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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ612

「初弾6発撃破。各艦、続いて発射します」「やれ」海上自衛隊のイージス護衛艦はアメリカ海軍と共に大気圏外での弾道ミサイルの撃墜に成功している世界で唯二(ゆいに)の実力を発揮して初弾で6発の弾道ミサイルを撃破した。各イージス護衛艦のCIC(戦闘指揮所)ではすでに旗艦・やまから割り当てられている攻撃目標のデーターを次のSMS3ブロック2Aに入力して発射準備を完了している。
「射程到達まで200秒、大気圏内に突入。上部ハッチ、開放。SM3のエンジン、作動開始」「各艦、発射用意、発射は各艦の判断とする」「やま、発射用意、60秒前」CICは艦橋ではないので肉眼では艦前部のSM3ブロック2Aの状況は見えないが、モニター画面の中継映像は甲板のハッチが横に滑り、中から炎を噴き出したのを映している。
「20秒、15秒、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、発射」「発射」各艦の砲雷長は声を揃えて発射命令を下した。これは発射手順を極限まで錬磨した結果だ。外部モニターの映像には明け方の薄暗い青空に再び6つのオレンジ色の炎の点が突き上がり、残像の線を引きながら北へ向かって飛んでいく光景が映っている。
「再び6発撃墜、戦果合計12発」「弾道ミサイル8発が上空通過、進路高度からの推定目標・・・新潟県長岡市」火器管制装置でSM3ブロック2Aを操作している海曹の誇らしげな戦果発表を遮るように防空レーダー担当の海曹が悲痛な声で報告した。しかし、司令官や砲雷長は無表情にうなずいた。アメリカ海軍第7艦隊司令部の弾道ミサイルの飽和発射(同時多数)の警報を傍受した時からロシア軍が無慈悲に浴びせてくる集中弾火を阻止することに限界があるのは口にはしなくても判っていたのだ。
「ロシア軍は発射可能な弾道ミサイルを射ち尽くしてくる可能性が高い。引き続きは即時発射の態勢を維持しろ」「上空に弾道ミサイルの航跡が見えます」司令官の指示に答えるように艦橋から艦長が報告してきた。外部モニターの画面には先ほどSM3ブロック2Aが2回飛んで行った方向に逆行するように赤味を帯びた光の線が8つ接近してくるのが映っていた。気分としてはSM3とは言わず通常の護衛艦が搭載している全ての短距離艦対空ミサイルも垂直に発射して迎撃したいところだが所詮は妄想に過ぎない。
「新潟の陸自には空自から空襲警報が届くはずだな」「空自も横田基地で同居していますから情報を共有しているでしょう。時間が短いので屋外で退避が間に合うかは疑問ですが」司令官は外部モニターから防空情報の画面に視線を移すと長い航跡が伸びている先が長岡市なのを確認して砲雷長に声を掛けた。海上自衛隊は横須賀基地で第7艦隊司令部と自衛艦隊司令部が同居して一体化しているが航空自衛隊も2012年に航空総隊司令部が府中基地から移転して同棲生活を始めている。どちらも蜜月関係の戦友だが陸上自衛隊だけは乗り遅れている印象がある。
「来ました、トラジェストリー・ピックアップ(弾道、確認)」「海自のイージス艦隊が迎撃します」同じ頃、入間基地の中部防空指令所では横田基地の在日アメリカ軍司令部が日本各地のアメリカ軍基地に発令した警報を傍受してAWACSで重点監視していた東部シベリアで多数の弾道ミサイルの航跡を確認していた。
「弾数確認を急げ、海自のイージス艦は6隻だろう。通過までに2回発射して全弾命中しても12発だ」「ヘディング(方位)とアルチュード(高度)からの推定落下地点、新潟県西部から北陸」「新潟、北陸の陸自に空襲警報発令。首相官邸にも通報」防空指令所の上階で事態を注視している中部航空方面隊司令部でも矢継ぎ早に指示が飛び交った。
「問題は刈羽崎や能登(=志賀原子力発電所)、若狭湾の原発がやられることだが・・・4高群(第4高射群)は何処にいる」弾道ミサイルの破壊措置命令ではイージス護衛艦と地対空ミサイル・PAC3の2段構えで撃破することになっているが、PAC3は超高速度の弾道ミサイルを迎撃するには着弾地点付近で待ち構えなければ不可能なのだ。
「4高群は小松基地に展開していましたが2個高射隊が高田駐屯地に移動して待機、陸自が柏崎市を制圧した時点で移動しています。しかし」「しかし何だ」「高射群は放射線防護の装備を保有していないから退避したいと・・・」ASP=年次射撃で模型の標的を撃墜することを実戦としている高射群のお遊び体質はイザ本番でも改まらないらしい。
  1. 2023/09/18(月) 14:13:46|
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