fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ622

「本日、自衛隊は新潟市の制圧を開始するようです。それでは自衛隊に同行を許されて現地取材を続けている中村記者のレポートです。中村さん」「はい、私は今、阿賀野川を挟んで新潟市の中心街を一望できる大学の建物の屋上にいます。先ほどまで自衛隊による砲撃が行われていて市街地各所で閃光と爆発音が起こっていました。現在も黒煙が上がっているので場所は判ると思います」記者が同行するようになってテレビでも戦況を速報するようになった。今回はロシア軍の火砲を破壊しているため反撃は限定されるものの市街戦となれば危険=足手まといなので部隊への同行は断られたようだ。
「以前ならこの位置からなら信濃川沿いに建つ県庁の高層ビルが見えたのですが今は姿を消して黒煙が立ち上っています。どうやら砲撃で破壊されたようです。同様に市役所や大学なども破壊されました。それでもウクライナ侵攻で報道されている市街地の惨状に比べれば自衛隊は目標だけに砲弾を集中させていて住宅地などに被害は及んでいないようです」「要するにロシア軍がいる可能性がある場所に限定した攻撃だったと言うことですね」「はい、続いて戦車と普通科部隊が市内の捜索と制圧を開始すると言うことで、ここからも市内に向かう道路には戦車を先頭にしたトラックの車列が確認できます」この記者はスマートホンで中継しているが阿賀野川に架かる松浜橋で施設科の隊員が橋の欄干からロープで吊られて下の爆発物を確認している光景とその手前の道路上に戦車と装甲車、トラックが車列を作っている映像を送信してきた。
「何か動きがあればお願いします。ここで狭間解説員に伺います。それにしてもどうしてロシア軍は降伏しないのでしょうか・・・」カメラが引いて隣に座っている解説員の中年男性が映ったところで女性アナウンサーが話をふった。その時、テレビからは言い争う声と物が倒れる音、激しく床を歩き回る靴音が流れ、画面の女性アナウンサーは一点を注視して呆然とした。隣りの席の解説員も唖然として口を開けている。
「我々は中華人民共和国国防法が規定する人民の義務に則って国際連合常任理事国である我が中国と同志であるロシア連邦を冒涜する日本軍国主義の宣伝媒体であるクジテレビを破壊する。カメラは撮影を続けろ。放送を続けるんだ」銃声が一発響くとスタジオ内が静まったようで雑音が聞こえなくなり、拳銃を握った男が横から女性アナウンサーの席に歩み寄った。ここで映像が消えて黒一色の画面の中央に「都合により放送を中断します」と言う白い文字が表示された。
「放送は中断しているぞ」「放送を続けろと言っているんだ。中止させた責任者は出てこい。命令違反の懲罰を加える」するとスマートホンで番組を確認していた別の男が報告した。それを聞いた男は怒声を上げて天井に向けて発砲した。
「私がチーフディレクターの露田です。放送を中断したのは視聴者を過度に刺激しないための予防措置でして・・・」パーン。スタジオの隣りのマスター・コントロール・ルーム=主調整室から出てきたチーフディレクターが弁明を始めると男は冷ややかな笑いを浮かべて銃口向けると無造作に引き金を落とした。胸を射たれたチーフディレクターが仰向けに倒れると女性スタッフが悲鳴を上げた。座り込んで失禁した女性スタッフもいたがGパンを履いているので床には血の水溜りだけができた。
「放送が再開したぞ」「そうか・・・それじゃあ視聴者を楽しませないとな」スマートホンで確認している男が何故か自慢げに報告すると男は好色そうに笑い、女性アナウンサーの後頭部に手を伸ばすと強引に顔を引き寄せて唇を重ねた。解説員が制止しようと立ち上がるとその場で額を射ち抜かれて即死した。
「クジテレビが襲撃されている」「女子アナが犯されているのを流しているぞ」新潟の攻勢作戦の開始を伝える臨時ニュースを確認していた首相官邸でもクジテレビで起こった事件に愕然とした。画面では先ほどまでニュースを伝えていた女性アナウンサーが上半身を裸に剥かれ、椅子に座ったまま乳房を揉まれ下半身を突き上げられている痴態が映っている。画面の下には字幕で「当社社員多数が射殺されたため要求に従わざるを得ず、このような映像を流すことになっています」と説明が流れている。つまり男たちは大集団で襲撃し、警備員や制止する社員を射殺しながらスタジオに乱入したらしい。
  1. 2023/09/28(木) 14:01:46|
  2. 夜の連続小説9
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<9月29日・信じ難い生還劇・ブロックレスビー空中衝突事故 | ホーム | ダークダックスのゾウさん・遠山一さんの逝去を悼む。>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/8701-6d7e7839
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)