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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ587

「終わる筈がない愛が途絶えた 命尽きてゆくように 違う きっと違う 心が叫んでる・・・」唐突に歌がこぼれ出てきた。この歌は小田和正の「言葉にならない」で2人が生まれる前どころか2人の縁結びの恩人・モリヤニンジン元2佐が大学を中退して航空自衛隊に入隊した昭和57年に発売された23曲目のシングルだ。ところが1999年から生命保険会社がCMソングに使い始めたので2人が成長していく過程で聞くことになった。特に名寄の映画館・第一電気館で見た映画「手紙」の挿入歌としてあらためて聞いて感激し、CDを買って帰ったので2人の心に深く染みわたっている。
「ラーラーラー ララーラ ラーラーラー・・・言葉にできない」CMで流れる間奏から聡美も合わせてきた。カラオケで唄っている訳ではないので無理に全編を唄う必要はない。安川1尉はこの歌が無意識にこぼれ出た理由と納得した最後の歌詞を口にした。
「貴女に会えて 本当に良かった 嬉しくって 嬉しくって 言葉にできない。ラーラーラー ララーラ ララ ララ・・・」「・・・私」「お前に会えて本当に良かった」唄い終わったところで聡美が何か言おうとしたが安川1尉は遮った。
安川1尉が高校3年生の時、聡美が入学してきた。しかし、聡美は中学時代に教員の両親の不倫現場目撃したことで自暴自棄になり、それにつけ入った社会人に純潔を奪われ、それからは同級生の男子たちの性玩具にされていた。安川和也3年生の耳にも「美少女のサセ娘が入ってくる」と言う噂が届いていた。そして高校でも男子生徒たちは群がるように聡美を弄んだが、頼んでもいないのに順番が回ってきた安川和也は何度か経験した同級生の女子とのデートのように聡美を扱って楽しい時間を過ごした。
聡美は母と同僚の体育教師の不倫の噂を聞きいて同級生の女子に紹介された社会人の車で尾行すると2人は郊外のラブ・ホテルへ入り、通り過ぎた車内で聡美は呆然自失していた。すると社会人は赤信号で停車した隙に助手席の聡美の唇を奪い、そのまま通りがかった別のラブ・ホテルに連れ込んだ。そして「お前が男に抱かれることが親への復讐だ」と意味不明の言葉を投げ与えながら純潔を奪った。それからは青少年保護育成条例=淫行条例違反の共犯者を作るために聡美を他の男たちに分け与え、やがて地元では評判のサセ娘になっていった。結局、聡美にとって男子・男性に会うことは抱かれることに他ならず年齢相応のデートは安川和也が初体験だったのだ。以来、聡美は安川和也の優しさに包まれて普通の高校生としての生活を取り戻していったが、別の3年生に肉体関係を要求され、それが原因で安川和也は暴力事件を起こして高校の進学と就職の推薦が取り消されてしまいやむなく自衛隊に入隊した。
「長野県の北部では県教組と自治労が自衛隊の行動の妨害を公然化させてるらしいな。南部にも広がってくるかも知れん・・・」「もう遅いわ。私は『汚された』何て言葉で自分を表現する資格はないけど・・・」突然、聡美の口調が重く険しくなった。
聡美は高校で安川和也3年生とつき合い始めて以来、「貴方だけに捧げるこの身体」と清く正しく美しい純愛路線をひた向きに歩んできた。その聡美がこのような言い方をする以上、何があったのかは想像に難くない。
「穂高の担任が長野県を非防守地域にするためには自衛隊を撤去させなければならないって運動を始めてウチに説明にきたの。そうしたら麻酔薬を嗅がせて私を・・・警察は『レイプされていない』って説明したけど意識を失って言う間に何をされたのかを想像すると貴方に申し訳なくって・・・」「そんなことは想像しなくても良い。警察がされてないって言えばされてないんだ」「はい」安川1尉が語気を強めると聡美は素直に返事をした。安川1尉の胸に欲情した男子生徒たちの赤い炎を噴くような視線に晒されていた新入生の聡美の顔が浮かんだ。あの頃は年齢に限らず「茶髪」が非処女=サセ娘の身分証明証のようなもので同級生でも男遊びを覚えた女子は目立たない程度に髪の色を抜いていた。ところが聡美は教員の両親が容姿・服装の乱れを許すはずがなく殊更に模範生的だったのがかえって男子生徒の「乱す」「汚す」と言う征服欲を誘ったらしい。
安川1尉は自衛隊の行動を妨害するためには手段を選ばない日本国内の工作員たちにロシア軍以上の敵意を抱いた。今後は侵入者の阻止に躊躇はない。
  1. 2023/08/24(木) 14:36:56|
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