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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ618

「本日、14時13分に当病院に入院中の石田首相に付き添っている夫人から病棟ナースセンターに『意識が回復する兆候が見られる』との連絡があり、幹部1名、陸曹1名の看護師が病室に駆けつけたところ石田首相が目を開けて夫人と会話しているのを確認しました」石田首相が意識を回復して担当医が脳波の測定記録と問診で異常がないことを確認すると緊急記者会見が開かれた。通常は緊急の記者会見でも担当医から病院長に報告して質疑応答を繰り返した後にマスコミ各社に連絡するものだが自衛隊中央病院には石田首相の様態が急変することに備えて記者が常駐しているので会議室に集合し終わっていた。
「そこで通報を受けた担当医が診察して問診、つまり質疑応答を実施した結果、異状がないことが確認できました、ここからは担当医が説明します」「脳神経外科の担当医の前野2佐です」ここまでで病院長は担当医に引き継いだ。病院長も常時、石田首相の病状について報告を受けているが、意識回復の状況は病院長室での第一報から会見会場に向かうまでの歩き話程度だった。とは言え病院長も本当の発症原因は熟知している。
「石田首相の症状については脳波や心拍数などに異常がなく、単に意識を失っているだけの状態でしたから意識が戻れば正常になるのは当然です」「それで病名は判ったのですか」「いまだに不明です。近いうちに学界に照会しようかと考えています・・・」担当医は記者たちの「能力不足だろう」と言う小声の揶揄を聞き流しながら別のことを考えていた。実は担当医は脳神経学会ではなく今回の薬物の提供を受けたイギリスの在日大使館に症状のレポートを送ることになっている。つまり石田首相で人体実験したのだ。
「総理の職務復帰は何時からになりそうですか」「5日間は栄養点滴だけで横臥していましたから体力は落ちているでしょう。担当医としては精密検査を受けてから退院していただくつもりでいます」「5日間も休養したんだから倒れる前よりも元気になったんじゃあないのか」担当医の回答に新聞記者が皮肉を返し、会見場では嘲り(あざけり)と安心が入り混じった笑いが起きた。実際、石田首相は病室で出された食事に手をつけることなく妻が用意していた新聞を熟読し始めてスマートホンで官邸の立野官房長官=首相臨時代理に連絡していることは病棟看護師長から通報を受けている。この様子では精密検査を口実にしてもう一泊させることは難しいかも知れない。
「先ほど自衛隊中央病院で病院長と担当医の記者会見がありましたから病状に関する質問は必要ないでしょう。単刀直入に本題に入ります。本日の午後2時過ぎに石田総理が意識を回復しました」1時間後、首相官邸でも立野官房長官による緊急記者会見が開かれた。立野官房長官はそれまで石田首相からのスマートホンで事情聴取を受けて疲労困憊していたが、新潟の攻勢作戦については言及がなかったので安堵していた。
「つまり長官の臨時代理も終了すると言うことですね」「発言は指名を受けてからにして下さい」先ほどまでの自衛隊中央病院では担当医の説明を遮るように質問していたが、やはり首相官邸での記者会見はルールとマナーが厳しい。
「総理の意識が戻った以上、登庁されなくても指示を仰ぐことはできますから私の臨時代理は必要なくなります」この回答に新聞記者は「残念でしたね」と皮肉が口から出かかったが、先ほど秘書官から注意を受けたばかりなので呑み込んだ。
「A日新聞の尾崎です。そうなると長官が臨時代理として独断で推し進めた緊急事態の布告を撤回して新潟への反転攻勢も中止するんですね」ここで新聞記者が改めて単なる皮肉ではない質問を投げかけてきた。A日新聞に限らず新聞記者たちは石田派の閣僚から緊急事態の布告による自衛隊の治安出動の武力行使権の拡大や新潟への攻勢作戦が立野官房長官と石田派の裏切り者・双木外務大臣、釜田防衛大臣が共謀した臨時代理の職権乱用だとする苦情を聞き出していた。特にA日新聞としては世界共産主義革命=第3インターナショナルの旧盟主の末裔であるロシアに救いの手を差し伸べなければならないのだ。
「それは総理が復帰されてから話し合いたいと思います。その前に総理は内閣の改造する意向を口にされました」「えッ」「げッ」「へッ」「おッ」本題から外れた唐突な情報提供にマスコミ各社の記者たちは一斉に絶句する時の返事を吐き出した。どうやら石田首相は自分が不在の間の閣僚たちの態度に不信感を抱いたらしい。
  1. 2023/09/24(日) 14:56:50|
  2. 夜の連続小説9
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