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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

ウクライナ軍は本当に反転攻勢に成功しているのか?

国土が凍結する冬季には将兵をNATO諸国の軍に送り込んで兵器の運用と操作に習熟させ、雪解けの季節に開催されたG7広島サミットに唐突に大統領が出席すると言う派手な演出で兵器と弾薬の供与と支援の継続を取りつけたウクライナが予定通りに反転攻勢を開始するとロシア軍は占領地域の巨大なダムを破壊して進撃を阻止しただけでなく原子力発電所に爆破物を設置して核兵器に代わる核攻撃の準備を披歴するほど追い詰められたようでした。一方、傭兵派遣会社が暴動を起こしてそれを裏付けたかのように見えましたが、ここにきてそれに疑問を感じるような事態が発生しました。それは「ウクライナ側からの要請でアメリカがクラスター爆弾の供与を決定した」「早くも爆弾の現物を送った」「近日中には実戦に投入される見込みだ」と言う一連のニュースです。
クラスター爆弾は2008年5月28日にアイルランドの首都・ダブリンでの外交会議で採択された「クラスター爆弾に関する条約」第2条の定義によれば「それぞれが20キロを超えない爆発性子弾を散布または放出するよう設計された通常弾で、それらの爆発性子弾が含まれるもの」とあり、判り易く言えば「投下する爆弾の本体を容器として中に小型の爆弾や地雷を内蔵して空中で爆発させることにより広範囲に拡散・落下させる通常兵器」です。
原型は1939年にソビエト連邦軍がフィンランドに侵攻した冬戦争で雪原に潜むゲリラ=モッティ戦術に対して地上の兵を一掃するため開発した回転式で60発の子弾をばら撒く空中投下式の爆弾で、ナチス・ドイツ軍がバトル・オブ・ブリテンで同様の焼夷弾の爆弾を使用するとアメリカ軍も日本の都市空襲で多用し、ベトナム戦争でも手榴弾を子弾にしてゲリラが潜伏する熱帯雨林にばら撒きました。早い話が爆弾の散弾銃です。
戦争法では第1次世界大戦における陸戦と海戦の戦術の発展と様相の壮絶化を踏まえて陸戦法と海戦法が改定されるのに合わせて新兵器として登場し、急速な発達によって多大な攻撃力を発揮した航空機についても「空戦法によって戦術を規定するべきだ」とする主張があったのですが、兵器としての可能性を追求したい先進国列強が反対して実現せず、現在も制定されていないため特定の兵器に関して個別の条約で制限を加えているに留まり、クラスター爆弾に関するこの条約はアメリカ、ロシア、中国、北朝鮮、韓国、イスラエル、イラン、イラク、サウジアラビア、トルコ、シリア、ウクライナ、ギリシア、アラブ首長国連邦、エジプト、ヨルダン、イエメン、ジョージア、アゼルバイジャン、コソボ、カザフスタン、ポーランド、ルーマニア、アルメニア、ベラルーシ、ラトビア、ブータン、ベトナム、タイ、インド、ミャンマー、パキスタン、台湾などは署名していません。
つまりアメリカとウクライナ、ロシアは2008年のクラスター爆弾に関する条約に署名していないので供与し、使用することとロシアが復仇(ふっきゅう=相手の違法行為を当事者が同程度の違法行為で処罰する戦争法上の合法的処置)として使用し返すことに戦争法上の違法性はありませんが、ウクライナが本当に西側の政府とマスコミが述べているように反転攻勢に成功しているのなら国際社会の理解が得られない非人道的兵器をあえて使用する必要はなく、それでも使用を強行するのなら事態の打開を図らなければならない局面に陥っているのではないかと推理するのが元戦争のプロとしての常識です。
  1. 2023/07/15(土) 13:58:29|
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