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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ668

カンカンカン・・・「向こうの乱射は激しいな」UHー1は大型旅客機の尾翼を掠めるくらいの低空で飛行しているため地上から乱射して来る中国軍の小銃弾が操縦席の防弾ガラスに命中してヒビが入りだした。この機体は敦賀湾の原発銀座が破壊された時に鉛板で放射能を遮断するように改造されたが戦闘には効果がないらしい。一方、こちらの応戦は身体を機外に晒しているので思うに任せない。防弾チョッキとヘルメットは本来、炸裂した砲弾の破片から防護することが目的なのでこの距離では小銃弾は防ぎ切れないのだ。そのため機体から小銃を下に突き出して盲撃ちしているだけだった。
「このままではエプロンに着陸して地上戦にするしかないな」「やはり危ないですか」パイロットの提案に小隊長も深刻な顔で問い返した。パイロットはローター(回転翼)やエンジンにも命中弾を受けて操縦が困難になってきたように感じているのだが、それは素人の小隊長もエンジン音で察していた。
「鷹田1尉、こちらの37iは手榴弾を持ってきている。通過しながら投下するから退避しろ」「了解、助かったぜ」その時、後続の主力部隊を乗せているUHー1の編隊長から連絡が入った。唐突に派遣命令が下った時、小隊長は先発隊として敵情偵察を命じられてレンジャーの陸曹5人とパジェロで出発したが各人の小銃と何とか届いた弾薬箱1個分の実弾しか持ってこなかった。その実弾もパジェロの中で弾倉に詰めたのだ。その点、後続部隊は連隊本部の対処命令も整って交戦に必要な装備を携帯させたようだ。
「2機の大型旅客機から1機あたり300人程度の敵が外に出て駐機場で部隊を編成しました。ターミナルに向かって前進を始めたので阻止する目的で発砲しました。現時点では機体から離れていません」「判った。怪我はないな」「はい、人員装備異常なし」無線の相手は中隊長に代わっていた。それにしても旅客機の窓からこちらの姿が見えるように飛んでもらった挑発に中国軍が見事に乗って始まった戦闘だが、関西空港や駐機している旅客機に損害を与える訳にはいかない。その意味ではスカイゲートブリッジを封鎖している在日中国人たちが武器と弾薬を受け取る前に決着をつけなければならない。
「それじゃあ退避する前に下準備をやっておこう」機体を立て直して高度を上げたパイロットは八尾駐屯地の方向から接近して来る編隊を確認すると小隊長に声をかけた。旅客機の多くは客室の下の階が貨物室と燃料タンクになっているが問題は丸い機体を滑り落ちる手榴弾で爆発させられるのか。気圧と気温が極めて低い高高度を飛行しながら客室内では快適な環境を提供している旅客機の構造は想像以上に堅牢なのだ。さらに民間航空機が使用している航空燃料のJP5は純度が高い灯油のようなもので発火点が高いから過剰な期待は裏切られる可能性がある。
「今から2機の上空を通過するから銃撃を加えて燃料を漏らしておこう。今度は89式小銃の有効射程程度の高度だから身体を乗り出して狙え」「両側から2人ずつでやりましょう」「燃料タンクは翼の付け根にあるから機体と主翼の十字の交差箇所が目標だ。翼にも燃料タンクはあるはずだがここまで飛んできて空になっているのかも知れん」「命綱を付けろ。弾倉を交換しろ。1番射手・川崎2曹、2番射手・元山2曹、3番射手・渡辺3曹、4番射手・柴田3曹、予備射手・中島1曹」UHー1が和歌山市の手前で引き返してくる僅かな時間で陸曹たちは下準備の用意を終えた。
「エプロンに再突入する」「目標、1番3番射手は手前の機体、2番4番射手は奥の機体。射法は連射、射撃用意、射て、全弾射ち尽くせ」パパパパパ・・・小隊長の号令で左右の扉から顔を出して目標を確認していた陸曹たちは小銃を構えて引き金を絞った。300メートルの高度からの銃弾が機体に命中しているのかは判らない。ただ幸いなことに中国軍は隊列を組み直していて射撃して来る者はいなかった。
UHー1が旋回しながら後続の編隊とすれ違ってスカイゲートブリッジを確認すると車道ではりんくうタウン側の警察と暴徒が拳銃同士の銃撃戦を始めていた。関西空港署は空港内の警備を優先したようだ。海面には水上警察署の警備艇も到着していた。
ズーン、ズーン、ズーン、間もなく手榴弾とは思えない重い爆発音が続き、エプロン内を化け物の舌のような火焔が舐め回し、盛大な黒煙に包まれた。
  1. 2023/11/15(水) 15:56:47|
  2. 夜の連続小説9
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