fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

5月12日・これは暴動ではないのか?主婦が皇居の台所に乱入した。

敗戦から1年にならない昭和21(1946)年5月12日の日曜日に皇居内に赤旗が翻り、宮内省(当時)の食堂に主婦が乱入して勝手に飯を喰い漁る前代未聞の事態が発生しました。
この日、東京都世田谷区下馬で主婦を主体とする「米よこせ」区民大会が開かれ、世田谷区では特に頻発していた米の遅配や欠配を糾弾している間に空腹から興奮状態になり、十分で確実な米の配給を要求する決議に続いて30歳の左翼映画監督が「天皇は何を食べているのか。この決議を聞いてもらいに皇居へ行こう」と扇動すると主婦や労働者が会場近くの道路を通りがかった数台のトラックに分乗して宮内省前の坂下門に向かったのです。この時、荷台では「不敬罪で捕まるんじゃあないか」と心配する者と「同情して何かくれるかも知れない」と言う楽天家に分かれて議論していたそうです。
坂下門に到着すると警備に立っていた数名のアメリカ軍憲兵が歩み寄りましたが、日本語ができる1名が片言で「ナンデスカ」と声をかけたので「天皇にお会いしたい」と答えると「ソウデスカ、ドウゾ」と言って通過させたため皇居の中へ乱入したのです。
この時、坂下門では憲兵から連絡を受けた日直の宮内省の高等官が駆けつけて要件を訊こうとしましたが「門前払いとは失礼だ」と非難されたため門に入れると誰が用意したのか日の丸を赤く塗りつぶした赤旗を掲げながら歩きましたが声を上げる者もなく静々と奥に進み、宮内省の玄関に到着しました。
そこで日直の高等官が再び要件を訊くと「玄関払いとは何事だ」と言いながら押し入るように建物内に踏み込み、普段着=和服に割烹着姿で子供の手を引き、背中に背負った主婦たちが「天皇の台所はどこだ」と言いながらペタペタと草履履きの足音を立てて廊下を歩き回ったので一般職員が咄嗟の機転で職員用の食堂・菊栄会に案内しました。
すると勝手になだれ込んだ主婦たちは配膳台の上の鉢で湯気を立てている山盛りの白飯を目にすると先を争って手掴みで握り飯を作り始めて1つは子供に与え、1つは自分が頬張り、3つ目以降は和服の袖に押し込み始めたのです。この日のオカズは鮪の刺身でしたが白飯に夢中になって隣りに置いてある皿には手を触れませんでした。
この時、扇動者の映画監督ほかの共産党員は置いてある食べ物=メニューと量を記録していましたが「これって闇米じゃあないよね」と言い合いながら悪ぶれることなく握り飯を作り続ける主婦たちを見て「これでは窃盗罪になる」と制止しましたが誰も手を止めなかったそうです。
この騒動の最中、昭和の陛下は宮殿が戦災で焼失したため300メートルほど離れた吹上御苑の紅葉山にある御文庫(おぶんこ=大本営防空壕)の仮御所で侍従の報告を聞いておられたそうですが、腹が膨らんで満足した主婦たちとは別に扇動者たちが大会決議文を陛下に手渡すことを要求したため高等官は2日後の回答を約束して退去させました。
ところが扇動者の映画監督が朝日新聞にこの顛末を投稿したので2日後には記事を読んだ多くの賛同者が集まりましたが、宮内省の職員が厳重に各門を固めて代表者5名だけを入場させて何らかの処置で事態を収束させました。詳細は明らかになっていません。
  1. 2023/05/11(木) 15:25:11|
  2. 日記(暦)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<続・振り向けばイエスタディ486 | ホーム | 続・振り向けばイエスタディ485>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/8411-b0fc0417
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)