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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ659

「ストレート(西部防空管制隊のコールサイン)、チャイナ06は一斉に窓を閉めた。少なくとも窓の数だけの搭乗者がいる」「ラージャ、スタンバイ」「ストレート、ディス・イズ・ギャオス24、チャイナ11も同じく翼よりも高く上昇した直後に全ての窓を一斉に閉めた。全ての窓の席に座っていなければ不可能だ。この機体はボーイング777だから少なくとも80人は乗っている」110機の大型旅客機を東シナ海上空のADIZ=防空識別圏付近で補足した第8航空団と第5航空団の戦闘機は事前に指示された通り、目視による搭乗者の確認を実施しようとしたが全ての窓が一斉に閉められた。これはパイロットが言う通り、少なくとも窓の席に1名ずつが座っていなければできない芸当だ。窓の数は機種によって多少の差はあるが片側40個程度なので両側で80人は搭乗していることになる。しかし、この人数では戦闘員とは断定できない。
「不審な事象であることは間違いない。領空に入り次第、築城と新田原、美保に強制着陸させる。案内するお客さんはそれまでにアサイン(割り当て)する」「ラージャ、ギャオス24」「ラージャ、ギャオス26」西部航空方面隊では多くの兵員を搭乗させていることが確認できれば自衛処置として撃墜することも視野に入れた対応を検討していたが、打診を受けた航空総隊が航空幕僚監部の判断を仰ぎ、西部航空方面隊管内の自衛隊基地への強制着陸と言う命令が届いた。岩国基地は予備飛行場になったがアメリカ海兵隊の基地司令は「ロシアの次はチャイナも捕獲させろ」と自衛隊側の予想とは逆の反応を示したらしい。一方、陸上自衛隊は築城基地には小倉駐屯地の第40普通科連隊、新田原基地にはえびの駐屯地の第24普通科連隊、美保基地には米子駐屯地の第8普通科連隊が展開して基地の外柵を外向き、内向きの二正面で固めている。駐機した旅客機を確保するのは航空自衛隊の管理隊警備小隊だ。
「これはトラック・ナンバー(航跡番号)で割り振りました。機種についてはインターセプター(要撃機)からの通報によります」数分後、西部航空方面隊司令部では防衛部の兵器管制幹部の運用幕僚が前もって用意していた3つの基地に割り振った旅客機の一覧表を航空方面隊司令官と幕僚長、防衛部長の確認を受けた。流石に110機ともなるとどう割り振っても収容能力を超えるがそれ以上に問題なのは大型旅客機が航空自衛隊基地の滑走路に着陸できるかだ。停止し切れずに擱座すれば滑走路を封鎖して緊急発進に対応できなくなる、仮に基地外に飛び出しても幸い築城基地の北側は瀬戸内海、美保基地の東側は中海に突き出していて新田原基地も市街地までは1キロ以上の樹木林になっているが中国のパイロットが意図的に市街地を狙えば大惨事を引き起こすのは容易だ。
「防衛部長、福岡航空局から外線が入っています」その時、西部航空方面隊指揮所の電話が鳴り、受話器を取ったベテランの空曹が相手を告げた。福岡航空局とは航空無線で接続されていて必要に応じて情報交換しているが多くの場合は苦情なので運用幕僚が対応している。それが高級幹部の部長を指名してきたのには木っ端幹部では処理できない重大な問題を吹きかけてくることが推察された。
「もし、西部航空方面隊防衛部長の丹羽1佐ですが」「福岡航空局交通管制部長の塚田です」面識はないが国家公務員としては紳士的な出だしで安堵した。ところが相手はいきなり本題に入り、冷静な口調のまま糾弾を始めた。
「航空自衛隊はスコーク(敵味方識別装置)を切った状態で多くの戦闘機を発進させているが何をやっているんだね。航空無線を傍受していると現在、東シナ海を接近中の中国政府のチャーター機の編隊に接近しているようだ。先ほど複数の機長から航空自衛隊機が意図的なニアミスを繰り返していると通報があった。このままでは航空安全だけでなく外交問題に発展する可能性もある」「なるほど」「閣議中のウチの大臣(国土交通大臣)に報告させたから間もなくオタクの大臣(防衛大臣)からお沙汰があるはずだ。首相と外務大臣は激怒していたらしいから覚悟しておいた方が良いな」「それはご親切にどうも」これで福岡航空局交通管制部長は電話を切った。しかし、今回に限らず自衛隊の高級幹部たちは戦争を想定していない国内法令や政治情勢の限界ギリギリの防衛行動を指揮している以上、腹を切る覚悟として自決用の薬物や道具を用意している。
  1. 2023/11/06(月) 15:44:42|
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