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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ631

「何これ、本当なの」クジテレビ占拠事件の犠牲者の長めの勤経・供養を終えて梢は2人でシャワーを浴びる前に晩酌の準備に台所へ向かった。その途中、居間のテレビを点けると只ならぬ声を上げた。その聞きなれない口調に法要の片づけを終えた私も歩み寄ってテレビを見ると多くの街明りが灯る都市部の高速道路らしい高架が激しい炎の線を引いていた。まだ音声や字幕は入っていないが周囲にはビルが密集しているのでかなりの大都市のようだ。その高架上で多くの車両が炎上している。
「音声が入らないようですからスタジオから説明します。この映像は渋谷区の放送センターの屋上から撮影した首都高3号渋谷線の模様です」考えてみればクジテレビの中継は国営放送が独占配信していたのでチャンネルはそのままになっていた。つまりこの火災は渋谷区を通っている首都高速道路3号渋谷線で発生している。それにしても高速道路の玉突き事故などで発生する自動車火災の規模ではない。ここでクジテレビの制圧を中継していた男性アナウンサーと交代したらしい女性アナウンサーが説明を始めた。
「本日の午後7時頃、都内と川崎市にある3カ所の油槽所が拳銃を持った男たちに襲撃されて従業員多数が射殺され、ガソリンを満載していた燃料タンク車が強奪される事件が発生しました。しかし、警視庁はクジテレビの事件に対処していたため初動が遅れ、燃料タンク車は首都高の各路線、新宿、銀座、渋谷、池袋、日本橋、品川などの主要幹線を暴走しながらガソリンを噴射しました。そして間もなく発火して走行していた車両が次々に炎上したのです」事件の概要が判ったところでチャンネルを変えるとクジテレビを除く民放各局も社屋の前を通る主要幹線の火災を屋上や窓から見下ろす中継を流していた。まだ警察の発表はないので大同小異の体験談的な解説を加えている。
「今、乗用車が爆発しました。乗っていた方の安危は判りません。あッ、別の乗用車が爆発しました。危険ですから救助などは自分の身を守ることを優先して下さい」オランダから帰国すると民放のアナウンサーまで国営放送のような教育的指導を口にするようになっていて腹が立ったが、この映像を見る限り必要な指摘だ。欧米では勇気を男性の資格とするため危険に陥っている人を救うことに躊躇しないが、それに比べて臆病な日本人でも安全な社会で暮らしている分、状況判断が甘く車内で助けを求める人を見れば爆発の危険性などは考えずに駆け寄りかねない。しかし、今は歩道から見物するのは止めて車両の燃料タンクが爆発した火焔が及ばない位置まで退避するべきだ。その前にテレビ局のアナウンサーとカメラマンこそ窓から離れた方が良い。
「上空からの中継です。都内各所で大きな火災が発生しているのが判ります。消防車のサイレンが鳴り響いていますが、消火活動の様子は確認できません」続いて各局は取材ヘリを発進させて上空からの中継映像に変わったが、都内各所の道路で火災が発生していて高度を上げると都市が赤い炎の線で切り刻まれているようだ。特に首都高速道路では高速度で撒き散らしたガソリンに火が点いたのでかなり広範囲が炎上している。
「燃料タンク車ってどのくらいガソリンを積んでるのかしら」「那覇の燃料小隊の連中に聞いた話だと航空自衛隊の大型燃料トレーラーは2万リットル、約5000ガロンだそうだ。一般のタンク・ローリーはかなり小さいがそれでもタンク一杯のガソリンを撒き散らせばかなりの距離になるだろうな。戦時中に焼夷弾で空襲を受けたようなものだ」私の例えに梢は厳しい顔でうなずいた。戦時中に日本の都市を空襲したBー29は1機当たり40発の焼夷弾を投下したと言われるが、木造家屋が多い日本では一面の火の海が嵐を巻き起こしたようになって甚大な被害を出した。同様に大規模な火災旋風を発生させた関東大震災と比べても人為的な火災の恐ろしさは格段に違う。
「これも在日中国人が起こしたテロだとしたらヨーロッパのイスラム過激派とは規模や残酷さがまるで違うわ。どうしてここまで滅茶苦茶なことができるのかしら」「中国は古代から人を殺して物を壊すことの繰り返しで歴史を作ってきたから痛むような良心は持ち合わせていないんだろう」確かにヨーロッパで体験してきたイスラム過激派のテロとは次元が違う。これほどの惨劇が簡単に現出できることに今更ながら気がついた。
  1. 2023/10/08(日) 15:59:44|
  2. 夜の連続小説9
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