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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

8月19日・浜松基地が舞台・全日空アカシア号ハイジャック事件

「こんにちは こんにちは 世界の国から」と大阪で万国博覧会が開催されていた昭和45(1970)年の明日8月19日に小牧空港(現在の名古屋空港)16時25分発・千歳空港行きの全日本空輸=ANAのボーイング727・アカシア号(この頃は各機に名前がついていた)が離陸直後の16時45分頃に拳銃を持って操縦室に乱入した24歳のイナガキユキオくんにハイジャックされて犯人の要求通りに航空自衛隊浜松北基地(現在の北地区)に緊急着陸する事件が発生しました。
野僧は浜松基地の警備小隊長時代、自衛隊と警察の事件の経過報告書を熟読しましたが、自衛隊は警棒以外の武器も持たずにアカシア号が駐機しているエプロン地区に捜査関係者以外が立ち入らないよう遠巻きに警備し、機体の周辺は犯人を過度に刺激しない程度の人数の浜松中央署員が取り囲み、静岡県警の担当者が当時は航空自衛隊も旅客機型のYSー11輸送機を運航していたため保有していたタラップで昇降ドアの前に立って犯人と交渉しながら説得に当たったようです。
アカシア号には乗客89名と乗員7名が搭乗していましたが、イナガキくんは着陸直後に乗客57名を開放した上で狙撃用スコープ付きライフルと実弾100発とガソリン入りポリタンクを要求しました。要するにイナガキくんは拳銃以外にハイジャックするための準備は何もしていないことが判明しました。このため機長は犯人に従う素振りを演じながら犯人の拳銃がプラモデルであることを見抜くと(同年3月31日に発生した日本航空のよど号ハイジャック事件で機内に持ち込んだ日本刀が犯行に使用されたため金属検知器の導入など手荷物検査が厳しくなっていた)窓からメモを落として警察に知らせ、犯人に「残った乗客の中に妊婦がいるから下ろして欲しい」と虚偽の要求をして応諾するとこれも警察に知らせてドアを開けることを予告したのです。このため警察はタラップの上で待ち構え、犯人がドアを開けると即座に突入して逮捕しました。発生後2時間でした。
犯人は静岡県警の取り調べに対して「妻の妹と駆け落ちして心中しようとしたが未遂に終わり、その妹とも音信不通になって人生を悲観した。ハイジャック事件を起こせば警察と銃撃戦になって楽に死ねると思った」と犯行動機を供述しましたが、共産主義過激派の北朝鮮への亡命だったよど号事件に比べて動機は情けなくてもハイジャックには変わりないため静岡地方裁判所はよど号事件によって制定された「航空機の強取等の処罰に関する法律=ハイジャック防止法」を初めて適用して昭和47(1972)年4月28日に懲役13年の求刑に対して懲役7年の判決を言い渡しました。続いて東京高等裁判所も同年12月12日に一審を支持して控訴を棄却したため刑が確定しました。
野僧はこの事件を通じて将来、自衛隊基地にハイジャックされた旅客機が着陸すれば同様に逮捕権を有する警察が対応するとしても対領空侵犯措置で外国軍用機を強制着陸させる可能性はあり、在日アメリカ軍憲兵隊から入手した資料を参考にして訓練を始めましたが、大型機の教材として定期便のCー1を使うことは入間基地の第2輸送航空隊本部の担当幕僚は許可しても浜松基地の第1航空団管理隊の輸送小隊が拒否しました。
  1. 2023/08/18(金) 15:07:11|
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