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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ628

夕方になって日が陰ってくるとお台場の埋め立て地に建つ世界的建築家の息子が設計したクジテレビの特徴的な建物は全ての窓に灯った照明で光輝いて見えた。暴徒たちが局員の逃走防止の照明として命じたようだ。拳銃を持った暴徒の歩哨が各所に配置され、巡回を続けていることは陽がある間に対岸のビルの窓から望遠鏡で確認している。
「間もなく日没です」「今日の日没はやけに遅かったよな。待ちかねたぞ」立野官房長官から警視庁の窓口の伊藤警部経由で命令を受けた田島3佐は支援要員を含む5名の自衛隊特殊任務部隊と共にレインボーブリッジとは反対側の有明埠頭に建ち並ぶ倉庫の管理棟のビルで待機していた。今までクジテレビの番組で情報を収集していたが女性アナウンサーたちに続いて女優や歌手、アイドル、お笑い芸人までが凌辱を受けた。それにしてもベテランの域に達している女優と歌手にお笑い芸人は兎も角として、まだ10歳代のアイドルたちは売り出すグループに加入するために芸能関係者に身体を提供しているらしく意外に平然と抱かれ、中には快感に溺れて喘ぎ声を上げる娘もいた。一方、直視できなかったのは夕方になって登場させられた裏方と思われる女性たちで美容とは無縁の垢抜けしない容姿で体型も女性以前に労働者のものだった。中でもどう見てもパッとしない事務員風のメガネをかけた20歳代の女性は裸になることを拒んだのかワイシャツの前ボタンを引き千切られた姿でキャスター席に連れてこられ、スカートをまくり上げて下着を脱がされる間も「嫌、嫌」と泣き叫び、身をよじって抵抗していた。そして椅子に座った暴徒の上に腰を落とされた瞬間、「ギャー」と悲鳴を上げた。その後はメガネの奥で涙を流しながら呆然自失していたところを見るとバージンだったようだ。
「よし行こう。これ以上被害者を出す訳にはいかない」「はい」「アイアイ・サー」「ラージャ」田島3佐は時間よりも周囲の明度で決断した。この返事を聞けば参加するのがそれぞれの分野に熟練した陸海空曹であることが判る。
「指揮官、ボンベをどうぞ」「うん、それを背負いながら海面を泳いでいくのも変な気分だな」「中身は液化催眠剤ですから仕方ないですよ」埠頭へ渡る橋の脇から海面に下りると上に残った支援要員が4人分の黒く塗装したスキューバダイビング用の2本組空気タンクを紐で垂らしてきた。ウェットスーツを着ている4人は立ち泳ぎしながら受け取って水面で背負った。空気タンクは液体が満タンなので浮にはならずむしろ水面では重荷だ。おまけに暴徒の歩哨に見つからないように身体は沈めなければならず辿り着くまでに疲労困憊しそうだ。しかし、そこからが戦闘行動なのだ。
バキッ「グエッ」4人は潜水員の海曹の手引きでお台場の下に泳ぎ着くと陸曹が先に登り、懐中電灯を持って歩いてきた暴徒の動哨の首の骨を折って殺害した。背後から飛びついて首に肘を回して両足で地面を蹴り、一気に腹這いになるレンジャー格闘の技だった。
「よし、この線が影だ。従列で前進。我に続け」続いて地上に登った田島3佐が周囲を確認し、揃った3人に声を掛けた。3人は窓の照明と敷地内の街灯の光線が途切れている角度から音もなく建物に駆け寄った。この姿はまるで忍者だ。
「ここから催眠ガスを注入すれば空調系統で全館に放出されます」「よし、ガスマスクを装着しろ。作業開始」建物内に進入し、地下の空調室に入ると施設員の空曹が機材を確認して背後で見ている田島3佐に説明した。空曹はこれまでも同様の作戦を実施しているので高層ビルに設置されている大型の空調装置の構造は熟知している。
「注入開始」「8本で足りるか」「建物がでかいですから微妙なところです」空曹が吸気ダクトに自分で背負ってきた空気タンクの液化催眠剤を注入し始めると田島3佐が今更な確認をした。すると専門家の回答も今更だった。
「社員証を下げていない者を暴徒と断定する。拳銃を持っている者は自分の拳銃を咥えさせて撃たせろ」「犯された女性は裸だったはずです。ほぼ全員でしょう」「女性は放置しろ」「了解」「アイアイ・サー」「ラージャ」催眠剤の効果は驚くほど速く現れた。ガスマスクを装着して空調室の前で短機関銃を構えていた陸曹と海曹は廊下から聞こえていた足音と話し声が途絶えたことに気がついた。陸曹が様子を窺うと射殺された局員の遺骸に並んで暴徒たちが安らかに束の間の寝息を立てていた。これから集団自決させる。
ミホ(BLOOOM)イメージ画像(BLOOOM)
  1. 2023/10/04(水) 16:04:19|
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