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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ667

「やはり部隊を輸送していたな」「80人どころじゃないぞ」2機の大型旅客機の前を通り過ぎて急上昇したUHー1の中では緊急脱出シューターを使って次々に地上に下りている兵士の動きを見下ろしながら指揮官の小隊長とパイロットが話し合っていた。
緊急脱出シューターは火災などで機体が爆発する前に全ての乗客と乗員が脱出できる迅速性が基準になっているため呆れるほど早く人間の点がエプロンに広がり、部隊単位で図形を作っていく。しゃがんでいるだけで伏せてはいないようだ。
「飛び込みで発進したから機関銃を設置する暇がなかったんだ。高度を下げて小銃を掃射するか」「そろそろこちらに向かって射ってくるんじゃあないですか」その前に殺っちまおうって相談だ」パイロットと小隊長の対話は戦術の相談になった。
信太山駐屯地の第37普通科連隊は伊丹空港で旅客機のタイヤが破裂した事故で滑走路が閉鎖になったため国土交通省が大編隊を関西空港に着陸させることを決定したと航空自衛隊中部航空方面隊指揮所から通知された第3師団の命令で関西空港に第1陣として1個中隊を派遣した。ところが途中で大阪府警から「スカイゲートブリッジが暴徒に占拠された」と言う連絡を受けた連隊本部から八尾駐屯地の第3飛行隊のUHー1多用途ヘリコプターで急襲するとの変更命令を受けた。そのためUHー1に銃架を設置する暇もなく発進し、航空局の管制塔の許可を受けていないので滑走路を横切ることなく地上から直接エプロン地区に進入した。
「あいつらは通用橋を占拠している連中に武器を配るつもりだ。このままでは関空を占領されて乗客や職員が人質になるぞ」パイロットと小隊長が話し合っている間、地上を監視している陸曹が声をかけた。部隊の脱出が終わると機内に残った人間が長細いプラスチック製の衣装ケースを滑り落とし始めたのが見えたのだ。
この展開は中国の大編隊を山口宇部空港、広島空港、岡山空港に着陸させることが決定した時から中部方面隊内では想定していた。そのため山口駐屯地の第17普通科連隊と海田市駐屯地の第46普通科連隊を派遣する計画だった。ところが西部航空方面隊が築城基地、新田原基地、美保基地に強制着陸させること決定したため各基地に最寄りの普通科連隊を急行させた。しかし、果てしなく怪しいとは言え正規な飛行計画を提出した民間機である大編隊を所管するのは国土交通省航空局であり、中国機に命じられるままに伊丹空港と成田空港への着陸を許可した。国土交通省が情報を小出しにしているため自衛隊の対応は完全に後手に回っているがその分、対応する戦術を四国の第2混成団を含めて空港に近い普通科連隊は共有することができている。
「このままではターミナルに侵入されて占拠されるぞ。おまけに暴徒が合流すればこの人工島は要塞だ」「下手すればキャビンアテンダントがクジテレビの女子アナのような目に遭うぞ」まだスカイゲートブリッジを封鎖している暴徒の素性は明らかになっていないが北京の命令を受けた在日中国人と太古から支配下にある半島人なのは推理を必要としない。警察はクジテレビの占拠と東京都内の大火災事件で逮捕した犯人の身元がこの2つの民族だったことを突き止めているが、国会では立権民衆党が2重国籍の連亡を先頭に「虐殺を誘引する」と公表に反対していて石田首相も同調している。
「中国軍が前進を始めます。通用橋の暴徒も半数が空港に向かいます」「それでは殺りますか」「本当は管制塔を壊してからにしたいんだが・・・行くぞ」「機体を銃撃する。射撃用意、連射」「急降下するから振り落とされるなよ」小隊長は八尾駐屯地に到着するまでに同行してきた連隊3科の運用訓練幕僚から民間空港内での銃撃戦にするよりも背後の旅客機を爆発させて火焔と爆風に巻き込ませて制圧する戦術を指示された。その戦術には明野駐屯地のAHー1対戦車ヘリコプターの方が手っ取り早いが治安出動の警察権の行使では銃撃戦による誘爆を演出する必要がある。
パパパパパ・・・「射って来たぞ」「応戦しろ。機体下部を狙え」パパパパパ・・・。中国軍はUHー1が急降下したのを攻撃開始と理解したようで銃口をこちらに向けて連射してきた。銃弾が空気を引き裂くような悲鳴を上げて通り過ぎてゆく。防弾チョッキとヘルメットを装着して弾帯の上に命綱をつけた陸曹が身を乗り出して射撃を始めた。
  1. 2023/11/14(火) 14:29:37|
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