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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ693

安川和也1尉は群馬県と新潟県の県境になるJR上越線の清水トンネル、新清水トンネル、上越新幹線の大清水トンネル、関越自動車道の関越トンネル、一般自動車道の三国トンネルと新三国トンネルの出口の関所と廃道になっている国道291号線や谷川岳の登山道を守備する任務を駒門駐屯地の富士レンジャーに引き継いで松本に帰った。トンネルの関所の方は新潟へのロシア軍の侵攻以降、群馬県警や前橋市の新町駐屯地が麓で取り締まりに当たっていたため強行突破する者はいなかったが登山道では北京からの命令を受けた在日中国人と同調する半島人が山越えの侵入を繰り返して山岳レンジャー=クレージー13の面目躍如の戦闘を展開した。
「申告します。第4中隊長、1等陸尉 安川和也は令和・・・」駐屯地に帰っても第13普通科連隊のかなり隊員は長岡市内で弾道ミサイルの攻撃を受けて退避した地下駐車場が崩壊し、生き埋めになって戦死していた。救出された生存者も骨折などの重傷を負っていて入院や自宅療養している。そんな閑散として線香の匂いが漂う隊舎で生き残った連隊長に帰隊の申告をして1科と3科の生存者の幕僚に活動報告を済ませると帰宅を許された。群馬県境に派遣された時には危険な任務を与えられて心配と同情を込めた視線を受けながら出発したが立場が逆になってしまった。中隊長も半数が戦死して生存した隊員と招集された予備自衛官で再編成している。安川1尉は現役の隊員の中隊を任されたが負傷者が大半なので何もできそうもない。
「貴方・・・」部隊からスマートホンで連絡したので官舎の階段の入り口で聡美が待っていた。しかし、自転車を止めて歩み寄り、向かい合って立っていても眼を潤ませるだけで笑顔も見せなかった。抱き締めることも許されない雰囲気を全身から発している。
官舎でも隊員が戦死した遺族が退居したためカーテンが外された窓が目立つ。先ほど自宅療養中の隊員の妻に会って挨拶を交わしたが今まで見たことがないような複雑な表情を浮かべた。連隊が出動する前に安川1尉が危険な任務に派遣された時には同情していたはずが、後から出動した夫の方が瓦礫の下敷きで全身を骨折して寝たきり状態になっている。一方、安川1尉は無傷で大きな演習バッグの持ち手を両肩にかけて颯爽と自転車で帰ってきた。それを「良かった」と祝福できるほど人間が目出度くできてはいない。胸に沸き起こってくる羨望と嫉妬をどうすることもできないのだ。
「ご苦労さまでした」「うん、お前もな」同じ階段でも2軒の窓のカーテンがなくなっている。そんな残ったカーテンの1つから顔見知りの妻がこちらを見た。この妻にも2人が無事の帰還、再会の感激を噛み締めていると誤解されかねない。そんな安川1尉の視線に気がついた聡美が声を掛けた。こうして2人は前後になって階段を上って最上階の自宅に帰った。聡美は下から両手で演習バッグを押した。
「ただいま」「おかえりな・・・」聡美が玄関のドアを開けて先に入ると外の踊り場で下ろした演習バッグを玄関脇の浴室の脱衣場に投げ込んだ安川1尉はその場で抱き締めた。派遣先では夜間侵入も警戒して仮眠状態だったため性欲を覚えることはなかったが聡美が穂高の担任に性的暴行を受けそうになったと聞いた後には何故か男性自身が反応してしまった。それからは愛する妻が汚されることに欲情した自分が許せず新潟市内に派遣される普通科教導連隊への参加も志願した。その普通科教導連隊でもロシア軍の狙撃手によって複数の指揮官が戦死している。
「稲沢のお父さんとお母さんが何度も来てくれたのよ。ウチの親も来るって言ったけど母が反対運動の指導者だから断ったわ。弟は職場で反対運動が起こっているから顔を出せないって謝ってきたの」「姉貴は無視か」「お義姉さんは女優デビューするって言い残して東京に行っちゃったみたい」玄関での熱い抱擁から裸になり、一緒にシャワーを浴びながらの夫婦の営みを終えるとリビングで聡美が淹れていたコーヒーを飲んで会話を再開させた。安川1尉は派遣先から殆ど自宅に連絡しなかったのでこれらの話は初耳だった。義母は愛知県教組の活動家から環境問題の市民運動で知名度を上げて市会議員に当選したので聡美の処置は適切だろう。出演しているアダルトビデオで見染めた姉の鶴舞を岐阜・金津園のソープランドで抱いた隊員も長岡で戦死してしまった。
  1. 2023/12/10(日) 14:26:57|
  2. 夜の連続小説9
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