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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ574

「上層部はどう言ってるんだ」「今日も厚木の司令部で『お前が扇動しているのか』って疑われちゃったわ」志緒の意志を確認したところで膝を崩し、酒が始まると会話は本音になった。私も陸上自衛隊の部隊勤務の間は航空自衛隊で身についた「本音で勝負」を組織に対する批判=反逆と受け取られ、人事的にかなり不遇を託(かこ)ったがアメリカ海軍にも自己保身のために元凶を探す木っ端役人根性の持ち主はいるようだ。確かに日本人から帰化した志緒が元の祖国への愛着から同僚たちを扇動しても不思議はない。
「そんな状況で志願すれば『やっぱりアイツか』と決めつけられてしまうぞ」「そんな卑怯で臆病なことを言ってるのは在韓アメリカ軍で勤務していた時に韓国人と結婚した親韓反日派だけよ」「なるほど・・・」志緒の説明に私と梢は妙に納得してしまった。
ヨーロッパでも現地在住の韓国人たちは中国系や北朝鮮系と一体化して反日運動に励んでいた。志緒もハワイの高校で日系人の生徒が始めた東北地区太平洋沖地震の被災者救援の募金活動を韓国系の男子生徒が「日本人が大量に死んだのは過去の悪事に天が下した罰だ」と批判したのを完膚なきまで論破したため憎悪されて校内で強制性交されそうになったことがある。この3人は「韓国は敵」と言う認識で一致しているのだ。
「上層部は逆に現場の気持ちを理解していて、むしろ自分が真っ先に志願したいって明言しているのよ。だから司令官自らペンタゴンやホワイトハウスに談判しながら横田や横須賀、沖縄と良い秘策はないかって協議しているだって」「その噂は横田からも聞こえてくるな」私が聞いているのは目の前の横田基地ではなく在日アメリカ軍と直結している統合幕僚監部からなのだが「災害派遣のトモダチ作戦ならぬセンユー(戦友)作戦にしよう」と言う軽い話から「ボランティア休暇では駄目か」「日米協同訓練中に攻撃を受けたことにしよう」などの現実味を帯びたアイディア、さらに石田内閣を退陣に追い込んで双木外務大臣を首相に担ぎ上げるクーデターもどきまで飛び交っているので真偽不明だ。
「日支事変の時、アメリカはモンロー主義の厭戦世論で参戦できない代わりにパイロットをPー40戦闘機付きで大量に送り込んで義勇軍として国民党軍に参加させていた。第2次世界大戦の日本陸軍の撃墜王の上坊良太郎大尉の76機や篠原弘道少尉の51機の大半はアメリカ人義勇軍が相手だった。その意味では個人参加の義勇軍は常套手段ではあるな」「戦闘機付きだったの」「名目上は国民党軍が購入した戦闘機を運んで行ったついでに志願したことになっていたよ」志緒は旧式のPー3Cではなく乗り慣れたPー8で参戦できると思ったようだが私の解説に落胆した顔でグラスの酒を飲み干した。
「しかし、参戦すればロシア軍が新潟方面に増強する輸送艦隊を日本海で攻撃することになるぞ。この間、北海道でロシア軍の上陸部隊が乗った大型フェリーを撃沈した地対艦ミサイル連隊の幕僚が罪の意識を口にしていたがその辺はどう考えているんだ」「グランド・ダディがベトナム戦争の時に乗っていた輸送機が撃墜されるのと同じよ。それが戦争なんだから・・・ダディも北キボールで敵を殺したことを後悔しているの」私は志緒の軍人としての覚悟を確認するつもりだったが逆に自分自身の意識を問い質されてしまった。私も戦いを生業とする武人として殺すべき敵を殺(あや)めた行為に後悔はしていない。それでも生命を奪った者として追善供養は欠さない。
その一方で海上自衛隊の対潜哨戒機が日本海でロシア艦艇を撃沈し、航空自衛隊が軍用機を撃墜して海空救難隊や海上保安庁が敵の救助に当たっているのを見ると対米英中戦争中に太平洋の離島や南方戦線に送られる将兵を乗せた輸送船がアメリカ軍の潜水艦や艦載機によって撃沈された史実に重なってしまい複雑な心境になっているのも事実だった。その点、志緒は祖父のノザキ・アメリカ空軍中佐の薫陶を受け、アメリカ陸軍の指揮幕僚大学校に留学し、ハワイの太平洋軍司令部で勤務していた佳織の姿を見て育っただけに戦争に対する認識もアメリカ的に冷たく乾いている。
「志緒はクリスチャンではないんでしょう」「ノザキ家はブディズム(佛教)でもジョード・ウェイ(浄土宗)よ」「それはダディと私も同じ」ここで梢が母親の顔で話に加わってきた。梢は比叡山で知恵第一、持戒第一と謳われていた浄土宗の開祖の法然坊源空上人が口唱念佛に救いを求めた理由を説き聞かした。坊主の女房としても完璧だ。
  1. 2023/08/11(金) 15:27:05|
  2. 夜の連続小説9
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