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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ674

義父に知愛から託された仏教で言う布施を渡した岡倉は翌日にはソウル市内のビジネス・ホテルに宿泊先を移動した。カソリック教会での宗教体験では酒を飲みに出かけることは許されないのでこれは必要な処置だった。その夜、裏町の酒場に入ると外国人は口にしない犬肉の料理を注文して韓国製ビールを飲みながら酔客の雑談に耳を傾けた。
「中国軍は騙し討ちに失敗したようだな」「しかし、民間機を使うから日軍(自衛隊)の出番はないって言っていただろう」「失敗した後、中国海軍が口封じしたらしい」韓国国内では中国の民間機を使った部隊の侵攻作戦が庶民の噂話になるほど広まっていたようだ。これを在韓国の日本大使館や領事館が見過ごしたとなると外交関係を維持しているとは言え完全に孤立無援になっていることになる。それとも加倍首相が暗殺されて自民党内の対中強硬派が腰砕けになったため外務省のチャイナ・スクール=親中国派官僚が力を盛り返して隠蔽工作を講じた可能性もある。
「と言うことは大統領はお友達気取りの日本の首相のご機嫌取りを続けるんだな」「そうなると戦果は対馬島を取り返しただけか」「こちらの損害は独島(日本名・竹島)の守備隊が全滅させられたくらいだから悪くない戦争だったよ」岡倉はアメリカで調査している中国系と朝鮮半島系の移民の反日集会で聞いた主張の発信源が本国であることを確認した。あの集会では中国系の移民は北京からの指令通りに中国資本が支配しているアメリカのマスコミが同調できる程度の批判に留めていたが朝鮮半島系は激情の赴くままアメリカ人は誰も知らない史実を持ち出して口汚く糾弾し、アメリカでは重大な刑法犯罪である日本人女性への性的暴行までも扇動していた。
それにしても実際は次の政権によって完全に否定された日韓合意を外務大臣時代の業績として誇示している石田首相は半年違いで成立した韓国の現政権に同期生のように異常な親近感を抱き、就任から数年が経過しても国民の支持率が当選した時の得票数のままである現実は気にも留めず日米韓の同盟関係が再構築できたと本気で思っているようだ。しかし、次の大統領選挙では北朝鮮と共通の宗主国である中国に絶対服従してアメリカと日本を占領者として憎悪していた前政権の後継勢力が前回の失敗を教訓にして候補者を絞れば過半数の票を集めて政権を奪還するのは素人でも目に見えている。
昨日の義父の見解と大同小異のこの認識が韓国国民の多数派なのでは石田首相と上山外務大臣が標榜している外交交渉による対馬の返還と武力衝突の解決などは絵空事に過ぎない。韓国にとって対馬を占領したのは古代から朝鮮王朝の領地だった対馬を日本が不法に奪い取って島民を移住させただけでなく、14世紀には倭寇をけしかけて多大な損害を与えたため1389年2月に100隻の軍船で攻撃した正当な自衛処置と領土の奪還に過ぎない。今更、日本に返還すればそれでなくても「日本に服従している」と国民の批判を浴びている現政権の命運はそれで尽きるだろう。
「やはり軍内部の声が聞きたいな」岡倉は歓楽街が営業修了になるまで店を梯子して色々な階層と年齢層の酔客たちの話を聞いたがやはり日本を敵視して「中国や北朝鮮と一緒に侵攻するべきだ」と言う意見が大半だった。中でも新潟で多くの北朝鮮軍の義勇兵が戦死した話題を雑談の材料にしていた学生と思われる若者たちは「民族の仇を取れ」と興奮して大声で騒ぎ始めたが、周囲の客たちも迷惑がるどころか同調して日本を糾弾する雄叫びを上げ始めた。そのような国民の声を韓国軍はどのように受け止めているのかを確かめなければ任務は果たせない。とは言え当局に李知愛元少佐の夫であることが知られれば身柄を拘束されて拷問を含む取り調べを受けることになる。
二日酔い気味で寝覚めが遅かった岡倉は昼前に義父の教会に行った。すると日曜礼拝が終わったところでまばらな信者と入れ替わりになった。岡倉がドアの脇に立って出入り口を譲ると年齢層が高い信者たちは「ミサに遅刻した不届き者」を叱責するような目で見ながら通り過ぎて行った。酒の匂いはしないはずだが息を止めて見送った。
「ファーザー、自宅から連絡は入っていませんか」すぐに空いた出入り口から中に入った岡倉が義父に声をかけると祭壇の前の最前列の席に座っている女性と深刻な顔で話をしていた。振り返った女性の顔には見覚えがあった。
  1. 2023/11/21(火) 16:16:32|
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