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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ664

「伊丹空港のランウェイ(滑走路)で旅客機がタイヤバースト(破裂)しました。クローズ(閉鎖)・ランウェイになりました」「やったな」「お見事」瀬戸内海上を西に進む中国機の大編隊が山口宇部空港に続いて広島空港への着陸空路を無視して岡山県に差し掛かった時、市ヶ谷地区の防衛省地下の中央指揮所に航空総隊指揮所からの情報が届いた。それを聞いて陸上幕僚長と航空幕僚長が唇を歪めた笑顔で見合った。伊丹駐屯地から伊丹空港の滑走路のノース・エンド(北端)までは国道171号線で猪名川を越えて1キロ程度なので狙撃手が準備を終えれば数分で到着、空港内に潜入して任務を遂行できる。実際、南から進入して着陸した旅客機のタイヤを狙撃したようだ。
「これで関空に下りるしかなくなる。関空は伊丹以上に混んでいるから50機の順番待ちになるな」3つの空港に分散するはずだった110機が伊丹空港と成田空港に2分割されたため55機ずつになった。それでも国土交通省航空局は焦った様子は見せていないのでこの事態も織り込み済みなのかも知れない。そうなると完全に共犯者だ。
「相手は中国機だから割込みくらいはやりかねないぞ。そのうち燃料切れだって騒ぎ出してアプローチしている機体の前に侵入するくらいのことは中国の空港では日常茶飯事だ」航空幕僚長の解説に宮谷防衛副大臣は唇を咬んだ。中国の旅客機は東シナ海上空で航空自衛隊の戦闘機が機内の様子を確認するために慎重に接近したことをニアミスとして国土交通省に通報したが、南シナ海上空ではアメリカ軍の哨戒機の進行を阻止(「妨害」ではない)するために戦闘機が直前を横切る危険行為を繰り返している。これは自衛官の現役世代には視た者はいないが昭和43年放送のアニメ「タイガーマスク」の主題歌にある「ルール無用の悪党」を体現している。
「このままでは大阪湾を横切って小牧、岐阜、浜松の上空を通過されてしまう。やはりセントレアに着陸させよう」「運輸省が請け負えばな」「それは無理だろう」中央指揮所では本来は国土交通省の独演会である中国の旅客機の大編隊の動向に各幕僚長たちが参入して茶番劇に演出していた。大編隊は航空局に伊丹空港と成田空港への着陸を命じた手前、55機ずつの編隊を組んで片方は大阪湾に進行して間もなく航空自衛隊の幹部候補生学校がある奈良基地の上空を通過する。残りの編隊は四国中央部の山脈を陸上競技場のトラックを逆回りするように旋回し始めた。傍受している航空無線によればこれは関西空港に着陸させるための航空局の管制に従った形だ。
「37i(第37普通科連隊)は関空に部隊を派遣したのか」「関空に着陸させる予定が出た時点で総隊が中方(中部方面隊)に指示しましたが出発報告は入っていません」同じ迷彩服を着た統合幕僚長と陸上幕僚長が内輪ネタを話し合った。幕僚長の席には迷彩服姿の統合幕僚長と陸上幕僚長、黒のダブルの制服の海上幕僚長、パイロット・スーツの航空幕僚長が並んでいるので調和が取れていない。これも海上自衛隊は帝国海軍の士官が戦闘中も軍服だった伝統を踏襲しているそうで、パイロットの航空幕僚長にとっては戦闘機に乗り込んで飛ぶ服装が戦闘服なのだ。宮谷防衛副大臣にはカルチャー・ショックの連続だ。一方、防衛閣僚たちは戦闘が長期化すると不似合いな作業服を着用するようになっていたが防衛大臣が交代したのを機にスーツとネクタイに戻り、今日も対面の席で上から目線の観客になっている。
「横田のATC(航空管制)が飛行安全上の理由でチャイナの関東空域への進入を拒否しました」「やはりな」「進入を強行すれば空域保全のために撃墜すると警告しました。そのために三沢の14SQ(スコードロン=飛行隊)のFー16が発進しています」航空総隊指揮所からの情報に各幕僚長は一斉にうなずいた。ホワイトハウスは北京から無尽蔵の工作資金の提供を受けている在アメリカ中国人団体のロビー活動によって議会が日米安保条約の発動に反対しているため、せめてもと海上自衛隊自衛艦隊が実施している日本の輸送船団の護衛に太平洋艦隊を一体化させている。続いて在日アメリカ軍の共同運用の一環としての武力行使を容認するようになったが今回、中国機を撃墜すれば参戦への既成事実は大きく一歩踏み出すことになる。それにしても管制権を持つ空域の保全と言う口実は誰の入れ知恵だろうか。横田基地には航空総隊司令部も同居している。
  1. 2023/11/11(土) 15:15:51|
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