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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

8月23日・これは成功例・エジプト航空機321便ハイジャック事件

何度もハイジャックに遭っているため年月日か機体番号を言わなければ事件が識別できないエジプト航空機でも犠牲者が出なかったと言う意味では成功例になる321便の事件が1976年の明日8月23日に発生・解決しました。
事件はこの日の朝7時15分にカイロ国際空港を離陸した国内線のルクソール国際空港行きのボーイング737がパレスチナ人2名とエジプト人1名の犯人グループに乗っ取られました。犯人はリビアのベンガジ空港へ向かうように要求しましたが、カイロ空港からルクソール空港までは南に500キロ、所要時間は約1時間の近距離なので機長は「燃料が足りない」と拒否して目的地のルクソール空港に着陸しました。
ところがそれからは事態が動かなくなり、8月の炎天下のルクソール空港で9時間が経過したためエンジンを停止してエアコンが効かなくなった機内の温度は40度を超え、日本人28名を含む乗客・乗員75名の健康状態が不安視されてアッ=サダート政権は特殊部隊による制圧を決定しました。しかし、8月23日のエジプトの日没時間は午後6時25分頃なのでルクソール空港への午前9時前後の着陸から9時間が経過すれば間もなく日没であり、何よりも外部電力でエアコンは使用可能なので結局、特殊部隊による強行解決のための口実だったのでしょう。
とは言え特殊部隊の制圧作戦は意外に穏健で先ず犯人に対して「外部で燃料漏れが発見されたので内部も点検したい」と整備員の立ち入り許可を申し入れて了解を取ると白のツナギを着て丸腰の特殊部隊の隊員3名を機内に入れました。すると隊員は点検する素振りを見せながら1人ずつ操縦室と客室の前後にいる犯人に近づき、先ず1人が前部座席のハイジャック犯に飛び掛かってレンチで顔面を殴り卒倒させました。次に別の1人が操縦室のドアをこじ開けると犯人の背中にドライバーを突き刺しました。そして残った1人が後部座席の犯人の喉をレンチで殴り、同時にタラップで待機していた武装隊員が突入して威嚇のために床と天井に拳銃を11発発砲しましたが、軽くはない負傷をしていた犯人は取り押さえられて「降伏」を申告していました。
この鮮やかな成功にアッ=サダート政権とエジプト軍特殊部隊は慢心したようで約1年半後の1978年2月19日にキプロスで開催されたアジア・アフリカ人民連帯会議に出席していたエジプトの代表を会場で射殺した犯人が他の出席者を人質にして国外脱出を図り、キプロス政府が提供した旅客機でアッ=サダート政権の対イスラエル融和政策に批判的な国に向かいましたが受け入れを拒否され、仕方なくキプロスのラルナカ空港に戻ってきたところをエジプト軍が急襲しましたがキプロス軍と銃撃戦になり、エジプト兵15名が戦死し、犯人はキプロス当局が拘束して失敗に終わりました。
さらに9年後の1985年11月23日にはギリシャのアテネからカイロに向かっていたエジプト航空648便がテロリストにハイジャックされ、発砲で側壁に穴が開いて緊急着陸したマルタのルカ空港に特殊部隊が派遣されましたがブッツケ本番だったため激しい銃撃戦になって機体は炎上し、乗客89名のうち57名が死亡する惨事になっています。
  1. 2023/08/22(火) 14:50:47|
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