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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ703

「日本国海上保安庁から日本海、韓国呼称・東海を南下している漁船に告ぐ。君は現在、日本国のEEZ(排他的経済水域)内を航行している。国際連合海洋法条約によりEEZ内の航行権は妨げないが漁業資源の捕獲は我が国の承認を必要とする。今から接舷するので担当官に許可証を提示せよ」山口県萩市沖44・3キロの日本海に浮かぶ見島周辺では萩海上保安署の高速巡視艇が大挙して接近してきた韓国の漁船に対応していた。
「拳銃、点検」「拳銃点検よし」「弾薬」「弾薬よし」「弾倉、装填」「弾倉、装填よし」「拳銃収め」「拳銃、収め」「臨検要員、準備よし」船舶無線の国際標準周波数で英語、韓国語、日本語で臨検を通知した後、高速巡視艇はマイク放送しながら速度を落として接近を続けた。その間に船橋では臨検要員2名が武器の点検を実施した。2人は海上自衛隊と同様の防弾ヘルメットと救命胴衣を兼ねた防弾チョッキを装着している。
海上保安庁の拳銃は自衛隊が採用した「軍用拳銃・失格」の呼び声低いスイス製のザビエルP220の弾倉を複式にして装弾数を増やしただけのP228だ。P220の最大の欠陥は安全装置がないことでそれはP228も同様だ。もう1つのスライド部が野外の泥水や砂塵によって作動不良を起こす欠陥については海上ではそれほど問題にならないはずだ。ただし、北朝鮮の工作船の侵入事件を契機に創設された制圧専門の特殊部隊は指導を受けたアメリカ海軍の特殊部隊から装弾数が少ないことを指摘されて軍用拳銃(アメリカ軍は不採用)のスミス&ウェッソンのM5706を採用している。
「機銃を照準します」「よし」この巡視艇=30メートル級PCは沿岸部を航行する小型巡視艇=CLではなく全長32メートル、100トンの船体で最高速度は公式発表されている40ノットを上回る。そして前部甲板に設置されている13ミリ単装機銃は船橋で遠隔操作できるだけでなく照準すれば目標を自動追尾する機能もある。
「ストップ・ザ・シップ」「チョンソナラ(停船せよ)」「こちら日本国海上保安庁、停船を命じる」10数隻の漁船の船影が大きくなり各船に4人の男が乗っていることが確認できるようになると高速巡視艇はさらに速度を落として進路を塞ぐように舵を切った。
日本海海戦で連合艦隊はウラジオストクに向かって直進するパルチック艦隊の進路を塞ぐようには艦隊の縦列を作ったが、これは本来「丁字(ちょうじ)」と呼ばれていた。ところが海外のマスメディアは東郷平八郎司令長官の頭文字に重ねて「T字ターン」と呼んだ。今回は単船とは言えそれを再現しているようだ。
「漁民が銃を構えたぞ」「軍用の自動小銃だ」「臨検要員、退避」「伏せろ」臨検要員が甲板に出て漁船に渡すラッタル(簡易桟橋)の用意を始めるとマイク放送から叫び声が流れた。その声に漁船を確認すると横一列に船団の形を変えた漁船の船首では操舵手以外の乗組員が構える銃身がこちらを狙っていた。
「機銃、発射します」「待て、初弾発射後だ」海上自衛隊であれば砲雷長に相当する業務を兼務している航海長が許可を求めると船長は海上保安庁としての警察権の行使に必要な手順を尊重した。しかし、今回の事態が警告された時、西藤国土交通大臣が海上保安監に「発砲に躊躇するな」と指示したことは指揮系統を通じて伝わっている。連立与党の正大党から入閣している西藤国土交通大臣が国土交通省の官僚の海上保安庁長官だけでなく制服組のトップの海上保安監を同席させてこの指示を与えた真意は想像の域を出ないが、先日の中国の大型旅客機による侵攻に航空局の労組職員が組織ぐるみで加担したことで地に堕ちた国土交通省の信用を取り戻すためにはあえて汚れ役も引き受ける覚悟なのだと現場では理解している。
「舷側に衝突します」「最大船速」「最大船速」韓国の漁船団は陣形を広げながら側面に突っ込んでくる。2010年9月7日に尖閣諸島近海で巡視船に衝突した中国の漁船は船尾への追突ではなく燃料タンクに連接するエンジン部の舷側を狙っていた。つまり巡視船の破壊と横転・沈没を目的に操舵していたのであり、海軍の軍人らしい戦闘行動だった。今回も韓国の漁船は同じことを狙っているらしい。
ゴー。数秒後、エンジンが呻るように雄叫びを上げた。高速巡視艇はエンジンを停止しないで微速航行していたため操舵員の迅速な操作で急加速することができた。
  1. 2023/12/20(水) 16:55:47|
  2. 夜の連続小説9
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