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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ598

UHー60多用途ヘリコプターは上信越自動車道のバリケードを掃討するとUターンして並行する国道18号線にもPOM3をバラ撒いた。すると参加者たちは少し高い自動車道で連続して起こった爆発に狼狽(うろた)えて道路上を歩き回ったため人間が歩く振動で作動するPOM3を全て起爆させて屍と重傷者の山になった。そこに上空から連絡を受けた第13普通科連隊の車列が進攻した。
「こりゃあ酷い。素人が変な物を持ち込むから怪我するんだ」国道18号線は積雪時に車道を塞がないように駐車させるため道幅が広くバリケードとして横向きに駐車してあった参加者の私有車もサイド・ブレーキを外せば人力で通路を開けることができた。各車両には警察と消防が収容する遺骸と負傷者も路側帯に並べるように指示されている。さらに生存者は外傷を負わせない形で遺骸にするように密命が下っているが、おそらく鼻と口を押さえて窒息死させるのだろう。
「こいつはウチのガキの中学校の教員ですよ」「それなら手くらい合わせてやれ」「自分でとどめを差しておいて変ですが・・・先生、地獄へ堕ちなさい」遺骸の脇の下に両手を入れて引きずって片づけている中堅の陸曹は古参陸曹の指示に自分が殺害したことを自白しながら手を合わせた。それでも謝罪はしない。
「よし、出発する。総務班長は残って県警に状況説明と業務の引継ぎを実施せよ。車両1台とドライバーを残す。以上」上信越自動車道と国道18号線の車道が確保されると移動指揮官の副連隊長が命令した。消防への救急車の手配は長野県警に依頼した。
「コイツらの妨害で2日も無駄足を踏んじまった。2普連はイライラしてるだろうな」「それはウチも同じです。ウチに装甲車があれば強行突破するところでした」そんな車両と遺骸の間をトラックで通過しながら運転席で車長の古参陸曹と運転手の若い陸曹は忌々しそうに対話した。国家を防衛する戦闘への出征を妨害する者は最早、仇敵以外の何者でもない。つまり対敵行動の手始めだった。
「お疲れでしょうが隊員の食事が終わり次第出発します」「我々の第1目標は刈羽崎原発の奪還です」「あそこの放射能漏れは軽微だったな」第13普通科連隊はようやく高田駐屯地に到着し、第2普通科連隊の指揮所で第5施設群と先に関山演習場から移動してきた特科教導隊と機甲教導連隊との作戦確認の会議を持った。第13普通科連隊も石田首相が意識を失い、立野首相臨時代理によって緊急事態の特別措置が富国されたのを受けて松本駐屯地を出発する前にも第12師団司令部から作戦の原案は聞いていたが県境で路上駐車していた2日間にかなり具体化していた。
柏崎市の刈羽崎原子力発電所は東京電力が首都圏の膨大な電力需要を賄うために建設しただけに7基の原子炉を持ち、フル稼働すれば世界最大の発電出力を発揮する。ロシア軍としてはウクライナ侵攻で南部にあるサポリージャ原子力発電所を占領して、その破壊の標榜・示唆で西側諸国を脅迫・恫喝した経験からこの原子力発電所を人質にすれば日本人の核アレルギーが異常反応して戦意を喪失すると踏んでいた。ところが刈羽崎原子力発電所は2007年7月16日の中越沖地震で全ての原子炉が緊急停止し、以降の厳格な調査で放射能物質の漏洩や活断層の存在が確認されたため再稼働できなくなった。それでも関係者の懸命な対処によって再稼働にこぎつけた2009年5月11日に今度は内陸を震源地とする中越地震が発生して元の木阿弥になった。そしてとどめが2011年3月11日に発生した東北地区太平洋沖大地震による津波で東京電力の福島第1原子力発電所が崩壊して国民の核アレルギーが発症したため3基が再稼働していた刈羽崎原子力発電所も全面的に機能停止することになった。この状態では日本のマスコミの得意技の過剰な危険性の扇動も効果は薄く、人質としての利用価値はないに等しい。
「山形方面の戦車部隊が南下している上空からの映像が届いています」「士魂が出撃したか」連隊指揮所のスクリーンにヘリコプターから撮影しているらしい中継映像が映った。山間の国道7号線を南下している間は行動を秘匿するためヘリコプターは同行しなかったが村上市の平地に入ると90式戦車が横に広がって農道を進撃するのを中継し始めた。それを見た機甲教導連隊長が第11戦車隊を部隊精神の「士魂」で説明した。
  1. 2023/09/04(月) 15:12:28|
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