自分も裸になった担任は新学年の家庭訪問で会って以来、毎晩のようにインターネットのAVサイトで似た女優の動画を検索していた安川穂高の母親・聡美の肉体を思うままにしていることが実感できず股間の男性自身が反応しなかった。乳房を掴み、乳頭を噛み、全身を舐め回して女性器に吸いついて刺激しても聡美は微動だせずに呻き声も漏らさない。
「麻酔薬を吸わせ過ぎた。抵抗力を奪う程度で意識が残る量を研究しておくべきだったな」担任は指を女性器に差し入れて人体実験を続けるが結果は同じだ。焦れば焦るだけかえって男性自身は萎えていくばかりだ。
「仕方ない、ヌードを撮っておけば次のチャンスの材料になる」担任は理科が専門だけに冷静に自己診断するとセカンドバッグからスマートホンを取り出して聡美の裸身を撮り始めた。勿論、両足を広げさせて女性器をアップにすることは忘れない。
「安川さん、安川さん」その時、数人が階段を駆け上がる足音が聞え、チャイムも鳴らさずにドアを開ける音と男の呼び声が聞こえてきた。続いて玄関からこちらに踏み込んでくる足音が聞えた。おそらく靴は脱いでいない。
「しまった、ドアのチェーンを掛けてなかった」担任が呟いた時、制服を着た警察官2人と同じ階段の1階の住人の小学校で見覚えがある女性がリビングに入ってきた。3人は隣室で全裸にされて横たわっている聡美とその広げた両足の間で片手にスマートホンを構えたまま固まっている担任を見て唖然とした。この状況はどう見ても合意の上の性行為の最中だ。しかし、聡美がこの騒ぎにも反応しないことに気づいた3人は座卓の下に払い退けたように転がっている空になったコーヒーカップを見て状況を推理した。
「不同意性交の現行犯で逮捕する」「奥さんの意識を失わせて性行為に及んだな」「穂高くんの担任だからって上がり込んだんでしょう。アンタが中々下りてこないから警察に相談したのよ。アンタは学校で官舎の子供たちに長野県から出て行けっていったくらいから絶対に何かやるって思ったわ」警察官2人の逮捕事由の説明に続いて1階の妻がそれに至る経緯を補足した。この小学生の母親でもある妻は階段の前に車を止めて下りたのが穂高の担任と気づいた。この妻の息子の担任は組合員ではないので穂高たちのような転校勧告は受けなかったが官舎の情報共有は迅速なので「怪しい」と思えば自分で確認する前に警察に通報した。警察も一部の過激な教員の犯罪計画の情報提供を受けていて対応を検討していたところだった。
「奥さんに何をしたの」「ハメて中出し3発、よかったぜ」警察官に促されて下着をつけ始めた担任は好色そうに笑いながら答えた。一方、夫以外の男の性器を見ないように顔を背けている妻は官舎でも評判の熱愛夫婦の安川の妻が犯されたと聞き、怒りに同情と絶望を交えた目でリビングの壁に貼ってあるフィンランドの工芸品・リュイユ織を見詰めた。この布は安川1尉の新隊員時代の中隊長がオランダに赴任して北欧旅行の土産として送ってくれたと聞いている。その中隊長が2人の結婚を実現してくれたと聡美は幸せそうに説明していた。
「それは虚偽だな。奥さんに性交を受けた形跡はない。それでもお前がそう申告してくれればこちらとしては助かる」「奥さん、服を着せてあげて下さい」「はい」妻が目を反らしている間に聡美の身体を確認した警察官は股間に体液が残っていないことを指摘した。妻は部屋中に投げ捨てられている下着と衣服を拾い集めると意識が戻らない聡美に着せ始めた。意識は服装が整うまで戻らない方が良い。それでも聡美の身体からは男の体臭を感じた。
「これで奴らが現れれば不同意性交の犯行予備で拘束できる」「でも未遂だったんだでしょう」「本人が3回性交に及んだと証言した上、被害者の性器を含む裸体を動画撮影している。性行為自体は未遂であっても疑うには十分だ」聡美の服装が整うと警察官はスーツを着終えた担任に手錠をはめて警察署に連行した。妻には聡美が意識を取り戻すまでつき添っていることを要請したが間もなく連絡が入り、出迎えた警察署では女性警察官が状況を説明して事情聴取した。すると聡美は「全身の肌と乳頭や性器に違和感はあるが、性的暴行を受けてはいない」と冷静に自己分析してベテランの女性警察官を驚かせた。若く清純そのものの印象を受けるがこの肝の座り方は半端ではない人生経験を噛み締めているようだ。
「そうなると官舎地区に立ち入った時点で強制性交が目的と断定して身柄を拘束するんですね」聡美を女性警察官が軽自動車のパトロールカーで送ると残った幹部警察官たちが教職の組合員による官舎襲撃計画への対応を話し合った。
「官舎を校区にしていない学校の教員が大挙して姿を現せば目的を確認するのは当然だ」「それでも学校の先生たちだから口は達者だろう。言い逃れた上でマスコミに垂れ込まれれば今後の取り締まりの足を引っ張られかねんぞ」「マスコミは新潟の虚偽報道でなりを潜めているから大丈夫だ」やはり元警察予備隊の陸上自衛隊と同様に警察の議論も飛んでから考える航空自衛隊のようにイケイケ・ドンドンにはならないらしい。結局、教職の組合員たちは担任が逮捕されたことで怖気づき、実行には移さなかった。

リュイユ織
- 2023/06/07(水) 13:44:25|
- 夜の連続小説9
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