fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ684

「新潟の戦闘が終わったと思ったら今度は旅客機の奇襲作戦か」「信繁の職場は新潟空港に派遣されたみたいだけど定年した予備自衛官は留守番になったそうよ。良かったわ」「定年後のヨボ自衛官じゃあ戦争の役には立たんだろう。熟練の技も長くはもたん」同じ頃、岐阜県可児市ではローカルFMラジオでDJ・昭和一郎として活躍している島田信長元准尉が妻の順子と話し合っていた。島田家の息子の信繁は三沢基地の北部航空方面隊付准尉で定年退官したが古巣である三沢ヘリコプター空輸隊の予備自衛官になって航空機整備員に復帰している。現在、輸送拠点の新潟分屯基地=新潟空港には整備員や管理要員が派遣されているが信繁元准尉は熱望したものの却下されたらしい。
「こうなると今度の番組はどうしようかな」島田元准尉は読み終えた新聞を順子に回すと独り言を呟いた。島田元准尉は戦前であれば在郷軍人会に当たる隊友会の役員として自衛隊の活動を一般市民に広報する公的職務も担っているのだが、現在の自衛隊は実質的な防衛行動を遂行しているので批判的なマスコミ報道に反論するだけでなく市民の国防意識を啓蒙しなければならないのだ。ところが市役所の担当者は政府が防衛出動を発令していない以上、戦時ではなく「非常事態」と言う4字熟語を口にすることさえ市民の不安を煽ると禁止している。当然、軍歌は言うまでもなく国営放送の連続ドラマ「エール」が放送されていた時には認められた軍国歌謡も禁止されている。
「戦争映画の主題曲って良いアイディアだと思ったけど・・・」「史上最大の作戦に戦場にかける橋、大脱走と名作映画全集で探したが昭和の歌謡曲じゃあないんだよ。リスナーからのメールも曲のクエストじゃあなくて自衛隊の歌を教えてくれって依頼が多いから昭和隊歌になってしまう」「それでも航空自衛隊歌がハワイヤンの三島敏夫、浜松航空隊歌が演歌の加賀城みゆき、海上自衛隊歌なんて大歌手・藤山一郎が唄ってるんだもん驚いちゃったわ」「自衛隊小唄は都はるみだぞ」島田元准尉は市役所の雁字搦めの制限に抗する窮余の策として昭和の戦争映画の主題曲を流すことにした。確かに番組の主旨の昭和の歌謡曲ではないが市民の国防意識を啓蒙する効果はあるはずだ。一方、高齢の聴取者から届くようになった軍歌や軍国歌謡のリクエストに「公共のラジオ放送なので軍歌は放送できない」と説明したため「だったら自衛隊の歌を教えてくれ」と言う思ってもいないリクエストが始まったためモリヤ元2佐にダビングしてもらった自衛隊の隊歌集のカセット・テープから流している。これが想定外に好評なのだ。
地上での武力衝突は沖縄県の尖閣諸島で警察と海上保安庁が中国海警の砲撃で全滅した事件から始まり、奄美諸島の呂論島、北海道の北部と東部、そして新潟県で発生しているだけで東京では大損害を出した燃料タンク車によるガソリンの噴射走行と放火も名古屋では未遂に終わった。このため東海地方の市民にとって北海道や新潟での戦闘はウクライナやパレスチナのニュースを見るのと同じ感覚だった。さらに守山駐屯地の第35普通科連隊は大都市・名古屋の治安維持を優先して北陸には派遣されておらず、島田元准尉の古巣である第10通信大隊や春日井駐屯地の第10施設大隊と豊川駐屯地の第6施設群が新潟に派遣されたのは武力衝突が鎮静化してからなのでこちらはPKOへ送り出すのと同じ気分だった。つまり東海地方では実際に戦場になった北海道や新潟のような危機意識を市民は持ち合わせておらず傍観者として雑談の話題にしているだけなのだ。
それでも隊友会岐阜県支部の会合で聞いた話では岐阜基地にある航空自衛隊第2補給処では日本海での空中戦の後、百里基地に着陸したFー35は第7航空団に情報開示していなかったため整備員が機体に触れることができず、取り扱い資格を持つ隊員を緊急派遣して実戦に参加させた。また第4補給処高蔵寺支処では在庫が払底してからは弾薬の入荷と出荷が同時進行になり、弾薬庫での保管の必要がなくなったためメーカーに小牧基地に直接納品させて派遣した隊員が格納庫で検査を実施したそうだ。それでも万単位の20ミリバルカン砲の弾丸で「良い意味のお役所仕事」と賞賛される全弾検査を維持して空中戦での発射不能はなかったと言う。しかし、小牧基地に大量のミサイルや弾薬を納品するには愛知県や小牧市の認可が必要なはずだが、それは戦時の特例処置で無視したようだ。徹夜で全弾検査しても役所の事務手続きには手が回らないのだろう。
  1. 2023/12/01(金) 14:52:32|
  2. 夜の連続小説9
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<第132回月刊「宗教」講座・簡単な精進料理教室16時間目 | ホーム | 12月1日・アメリカ特許庁認定のドクター・ペッパーの発売日>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/8836-ab70bc78
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)