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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ688

「スイハセヨ」「スイへヨ」岡村は仁川(インチョン)国際空港で間宮リンゾーを出迎えた。到着ロビーでの挨拶は自衛隊式の「ご苦労さまです」を韓国語にした。ただ儒教的に上下関係と礼節が厳しい韓国では目下から先に少し丁寧に声をかけ、目上が柔らかく返事する。岡倉としては間宮が知愛に韓国語を習っていることを知っているのでこの受け答えも教育の成果を確認した気分だった。
岡倉が初めて韓国に来た時は杉本に同行して指図を受けたが今回は別行動になった。本来は日韓の武力衝突は終息しておらず韓国国民の反日感情が激昂したままなのはアメリカでも分かっていたので身軽に動ける岡倉が単独で潜入した。それにしても韓国軍内に情報源を作ることは目的にしていたが、このような手段を用いることになって体力=精力に優れる若者の増援を要請することになるとは思わなかった。
「これからの会話は全て韓国語か英語だ。独り言も同様だ。盗聴器や監視カメラが設置されていることを前提に行動しろ」「イへェ(了解)」ペルシャ語が専門の間宮は岡倉とイラクやアフガニスタンに潜入しているのでこの指導は耳にタコができているはずだ。それでも韓国では家電製品の品質が急激に向上して同時進行で軍事技術も高度化しているので盗聴器も肉眼や手探りでは発見できないほど小型化してこれまでの探知機では発信電波を捕捉できない可能性がある。
「それで工作対象は」「安養市の陸軍第3軍団司令部がある駐屯地の衛生隊で事務室長をやっている高仁智少佐で今は52歳のはずだ」仁川国際空港からソウル駅までの移動は外国人の乗客が多い直通列車ではなく一般列車にして英語で会話した。それでも所要時間は16分しか変わらない。それにしても間宮は頭の中で日本語の文章を翻訳するのではなく始めから韓国語で思考しているようだ。だから獲物などの下卑た言葉は使わずに業務としての用語を自然に口にした。これは知愛の教育成果と言うよりも少年時代に日本に帰国して完全な日本語を修得するために身につけた語学手法なのだろう。
「薬は何回使用していますか」やはり間宮は「薬」を麻薬などの違法薬物を含むドラッグではなく医薬品のメディスンと表現した。確かに第3者に聞かれた場合、メディスンならば健康の相談と思わせることができる。
「今のところ2回だ。3回目からは頼む」この使用回数は性行為の回数も意味している。やはり元々が性獣だった杉本に比べれば岡倉は普通の男性なので60歳が迫ると流石に連日連夜と言う訳にはいかない。しかし、杉本が男性更年期の治療薬を手渡したところを見ると実は同じ衰えを感じているのかも知れない。それが業務目的か女性としての名器・三段締めの持ち主・本間郁子との夫婦の営みのためなのかは不明だ。
「まだ目標の自宅では実施するな。勤務しているのは衛生隊だから一般の部隊よりも兵員の変調には敏感なはずだ。万が一、薬物の使用を察知されて憲兵隊に通報されていれば張り込んでいる可能性がある。金田(杉本の半島系日本人を装う時の偽名)が家に入り込んだのは完全に溺れさせて性の奴隷にしてからだった」「それでは2回目は」「スーパーマーケットのトイレで致した。目標は耳と骨盤の内側にスイッチがある。そこを刺激すれば性欲が燃え上がって止められなくなる。数日前までの聖女の陸軍士官が今では淫乱熟女に堕ちる一歩手前だ」「それを僕が墜とすんですね」岡倉は間宮の完全に業務と割り切った返事に昭和と平成生まれの世代ギャップを実感した。岡倉は杉本に2種類の性的興奮剤を渡されて李知愛中尉がハニートラップを仕掛けてくる前に犯せと命じられた時も罪の意識が心から払拭できず結局、理性=羞恥心を破壊して快楽を増幅させる第2薬は使わずに1人の男として愛した。
「それじゃあレンタカーを借りましょう。韓国にも連れ込みホテルはあるんでしょう」「あるが歩いて入るところが多いな」岡倉は知愛が嫌悪感を示すためいわゆるラブホテルに泊まったことはなかったが杉本は調査に赴いた街で夜の女を買って裏情報を訊き出すのに利用していた。つまり伝聞情報・請け売りだ。
結局、間宮はスーパーマーケットを出た高仁智少佐に人通りがない歩道で抱きついて耳と腰のスイッチを押すと路地の奥で3回目の工作を実施したようだ。
  1. 2023/12/05(火) 15:30:52|
  2. 夜の連続小説9
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