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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ471

新潟でも陸上自衛隊が苦戦していた。新発田駐屯地の第30普通科連隊は阿賀野市の大日原演習場は富士から展開してくる教導特科隊に譲り、県民が避難した新潟市から村上市にかけての市街地のビルの地下を陣地にしていた。ところが大日原演習場の富士教導特科隊の陣地は日本海上空での空中戦の直後に空襲を受けて壊滅し、続いて同時多数に発射された弾道ミサイルのうち海上自衛隊のイージス艦が射ち漏らした数発が射ち込まれて市街地も廃墟と化してしまった。部隊は弾道ミサイル攻撃が始まった時点で内陸部に移動していたが途中でロシア軍機の空襲を受けて損害を受けた。何よりもヘリコプターによる空中機動展開を標榜する第12師団は新潟と長野県内には3個普通科連隊を配置しているだけで戦車は消滅し、特科や施設などは北関東に集中している上、治安出動を維持するため日本海側へ移動できないままロシア軍を上陸させてしまった。こうなれば地の利を活かしてゲリラ戦を展開するしかない。
「ロシア軍の輸送機が新潟空港に着陸するようです」「インターセプター(要撃機)はロシア軍機とのドッグ・ファイト(空中戦)で手一杯です」「イージス艦は弾道ミサイルに備えて温存しなければなりません。艦対空ミサイルは射程距離が短いので届きません」「陸は・・・着陸態勢の輸送機なら携SAMでも落とせるだろう」「ラージャ」浜松基地から発進したFー15が日本海上空でロシア軍の護衛戦闘機と空中戦を始めた隙に先ほどパイロットがアントノフ124ルスラーンと報告した10機の輸送機が新潟空港への着陸態勢に入った。入間基地では中部防空指令所と階上の航空方面隊指揮所の間で矢継ぎ早に議論が交わされた。ヨーロッパの航空ショーに出品されたアントノフ124の商品カタログによれば離着陸距離は2530メートルとあり、新潟空港の第2滑走路は2500メートルなので30メートル足らないが、その程度は誤差の範囲なのだろう。X型に交差している第1滑走路は1314メートルだ。
「陸から回答、新発田駐屯地の30普連では弾薬庫に収納していた携帯SAMはすでに射ち尽くしてしまった。空港の監視要員に着陸した輸送機のタイヤを狙撃させるが空港周辺はロシア軍が占領しているので有効射程まで接近できない」ここでも武器弾薬の備蓄不足が露呈した。おまけに装備品の不在が致命的になっている。第12旅団の高射特科部隊は宇都宮駐屯地の第12高射特科隊だが93式近SAMと81式短SAMの1個小隊ずつしかない。千葉市の下志津駐屯地の高射学校には87式自走高射機関砲が8両、茨城県の土浦駐屯地の武器学校にも教材用が1両あるが主力は北海道で、第2高射特科大隊3中隊に8両、第7高射特科連隊の4個中隊に32両が集中配備されている。81式短SAMを導入した時、陸上自衛隊はL90高射機関砲の後継として国産で設置式の81式短SAMを選び、新設する基地防空隊用としていた航空自衛隊はドイツとフランスが共同開発した自走式のローランドを選んだのでこれを知ったマスコミは「逆じゃないのか」と困惑していた。結局、東芝の開発費を補完するため81式短SAMを採用せざるを得なって航空自衛隊も押しつけられたが、ローランドはフォークランド紛争や湾岸戦争でも威力を発揮したのに対して81式短SAMは演習の防空戦闘でさえ脆弱性と能力不足が指摘されている。あの時、航空自衛隊を「舶来趣味」、陸上自衛隊を「国粋主義」などと誹謗し合う前に運用の立場で真剣に検討するべきだったのは間違いない。
「撃てないか」「はい、難しいです」連隊本部の特別命令を受けて狙撃手の陸曹2名が新潟空港から500メートルほど離れた位置にあるビルの最上階の割れた窓から着陸するアントノフ124を狙撃していた。ロシア軍は始めから新潟空港に強行着陸するつもりだったようで滑走路の周囲にはミサイルを射ち込んでおらず空港を見渡せる射座は確保できた。しかし、着陸前に下ろした車輪や操縦室の窓を狙うにはM24狙撃銃の800メートルの射程距離でも足らず、滑走中は空港ターミナルや航空救難隊の格納庫に邪魔されて姿を捉えることができない。海岸側や川岸はロシア軍の地上部隊が十重二十重に配置されていて遮蔽物がない分、容易に発見されてしまう。兎に角、ここまで接近できたのも奇跡だった。
「やはり着陸するにはギリギリの距離なんだな」「滑走路の端に着陸しています」1機目は見送り、2機目に狙いを着けたが、アントノフウ124の巨体は阿賀野川の対岸の住宅地の屋根を吹き飛ばすのではないかと心配になるほど低空で接近してきて、川を越えると即座にタイヤを着地させている。アントノフ124の車輪は胴体下部から出す左右2本の主脚には5個ずつ2列のタイヤ、機首の下の2本の脚には横一列に2個ずつ4個のタイヤが並んでいて多少の無理には耐えられそうだ。しかし、感心している場合ではない。
「4機目か、このまま増援部隊を展開させてしまうしかないのか」「携SAMの追加が届けば打つ手もあるんですけど」「中国軍は海上が東シナ海で阻止しているから九州に上陸される可能性は低いんだろう」常に冷静沈着な狙撃手には珍しく愚痴と苦情が止まらなくなった。
  1. 2023/04/27(木) 15:49:35|
  2. 夜の連続小説9
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