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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ488

「基地を眺めてると嘉手納を思い出しちゃうわ」福生市のマンションは自衛隊の官舎よりも横田基地に近い上、6階なのでベランダからは格納庫や第5空軍の建物から外れた滑走路が見える。中でも夜のランウェイ・ライトは那覇基地を思い出してベランダで梢と並んで缶ビールを飲みながら眺めていても飽きることはない。あの頃、自家用車を持たなかった私は嘉手納基地へはバスで行くしか足がなく、展望名所になっていたモンテカルロの丘には嘉手納町役場の前で下りて1キロ以上歩かなければならなかった。それでも帰りは軍用機の写真撮影が趣味で毎週通っている先輩が車に乗せてくれたが、そのような趣味の男性に彼女がいるはずがなく助手席に梢を座らせると妙にハシャイでいた。
「普天間は愛国知祖之塔からは正面に見えたけど・・・」「今は摩文仁に移動させられたんだよな。あれは大田昌秀の勝手な策謀で愛知県の部隊が全滅した史実は無視しているんだよ」沖縄戦における愛知県の戦没者慰霊碑の愛国知祖之塔は私が勤務していた頃には沖縄戦で愛知県の多くの将兵が戦死した激戦地の前田高地=浦添城址にあった。ところが琉球大学教授として沖縄のエリート層を反日反米親中に洗脳して知事に当選した大田昌秀が日本陸軍第32軍司令部が全滅した摩文仁を反戦平和の名を借りた反日反米の拠点施設化するため1996年に沖縄本島内の所縁の地に点在していた慰霊碑を集めたのだ。摩文仁には国籍を問わず戦没者の氏名を記した「平和の礎」と言う慰霊碑があるが、戦前には存在していない中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国に分類している。昔の愛国知祖之塔の跡地は普天間基地の滑走路の真正面にあり、現在では着陸するアメリカ軍機を墜落させるための鉄片を貼りつけた風船の放出やパイロットへのレーザー・ビームの照射などの妨害活動の現場になっている。
「その点、山形の塔はまだ糸満の真栄田高地にあるんだぞ。山形の塔は歩兵第32連隊が昭和20年の8月29日まで籠っていた地下洞窟壕の跡地に建立されているから先に全滅した第32軍に擦り寄ることを潔しとはしなかったんだろう。山形県人だから大田の卑劣な政治的策謀を見抜いたのかも知れないな・・・今度、山形に先祖の墓参りに行こう」話が随分と反れて平和な気分の旅行計画になってしまった。私の岡崎市と蒲郡市を除く愛知県に対する嫌悪感は相変わらずで愛国知祖之塔と山形の塔の対応の違いで火が点いたようだ。父方の祖父の出身地の山形県最上郡戸沢村には佳織を連れて墓参に行っている。あの時、お世話になった祖父の弟の永(ながし)さんは私が陸上幕僚監部で勤務していた時に亡くなったが、まだ墓参していない。是非とも梢を紹介する代わりに墓参させたいのだ。
「そう言えば私が好きなさだまさしの歌・・・君は今、スポット浴びたスターのように 滑走路と言うステージに 呑み込まれていく」「君を乗せた鳥が今、翼はためかせて 赤や緑のランプを 飛び越えていく・・・最終案内だな」今回は歌を合わせるデュットではなく会話のように引き継いでみた。あの頃、梢はかぐや姫と南高節のファンだったが旅行社で勤務していただけにこの「最終案内」やサーカスの「アメリカン・フィーリング」、かぐや姫の「海岸通り」などの飛行機や船を主題にした歌が好きだった。その点、沖縄には鉄道がないのでイルカの「なごり雪」やさだまさしの「駅舎」などの列車ものは今一つピンときていなかった。
「あれッ、君は・・・」日曜日、梢と福生市内で買い物に出たついでに官舎に住んでいた頃、修行の真似事をさせてもらっていた浄土宗の寺に挨拶に行くと見覚えがある坊主が境内の掃除をしていた。坊主は合掌すると背中を伸ばしたまま節度をつけて10度の敬礼をした。私は浄土宗の坊主の知り合いはこの寺の法要で一緒になった地域の住職くらいしかいないが数人のことなので顔は寺名に結びつけて憶えている。その中に該当者はいない。
「モリヤ2佐、お帰りになったんですか」「確かアサヤマくんだったね。君も坊主になったのか」モリヤ2佐と呼ばれたことで「自衛隊の知人」と言うヒントを与えられて日本の部分の記憶力が作動した。朝山は陸上幕僚監部で唐突に慰霊法要を命じられた時の回向の対象者で、国際刑事裁判所からフィリピンのナバオ・デス・スクワットの調査に赴いた際には現地で見せられた活動の記録画像に麻薬組織を射殺した場面が写っていた。仮に岡倉たちと同様に自衛隊の秘密組織で非合法な任務を遂行していたとすれば退役後には慰霊の信仰生活に身心を委ねなければ平穏な生活が維持できないことは北キボールで3人の若者を殺している私には実感として理解できる。私の場合は元々が坊主だったが。
「日本が戦争状態になって戦争法が適用されるようになったから検事をやれって帰国を命ぜられたんだ」「成程、それは心強いですね」私の説明にアサヤマ坊主は納得したように会釈した。
「レンショウさん」その時、庫裏の窓からこちらも見覚えがある住職の妻が顔を出して声をかけた。僧名は蓮床と言うらしい。法然上人の直弟子になった熊谷次郎直実の蓮生と音は同じだ。
み・純名里沙イメージ画像
  1. 2023/05/14(日) 15:43:43|
  2. 夜の連続小説9
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