野僧は在日アメリカ軍の憲兵隊で「担当者が交代した時には2週間、食事と排便の片づけ以外は放置してその後に訓練の相手をすれば命令に従うようになる」などの犬の心理学を学びましたが、猫に関しては欧米でも本格的な研究は進んでおらず、まだ血統による種族や毛の色と柄などによる分類学・統計学の段階のようです。
そんな中、日本の雑種猫の飼い主から提供を受けたサンプルの遺伝子とアンケート調査や行動テストで性格、気質、能力を評価した「猫の性質は遺伝と環境の2つの要因で形成される」と言う学説が提唱されて、その遺伝は毛の色と柄で表れているとしています。
学説では茶色地に黒の筋が入るキジトラは警戒心がやや強く、来客が来ると物陰に隠れることが多いが、心を開けば甘えるようになる。同じような縞柄でも茶色地に濃い茶色の筋の茶トラは8割が雄で猫にも人にも大らかで社交的、逆に遺伝子的に雌しかいない三毛は他の毛の色の猫よりも神経質で飼い主への愛着が強いとしています。
小庵で最初に飼った猫は黒猫の「音子(ねこ)」でしたが猫とは思えないほど賢く(亡き妻の魂魄が宿っていたと信じています)、明らかに人間の言葉を理解していて「若緒(=娘)を呼んで来い」と口頭で命じると庭に出て連れて帰り、「雨だから外出するな」と言えば自分だけでなく若緒まで制止して家で過ごしていました。若緒は灰色地のキジトラでしたが母親の音子に溺愛されながらも厳しく躾られれたため育ちの好い箱入り娘のような猫で人見知りすることなく誰にでも懐いていました。その若緒が野良の雌猫の発情期で集まってきた野良の雄猫に避妊手術を受けているため性別不明猫として追い回されて道路で事故死すると音子は若緒がいた場所を探して回った後、真冬だったにも関わらず墓前を離れず過ごすようになりました。
そこに捨て猫の保護活動をしている小母さんが置いていったのが同じ灰色地にキジトラの寿来(じゅらい)でした。寿来は小母さんの自宅で他の捨て猫に苛められていたようで音子が近づくと攻撃的な態度を取り、やがて音子が追い出そうとしたものの野僧が「縁があってウチに来たのだから娘として育ててくれ」と頼むと始めは行動範囲を明確に区分しながら次第に距離を詰め、最終的に母子のような関係になったのですが音子が再び姿を現した若緒を追い回した野良の雄猫を追って事故死していまいました。寿来の性格は学説に近いです。
野僧としては寿来が1匹になったため野良の黒猫を伽羅(きゃら)と名づけて飼おうとしたのですが全く懐かず、やがて寿来が追い出してしまいました。続いて町内のリゾートホテルの駐車場に棲みついていた黒猫を引き取り世果報(ゆがふ)と名づけましたが、これまた音子とは全く性格が違い妙に大らかに堂々と振る舞い、寿来も手に負えず新ボス猫になっています。
そして今は茶色地のキジトラの卯月(うづき)も加わっていますがコイツも若緒や寿来とは全く性格が違い、毛の色と柄が性質を表しているとは思えなくなっています。
この他にも腹が白いサバトラで野良なのに天寿を全うするまで主(おさ・ぬし)になっていた野良爺さんを筆頭に飼っていない猫が来ては去っていきますが飼い猫の定員は3匹までです。

朝倉文夫作「産後の猫」
- 2023/06/19(月) 15:15:09|
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