーシャル群島付近で台風1号が発生しましたが昭和31(1956)年の4月25日に台風3号が鹿児島県の大隅半島に上陸して本土への台風上陸最早(最速ではない)記録になりました。
この台風の異常さは2番目に早かった昭和40(1965)年の台風6号が1カ月以上遅い5月27日に千葉県の房総半島をかすめたことでも明らかで、地球温暖化で海水温が上昇して台風が発生し易くなっていると言われる今年でもまだ3号までは発生しておらず、1号も日本に接近もしていません。
台風3号は昭和31(1956)年4月16日に西太平洋のミクロネシア南部のカロリン諸島で発生しました。そのまま発達しながら北西に進み、4月21日にフィリピン北部のルソン島に上陸する頃には気圧935ヘクトパスカル、最大風速150キロノット=秒速75メートルの強力な台風に成長していました(通常、季節外れの台風は海水温が低いためあまり発達しない)。
台風3号はフィリピンに甚大な被害を与えると頼んでもいないのに進路を北東に転換して南シナ海を北上し、台湾の太平洋側をかすめて通過すると東シナ海に入り、24日の午前6時頃に宮古島を通過して沖縄、奄美諸島に沿うように北上を続け、午前7時30分に通常の進路のように九州を横切るのではなく種子島、屋久島の方向から大隅半島に上陸しました。
ところが気象庁・測候所が上陸して1時間半後の午前9時に「台風が消滅した」と発表したため「台風が消えた」と大騒ぎになりましたが、これはおそらく海水温が低い東シナ海を通過している間に勢力が急速に衰え、上陸直後に台風と熱帯性低気圧の分類基準である低気圧域内の最大風速が秒速17.3メートル=34キロノット以上を下回ったため台風としての指定を解除したことを誤解されたのではないでしょうか。
富士山測候所の大型気象レーダーが設置されたのは昭和39(1964)年、運用開始は翌年ですが、気象庁は昭和29(1954)から復帰前の沖縄を含む全国20カ所の測候所で気象レーダーを運用していますから「台風が突如消滅する」と言う異常現象を観測すれば世界的ニュースとして歴史に残ったはずです。
敗戦後の鹿児島県は毎年のように台風による甚大な被害を受けていてこの台風までにも敗戦直後の昭和20(1945)年9月17日と18日の枕崎台風(上陸した地名を冠した)、昭和24(1949)年6月18日から22日のデラ台風(占領下でアメリカ式に女性の名前を冠するようになった)、同年7月17日のフェイ台風、同年8月13日から18日のジュディス台風、昭和25(1950)年7月1日のケイト台風、昭和26(1951)年10月10から16日のルース台風、昭和29(1954)年8月16日から18日の台風5号(独立を果たして日本式に番号を付与するようになった)、同年9月10日から13日の12号ジュン台風(占領下の風習に慣れた国民の声で併用した)、そして昭和30(1955)年9月28日から30日の台風22号が大暴れしました。
- 2023/04/25(火) 13:48:44|
- 日記(暦)
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0