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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ640

「総理は皇居へ参内ですか」「退院の報告です」「それでは流石に閣議室からは隔離されますね」新潟方面の戦闘が硬直状態になると石田首相が入院と退院の報告のために皇居に参内した。するとモニター画面から姿を消した釜田防衛大臣が閣議室の隣室に設置されている立野官房長官の専用電話にかけてきた。
「実は総理が内閣改造を考えているのは今回の防衛行動を主導している私と双木大臣の更迭が目的らしいんです。それでも戦時に弱腰の防衛大臣では党人が黙っていないでしょう。そこで外務大臣を自分の側近にして防衛大臣には若手の強硬派を据えるつもりらしい」「中央指揮所に常駐している割には独自の情報網も活発に機能してるですね」釜田防衛大臣は無派閥でも無頼派以上の破滅型本音の言動で絶大な人気を博し、民放の報道バラエティー番組では「悪党」なる架空政党の幹事長を演じていた父親の左右上下裏表を問わぬ人脈を引き継いでいるので情報量は官房長官の公的立場を凌駕している。
「そこで退任させられる前に新潟の戦闘に決着をつけておきたいと思いまして・・・総理が不在中に私の独断で全面攻撃を命じます。長官には耳打ちだけです」「双木大臣は何と」「双木大臣は私と違って頭(おつむ)が優秀なので色々考えているようですが、私は親父から喧嘩では情けを挟んだ方が負ける。相手が泣いて謝るまで容赦はするなと教えられてきましたからここで実践しようと思っています。それでは閣議室で見ていて下さい」釜田防衛大臣は立野官房長官の返事を待たずに電話を切った。立野官房長官のところにも「補給を断たれたロシア軍を屈服させるには徹底的に攻勢を強化して戦意を喪失させるしかない」と言う意見が防衛族の党人や自衛隊OBなどの軍事の専門家から多数寄せられているが石田首相には通じなかった。
「東方対戦車ヘリ隊のAHー1が新潟市の上空に入りました」立野官房長官が席に戻ると中央指揮所のモニター画面は作戦指揮の模様を映していた。画面には新潟市周辺地域の地図と交信しているAHー1と思われる航跡の光の線が映っている。
「300フィート(約91・44メートル)まで高度を下げます」「先日、グローバルホークが撃墜されている。十分に注意しろ」「了解、見つけ次第に攻撃します」「馬鹿者、お前の任務は偵察だ」中央指揮所の陸上自衛隊の高級幹部とパイロットの軽妙な交信が流れると画面はAHー1が送ってくる新潟市内の中継映像に変わった。市街地の郊外の住宅地では多くの家屋が破壊され、後続の施設部隊が瓦礫の中でロシア軍の遺骸や残留物を捜索した形跡が見て取れた。何軒かの家では門から玄関への通路上に大量の血痕が残っていてPOM3が爆発して隊員が戦死した現場と推察した。
「中心街に向かいます」「災害派遣じゃあないんだから破壊した建物の状況確認よりもロシア軍を探せ」「了解、確かに災害救助隊の気分になっていました」再び軽妙な問答になったがAHー1は貨物や人員を乗せられないため災害派遣では被災地の状況確認の偵察くらいしか活躍できない。その意味ではパイロットの自嘲だ。
「壊していないビルとビルの間にロシア軍の戦車がいます。丸い砲塔の形状から見てTー80、5両です」「その地区は30普連(第30普通科連隊)が捜索にかかる直前に停止命令が出たんだ」新潟市の中心部は地元・新発田駐屯地の第30普通科連隊と市街戦も模範展示できる練度を持つ普通科教導連隊が担当している。そのため建ち並ぶビルに分散配置されている残存兵力を相手に壮絶な市街戦を展開していたのだが、弁護士会が「損害賠償訴訟の用意がある」と述べた記者会見を見て石田首相の腰が砕けてしまった。映画「仁義なき戦い」の舞台を選挙区にしているが所詮は東京生まれの都会のボンボンで釜田防衛大臣とは育ちが違うようだ。
「だったら代わりに殺(や)ります」「殺(と)れ」この命令は釜田防衛大臣の声だった。この任侠映画の台詞のような口調に立野官房長官は千葉県出身でも釜田防衛大臣の方が「仁義なき戦い」の主題曲が似合うような気がした。
「地対空ミサイル2発視、回避行動をとります・・・駄目だ避け切れない」「よし、仇を討て」「30普連、教普連、攻撃開始、全部隊、市街地を制圧しろ」「12特、特教隊、一斉砲撃開始、目標は達してある通り」やはりこの攻勢再開は出来レースだった。

  1. 2023/10/18(水) 14:58:49|
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