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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ649

「新潟市内では今日も陸上自衛隊による破壊された建物の撤去が進んでいますが、同時に新たな犠牲者の遺骸が次々に発見されています。今日の作業終了の時点で1000人を超えました」「1000人かァ・・・1回の戦いで万単位の人間が死んだ昔の戦争を思えばかなり少ないな」屯田家では新潟での開戦以来、エレナの希望で夕食時に国営放送のニュースを見る習慣ができているが義祖父の解説がなければ戦争を実感できない。当初は食事が進まない戦場の光景とマスコミが「犠牲者」と呼ぶ戦死者や負傷者の話題ばかりだったが今では土木工事の映像なので大丈夫だ。
新潟での戦闘が終結して県内の高田駐屯地の第5施設群は長岡市と柏崎市の担当になっているが、続いて近い順に到着した座間駐屯地(神奈川)の第4施設群、豊川駐屯地(愛知)の第6施設群、大久保駐屯地(京都)の第7施設群、福島駐屯地(福島)の第11施設群、そして遠路はるばるの柴田駐屯地(宮城)の第10施設群が逐次作業にかかり、大型土木器材と人力で順調に廃墟を空き地に衣替えさせている。
「なお作業に当たっている自衛隊の今日の損害ですが、犠牲者が2人、負傷者が23人、入院中だった負傷者が4人死亡しました」この口調は中国の細菌兵器=新型コロナが蔓延した時に天気予報とセットで放送していた感染者数の模倣だ。
対人地雷POM3だけでなく各種地雷やブービートラップを排除しているこちらも近い順に到着した新町駐屯地(群馬)の第12施設大隊、春日井駐屯地(愛知)の第10施設大隊、大久保駐屯地の第3施設大隊、神町駐屯地(山形)の第6施設大隊、最も遠い八戸駐屯地(青森)の第9施設大隊は人間の徒歩の振動を感知するセンサーに悪戦苦闘していて作動・爆発する事故が続発している。ブービートラップについては遺骸に仕掛けられていることを周知徹底したことで減少しているが、住宅地でも倒れている自転車や庭に転がっている子供の遊具にまで仕掛けてありこちらも損害が止まらない。
「一方、今日の官邸での定例記者会見で立野官房長官は新潟で収容されているロシア軍の犠牲者に多くのアジア人が入っていると言う噂について『事実だ』と認めた上で『ロシア軍はウクライナ侵攻で兵力が払底しているので北朝鮮軍に支援を求めたのかも知れない』と説明しました」「ふーん、北朝鮮は日米安保よりも頼りになる同盟国なんだな」今度は義父が反応した。日本のマスコミはアメリカ政府が中国系移民組織の強力な政治工作によって日米安全保障条約が発動できないことを大々的に取り上げてアメリカに対する不信感を醸成・扇動している。岩国基地を有する山口県では広島のマスコミを中心に反基地運動の活動家を出演させて今までは誰も耳を貸さなかった反米親中の主張を宣伝させているので義父も多少は影響を受けているのかも知れない。
「アメリカ軍も自衛隊との共同運用として日米安保条約なしでも戦闘に参加することになっています。実際、日本海でロシア軍の輸送艦隊を全滅させたのはアメリカ海軍の哨戒機です」「それは岩国で聞いたのかね。だったら安心だ」エレナは初めて義父に強い口調で反論した。義父はそれを叱責のように受け取り、気まずそうに食事を再開したが義祖父だけは事実を理解した。この場合、「安心」は適切な表現だ。
エレナは最近まで海上自衛隊第71航空隊のUSー2救難飛行艇が救助したロシア軍パイロットの事情聴取の通訳のため岩国基地に行っていた。そこで見聞する自衛隊とアメリカ軍の実像と自宅のテレビや新聞でマスコミが流している虚像の落差に悩みながらも特別な任務で知り得た防衛秘密として語ることは控えてきた。
「ここで優しい季節の話題をお伝えします。山口県周南市熊毛町に今年はナベ鶴の第1陣が飛来しました」ここで全国区のニュースで山口県ローカルな話題になった。今まで殺気に近い敵意を帯びた目つきで自衛隊に関するニュースを読んでいた女性アナウンサーの表情も一気に優しくなった。山口県の話題なので屯田一家も揃って顔を向けると身を乗り出した。山口県では「山口県出身」と言うだけでどんな馬鹿でも偉人になり、落ち目の芸能人も永遠にスター扱いされ、極悪人には免罪符になる。ナベ鶴の越冬地も今では鹿児島県出水市が中心で熊毛町には時折数羽が迷い込むだけになっている。それでも怪我をしたナベ鶴を出水市から転地療養させて無理やり越冬させるのが山口県式だ。
  1. 2023/10/27(金) 13:28:03|
  2. 夜の連続小説9
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