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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ689

「中国軍の動きが変わったぞ」「これは呂論島に上陸した時に似ているわ」陸上自衛隊の新潟制圧作戦の勝利を確信した松山1佐が中国の次の動き探るため台湾に派遣した本間郁子は引き続き台湾海峡の金門島で対岸の無線交信を傍受している。本間は尖閣諸島で中国海警の巡洋警備艦が海上保安庁の巡視船を撃沈した後もここで同様の任務に当たっていて不審な多数の漁船の船団が出港して東シナ海を西進したことを察知した。しかし、出航後間もなく中国側が無線を封止したらしく乗っているのが漁民に扮した人民解放軍の兵士で大量の武器と弾薬を携行して洋上で遭遇した日本の漁船を銃撃して呂論島の漁港に上陸する計画であることまでは確認できなかった。
「あの時と同じ作戦を繰り返すならまだ準備段階ですね」「そう言えば最近、東海に出漁している大陸の漁船が自分の漁港ではなく北海艦隊の軍港に戻っていると海上自衛隊が言っていたな」長貞治(ヂャン・ヂャンヂー)中佐の説明で加倍政権が2012年から台湾空軍が運用を開始した超・遠距離と弾道ミサイルや巡行ミサイルなどの超・高速度の探知が可能な超・高性能レーダーの情報を日本に提供し、日本側も監視衛星の画像を含む独自に取得した情報で相互交換する秘密協定を結んでいることが漏れてしまった。
それにしても韓国で「東海」と言えば日本海を指すが台湾と中国では東シナ海だ。「北海艦隊」もロシアでは北極海を担当するが中国では黄海と渤海湾になる。大学時代の本間は中国版だけを覚えていたが自衛隊に入ってからはロシア版を使うことの方が多いので久しぶりに聞くと一瞬だが混乱してしまう。
「この動きを侵攻の予兆として日本に通報します」「そうしたまえ。大陸も追い詰められているから軍事の常識を逸脱した作戦を強行する危険性が高い。日本的に時期を見計らうよりも先ずは第一報を入れることだ」長中佐の許可を得て本間は仕事専用の携帯電話でニューヨークの松山1佐にメールを打った。時差から言えば睡眠中の時間帯だが即座に既読になった。隣りで眠っているはずの裕美1曹も起こしてしまったのだろうか。
「中国が再び漁船団を使った離島への奇襲作戦を準備しているようです」松山1佐は本間からの深夜のメールを即座にワシントンの首席防衛駐在官・帖佐将補に転送し、年齢のためなのか若干遅れて反応した帖佐将補が課業時間中の東京・市ヶ谷地区の中央指揮所に連絡した。数分で情報が太平洋を横断したことになる。
防衛駐在官は自衛官の身分を維持していても人事上は外務省に出向するので自衛隊には所属がない。通常は内局が窓口になるがこの連絡は1955年に締結され、2003年に更新された外務事務次官と防衛事務次官の覚書に基づく公式な外務省電報ではなく防衛駐在官が非公式に使用している秘密の連絡なので受け取ったのは統合幕僚長だった。
「窮余の策にしてもかなり手詰まりだな」統合幕僚長の報告を聞いた大原防衛大臣は砂糖を掛けた苦虫を数匹嚙み潰したような顔になった。中国が追い詰められていることは悦ばしいことだが多くの島民が殺害された呂論島の惨劇を繰り返すことはできない。
「前回の旅客機を使った奇襲作戦では国土交通省航空局内の工作員を利用しましたが今回は海上保安庁のようですね」海上幕僚長の指摘に前の席に並ぶ内局の官僚たちは砂糖抜きの苦虫を多めに噛み潰したようだ。
海上保安庁の官僚の中には敗戦後の防衛力の整備=国防力の再建を至上命題にする自民党政権が巨額の防衛予算を注ぎ込んで次々に世界でも最高の性能を持つ艦艇を建造する海上自衛隊に比べて運輸省=国土交通省の予算を分け与えてもらって控え目な巡視船を建造している海上保安庁の現状に怨嗟の念を抱き、国土交通省労組のような反国家ではなくても海上自衛隊を敵視している人間がいる。そんな官僚たちが自衛隊との共同運用を拒否する法的根拠にしているのは他国の沿岸警備隊では常識であり、自衛隊法80条でも防衛出動と治安出動の発令時に海上保安庁を防衛大臣の統制下に置くことが明記されているにも関わらず軍事行動を禁止している海上保安庁法25条だ。確かに海上保安庁法は昭和23年制定なので昭和29年の自衛隊法が後出しであり、改定して整合を図るべきだったが当時は「再軍備反対」の世論が大炎上していて刺激を避けたまま忘れていたらしい。敗戦から80年経ってもそんな話ばかりだ。
  1. 2023/12/06(水) 15:53:56|
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