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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ611

「2小隊、このビルの捜索完了、手榴弾式ブービートラップを12個発見、全て撤去しました」第2普通科連隊と第13普通科連隊に普通科教導連隊を加えた3個普通科連隊は手分けして長岡駅前に建ち並ぶビルの捜索を開始した。長岡市は日本海側の都市としては発展しているのでビルの数は多いが1棟の規模はそれ程でもなく1個小隊に割り当てれば十分だった。捜索を終えた2小隊長は歩道で待っている中隊長に報告した。
「人間が潜伏している気配はありませんね。ここでもブービートラップを置き土産にしているだけです」「柏崎では床の振動に反応する屋内用のPOM3が発見されたから要注意だ」第2普通科連隊と第13普通科連隊は先ず刈羽崎原子力発電所を奪還するため柏崎市を捜索したが毎回のゲリラ攻撃で遭遇していた戦車や装甲車、自走砲などの戦闘車両だけでなく建物に宿営していた1個大隊程度の兵員も姿を消していた。その分、踏み込んだ建物の中にはドア毎と言えるほどブービートラップが仕掛けられていただけでなくデパートや量販店などの広いホールにはタイル張りの床を歩いた振動で隅に設置してあったPOM3が作動して少なくはない隊員が死傷した。
「それを教訓にしたからここでは無事故できているが気をつけてくれ」報告を終えて次の建物に向かう2小隊長に中隊長が声を掛けた。市街戦では残敵掃討を重視するが建物内では階段を登り、廊下を歩きながら各部屋に閃光音響弾や手榴弾を投げ込んで制圧していく。陸上自衛隊は弾薬や対空と対戦車の携帯式誘導ミサイルの調達を優先してきたので本来は警察用の閃光音響弾は言うまでもなく手榴弾の在庫が絶対数不足していて市街戦には支障が出ている。その点、ロシア軍がブービートラップに使っているPGD5手榴弾を流用できれば有り難いが、即時作動式の信管に交換していれば自爆してしまう。やはり「そうは問屋が卸さない」ようだ。
「POM3に関する情報がなかったのは本当に困りました」「施設の専門家もまさか人間が歩く振動で作動する地雷なんて考えもしなかったらしいよ。アメリカ軍もウクライナで回収された現物を見て驚いたそうだ」立ち止まって振り返った曹長の小隊長の愚痴に防衛大学校出身の中隊長も同意した。
「弾道ミサイル多数、捕捉しました」「やま、あまご、おはぐろ、あしから、しょうかい迎撃せよ」「やま、SM3、発射準備」新潟での陸上自衛隊の攻勢作戦が順調に進んでいる中、日本海で行動している海上自衛隊のイージス護衛艦隊は緊急事態に直面していた。日本海での行動が長期化して1隻ずつ母港に帰って艦体の整備と乗員の休息を受けてきたイージス護衛艦も今回の新潟での攻勢作戦では全6艦が戻っている。
現在の海上自衛隊は日本の監視衛星が中国によって破壊されて盲目状態だが、後継機は耐用年限が迫っていなかったため必要部品の用意はなく、ロケットも確保できず何よりも財務省が巨額の防衛関連予算=戦費の追加になる衛星とロケット、燃料の調達予算を認めずまだ射ち上げていない。それでも海上自衛隊は在日アメリカ海軍から非公式に情報提供を受けていて今回も横須賀基地の第7艦隊司令部がアメリカ艦艇宛てに送達した警報を傍受した。それを受けてイージス護衛艦・やまの艦隊司令官は最新型・迎撃ミサイル・SM3ブロック2Aの発射準備と弾道ミサイルの捕捉・追尾を命じた。
「各艦に目標割り当てを実施します」「よろしい。今回は飽和射撃(同時多数発射)だ。ロックオンでき次第発射しろ」「やまの担当第1目標、SM3にデータ入力完了。操作員、退避完了」やまのCIC(戦闘指揮所)では砲雷長が驚くほど冷静に戦闘を指揮している。この海域に配置されて以来、数発の弾道ミサイルを撃墜したが、追い詰められたロシア軍に残った奥の手は「弾道ミサイルしかない」と予想していた。
「各艦、発射準備よろし」「弾道ミサイル、降下を始めました。進路・高度からの推定目標・・・新潟県西部。射程距離到達まで300秒」「やま、よし。あまご、よし。おはぐろ、よし。あしから、よし。しょうかい、よし。全艦、よろし」各艦からの報告を伝える海曹の口調も相変わらず淡々としている。それでも過去の弾道ミサイルの撃墜は数発が目標だったが、今回は少なく見ても10発を越えている。数発の射ち漏らしは計算の上、行先=落下地点には覚悟してもらわなければならない。
  1. 2023/09/17(日) 15:48:22|
  2. 夜の連続小説9
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