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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ602

「今日のニュースは予定を変更してお送りします。本日、自衛隊が新潟で反転攻勢を開始しました」日本のマスコミも今回の攻勢作戦では本人に自覚がないまま種火を点けられていたプロ意識を燃え立たせた若手記者たちが半ば自発的に戦場となる新潟県内に潜入してスマートホンで現地情報を送り、速報式のニュースを報道していた。これまで新潟県は県知事による事実上の避難命令で県民は不在になり、県境は自衛隊によって封鎖されていた。そのため新聞とテレビは政府と防衛省の記者発表以外は政府の立ち入り禁止命令を犯して侵入したフリージャーナリストが撮影した画像を買い上げ、編集部員が光景の説明から文章を作成して記事やニュース原稿=台本にしていた。その点、今回はニュースを読み上げるアナウンサーの表情も次第に自信を帯びてきている。
「先ず百里基地と浜松基地を発進した航空自衛隊の戦闘機の大編隊が日本海に向かいロシア軍の攻撃や物資の補給を阻止して制空権を確保しました」この女性アナウンサーも数日前までは報道部が書いた反戦平和調に自衛隊の防衛行動を批判する論調を演じていたが、今ではアメリカのCNNが戦争を報じる時のように事実を伝えることに徹している。何よりも台本の内容に政治的主張が混じっていない。映像は防衛省・自衛隊の広報用ではなく百里基地で撮影した生の動画だった。
「続いて厚木基地から海上自衛隊とアメリカ海軍の対潜哨戒機が発進して日本海の制海権も確保しました。このアメリカ軍の行動は日米安保条約の発動ではなく先日の交戦規定に基づく武力行使でロシア艦隊を撃沈したのと同様に相互共同運用の一環です」在日アメリカ軍は先日、サクラ=志緒大尉がロシア軍輸送艦隊の護衛艦艇から火器管制レーダーの照射を受けて揚陸艦を撃沈した事案を「交戦規定=ROEに基づく自衛措置」と公式発表し、今後も相互共同運用を継続することを宣言した。
「そして早朝に山形県の鶴岡市内の宿営地を出発した陸上自衛隊の戦車部隊が山間部を通って午後3時過ぎに新潟県の村上市に到着して市街地に向かいました。この写真は戦車部隊に同行している当局の篠山記者が撮影した田園地帯で横に広がって進む戦車部隊です。戦車の後ろには隊員が乗ったトラックが続いています」本当は許可された同行ではなく勝手な追跡なのだがそこは隠蔽したようだ。
「一方、長野県警の発表では新潟県に向かう国道18号線では県境を封鎖していたデモ隊の人間バリケードでロシア製の対人地雷が爆発して参加者38名全員が死亡しました。デモ隊は長野県内の教職員と自治体労組の組合員と少数の高校生で松本駐屯地の陸上自衛隊が新潟県に出動するのを阻止するつもりだったようです。この事故で陸上自衛隊は県境を通過して新潟県の高田駐屯地に到着し、先ほど柏崎市に向かって出動したようです。この映像は長野県警に事故の通報が入った直後に長野支局のヘリコプターから撮影した爆発事故の現場です。自衛隊がバリケードにしていた自家用車を片づけているのが判ります。尚、不鮮明ですが路側帯に犠牲者の遺体が写っていますから視聴者の皆さまはPTSD(心的外傷後ストレス症候群)を起こさないようにご注意下さい」現場では遺骸は消防署が検屍を委託した病院に搬送し、私有車も警察が手配した修理工場が撤去したので殺風景になっており、ニュースの映像は数時間前のものだった。
「新潟のロシア軍が降伏したら私も通訳に行くのかしら」山口県下関市の屯田家ではエレナが居間でニュースを見ていた。先ほどまで障子1枚で続いている台所で義祖母と義母の屯田家の女3人で夕食の支度をしていたのだが、ロシア軍との戦闘に関するニュースなので居間の義祖父が呼んだのだ。夫の屯田局員は間もなく帰宅する。
エレナは中国地方日本海側の航空自衛隊基地での傍受した無線交信とスマートホンの通話内容の翻訳の秘密任務を終えた後も海上自衛隊岩国基地の第71航空隊が救難飛行艇USー2で救助したロシア軍パイロットの捕虜尋問の通訳を依頼されていた。先日はアメリカ海軍が撃沈した揚陸艦隊の病院で緊急治療する必要がある負傷者をロシア軍の要請を受けた第71航空隊が搬送したため病院での病室カーテン越しの尋問も経験した。今回は数千人単位の捕虜が出るはずなので首都圏で掻き集めても通訳が不足するのは間違いない。義祖父と義父はテレビを注視しているエレナの顔を覗き見た。
  1. 2023/09/08(金) 14:30:10|
  2. 夜の連続小説9
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