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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ499

「イギリスの新聞が新潟での戦況を詳しく報じました。この新聞、ブリティッシュ・ライフはイギリスでもあまり発行数が多くないマイナーな存在ですが、今回の特集記事が噂で広まるとコンビニや街角の売店で購入する人が急増して完売になったそうです。イギリス人が日本の戦況を注視していることが分かりました」イギリスの話題を現地支局が8時間の時差がある日本に送り、編集部の採用・無視の審査を経てニュースになるまでは普通丸1日かかる。イギリスの夕方は日本の深夜であり、朝刊、朝のニュースには間に合わないのだ。ところが国営放送は朝のニュースで取り上げて記事の内容まで流した。やはり視聴者からの要求と苦情が殺到している事態に対する解答として異例に迅速に対応したようだ。
「最初にお断りしておきますと国営放送ではブリティッシュ・ライフ社に紙面を放送で使用する許可を得ています」この説明はいかにも国営放送らしいが、事細かに著作権に厳格なヨーロッパが絡むので必要な手順なのだろう。
「この記事によれば陸上自衛隊は新潟県柏崎市の海岸に上陸して占領したロシア軍に攻撃を加えて現地で取材している記者が実際に確認しただけでも戦車25両、自走榴弾砲8両、人員輸送用装甲車24両を破壊したようです。その破壊された車両の写真も掲載されています」画面の半分に表示した紙面の写真を示しながら説明する女性アナウンサーは英語が堪能らしく、記事の文章に意識が引っ掛かって言葉が途切れていた。
「また記者は戦死したアジア人の兵士の遺体を見つけたそうです。国籍については不明とのことなので遺体の写真を含めて紹介を控えます」戦場の報道でも視聴者がPTSD=心的外傷後ストレス症候群を発症することに配慮するようで画面の紙面も全体に隠蔽措置が入った。
「記者はロシア軍が破壊したと発表している刈羽原原発の現在の様子も確認しています。建屋は砲撃で破壊されていても露出した原子炉などは無傷で、ガイガー・カウンターでも異常な数値は検知しなかったようです」「刈羽原原発は中越地震でも建物や原子炉に被害を受けませんでしたから砲撃にも耐えたのでしょう。何よりも若狭湾の原発群が北朝鮮は人工衛星の発射失敗と説明しているロケットの落下で破壊された時、日本海側の原発を機能停止にしていますから核燃料は注入されていなかったようです」「これは安心できますね」戦況ではなく原子炉の破壊による放射能漏れの話題になって解説者が加わってきた。女性アナウンサーも安堵の笑顔を演じながら同調したが、日本の領土を占領しているロシア軍に自衛隊が一矢報いていることよりも東京に波及する可能性が低い放射能漏れの方が重大事らしい。そう言えば国営放送に限らず最近の新聞やテレビではロシア軍の上陸によって日本最大の穀倉地帯である新潟の米の収穫量が半減したため首都圏の米価が高騰していることと馬鈴薯と玉蜀黍(トウモロコシ)の産地の北海道東部の住民が強制避難したので秋の味覚が楽しめないと言う市民の不満を大々的に報じている。東北地区太平洋沖地震では他の話題を放送することが不謹慎であるかのように海外のニュースまで遮断していたマスコミが今では国民の関心を国土防衛の戦闘から逸らさせることに躍起になっている。日本国においては平和憲法が禁じている戦争が起こるはずがなく、現在の事態はあくまでも不法侵入者の武器使用の犯罪行為であって警察と海上保安庁、治安出動・海上における警備行動・対領空侵犯措置行動で対応している自衛隊の仕事であって国民には関係ないと言うのが最近の論調だ。
「このイギリス人の記者は政府が雇ったんじゃあないですか」「いいえ、正規の手続きを踏んで業務目的で入国していますが政府は関与していません」国営放送のニュースは日本でも大反響を起こし、一切報じなかった民間放送に抗議の電話とメールが殺到して対応に苦慮していた。このため最近は白けた空気が充満している立野官房長官の定例記者会見でもテレビ局の記者が今にも飛び掛かりそうな態度で追及していた。民間放送の海外支局の多くは系列新聞社が兼務していて大手ではないブリティッシュ・ライフ紙の朝刊は確認していなかった。その点、国営放送は在イギリス日本大使館から情報提供を受け、朝刊を購入して記事を通読した段階から日本の放送センター=本部の報道部に連絡を取り、ニュースで取り上げる準備を進めていたのだ。イギリス市民の反応は後づけの情報だった。
「この記事の信憑性は・・・政府は内容を認めるんですね」「戦況に関しては防衛秘密に該当しますからこれまで通り回答は控えますが、この写真は背景から新潟県内で撮影されたのは間違いなく、破壊されているの・はロシア軍の軍用装甲車両であり、台数も記事にある通り57両分の写真が掲載されています」「・・・江藤と安野の奴ら、下手を打ちやがったな」立野官房長官の回答が事実上の肯定になると記者席の新聞記者が苦々しげに独り言を呟いた。戦場化している新潟県内に自社の記者を派遣できない新聞社は世界各地の紛争地帯に潜入して惨状を撮影してくるフリー・ジャーナリストの江藤健三と安野俊平を高額の報酬で雇っていた。2人がメールで送ってくる写真と現地レポートで記事を作ってきたが今回、それが致命的な誤報であることが明らかになった。その2人は帰京予定日になっても姿を見せず連絡もつかない。
  1. 2023/05/25(木) 15:14:44|
  2. 夜の連続小説9
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