一般的に山寺の裏手は墓地になっていますが、それより奥の山中には三昧所(さんまいしょ)と呼ばれる土葬だった頃に棺桶を埋めた場所があって人間の遺骸の養分を吸った土は非常に肥えていて山菜が見事に生育します。すると何も知らない都市部の人々がハイキングがてらの山菜採りに来て「立派な山菜が採れる場所」として口コミで広まり、山菜の季節になると多くの人たちが押し掛け、歓声を上げながら山菜採りに励みます。
ところが棺桶は中に土を入れて埋葬する訳ではないので土中に空間ができていて足に力を入れると腐った蓋を踏み抜いてしまうことがありました。当然、中には遺骨や埋葬品が入っているのですが都会の人々は気にも留めず帰り際に寺に寄って「裏山に落とし穴が掘ってあった。子供に注意してくれ」と苦情を言っていきました。こうなると山歳採りの人々が返った後、確認に行くのが小坊主の仕事になり、薄暗くなった三昧所を懐中電灯で照らして見て回る肝試しをする羽目になりました。
田舎の地方僧堂も同様だったので立派な山菜が大量に採れて畑で収穫する季節の野菜の端境期には雲衲の食材になっていました。
蕗料理の前に
1、蕗は生のまま皮を剥くと手が真っ黒に汚れてしまう。また剥きにくい。沸騰した湯に30秒程度漬けてから冷水に浸して冷ました後に剥くと手を汚さずに容易に剥くことができる。
2、蕗は水気が多いので煮汁は濃い目に作る。
蕗の青煮
材料(量は使う蕗の量に合わせて)・蕗・砂糖・塩・化学調味料・酢
作り方
1、皮を剥いた蕗を5センチほどの長さに切り揃える。
2、塩と酢を少量加えた水に20分間ほど晒して灰汁(あく)抜きをする。
3、真水に浸しながら水洗いをしてからザルに入れて水気を切る。
4、蕗が完全に浸る程度の量の砂糖と塩と化学調味料で甘辛い煮汁を作り、沸騰させてから蕗を入れて煮る。
5、もう一度、煮立ってきたなら鍋を火から下ろして蕗と煮汁を分けて冷ます。
6、冷めてから再び一緒にして漬けておき、煮汁をよく染み込ませる。
※蕗の青=緑色を残すのがポイント
蕗の昆布巻き
材料(同前)・蕗・なるべく薄い昆布・干瓢(かんぴょう)・料理酒・砂糖・醤油・酢
作り方
1、皮を剥いた蕗を4から5センチほどの長さに切り揃え、しばらく水に晒す。
2、昆布は水に漬けて柔らかくしてから水気は拭かずに竿などで干し、乾いたなら蕗と同じ幅に横切りにする。漬けた水は使うので捨てないこと。
3、干瓢は水に浸して柔らかくしておく。
4、蕗3,4本を昆布で巻き、中央部を干瓢で縛る。
5、昆布を漬けた水に砂糖と醤油と料理酒を同量ずつ入れて濃い目の煮汁を作る。量は昆布巻き全体が浸る程度。
6、煮汁に少量の酢を加えた後、昆布巻きを入れて落し蓋をして煮る。煮立ってくれば弱火にして昆布が柔らかくなるまで煮込む。
7、火を落としてからも鍋で煮汁に漬けたまま冷まし、冷めてから器に盛る。
蕗の揚げ煮
材料(同前)・蕗・油揚げ・昆布出汁・醤油・料理酒・砂糖・竹皮
作り方
1、油揚げを俎板(まないた)の上に広げて擂粉木(すりこぎ)などを転がして潰す。その後、長い一辺を残して切れ込みを入れ、開いて一枚にする。
2、油揚げを湯通しして油抜きする。
3、皮を剥いた蕗を油揚げの幅に切り揃える。
4、竹皮を十分に水に漬けて柔らかくして必要な数量を適当な幅に裂く。
5、蕗4、5本に油揚げを巻き、2箇所くらいを竹皮で縛る。
6、材料が浸る程度の昆布出汁に料理酒と砂糖、醤油を加えて濃い目の煮汁を作る。
7、中火で煮込み、冷めてから一口大に切って器に盛る。
蕗のから煮
材料(同前)・蕗(細いもの=新芽)・料理酒・醤油・一味唐辛子
作り方
1、細い蕗を皮つきのまま3センチくらいに切って30分ほど水に晒す。
2、熱湯に移して5分ほど茹でる。
3、煮汁を半分捨てて料理酒と醤油に唐辛子を加えて汁気がなくなるまで時々かき混ぜながら煮込む。
※醤油だけで味つけして煮込めば「伽羅蕗」と呼ばれる佃煮になる。
蕗の葉の煮つけ=廃物利用料理
材料(同前)・蕗の葉・塩・料理酒・味醂(酒の2割程度)・醤油・化学調味料
作り方
1、茎を取って残った葉を塩水で洗いながら虫が喰った穴などを除く。
2、蓋をしない鍋で葉を薄い塩水で茹で上げてからしばらく水に晒す。
3、固く絞り、5ミリ幅で細かく刻む。
4、鍋で料理酒と味醂を煮立てる。量は葉が全体に漬かる程度
5、葉を入れて弱火で煮込み、煮上りに醤油を差して化学調味料を加える。
※多目の醤油と少々の味醂、化学調味料で煮詰めた佃煮も美味い。
蕗のとうの煮つけ
材料(同前)・蕗のとう(開く前のもの)・味醂・醤油・化学調味料
作り方
1・蕗のとうの一番外側だけを取り除いてしばらく水に晒す。
2・ぬるま湯で茹でる。
3・茹で上がれば水を足して苦味が消えるまで4,5回はぬるま湯から茹でる。
4・蕗のとうが浸る程度の水に同量の味醂と醤油を足した煮汁で煮込む。
5・煮汁が半分程度になったなら化学調味料をふりかけてもう一煮立ちさせる。
6・火から下ろし、冷ましてから別に作った同じ煮汁で煮直す。
※蕗のとうの苦味を消すために何度も煮るが、好きな人は3の茹でる回数を減らす。

蕗の青煮
- 2023/08/01(火) 15:11:31|
- 月刊「宗教」講座
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