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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ705

「目標は50隻を超えてるようだな」「こちらは仙崎の2隻と合わせても3隻、少し手に余ります」日清戦争の黄海海戦で連合艦隊司令長官・伊東祐亨中将が実施した縦列交差戦術のように10隻の漁船団の周囲を航行しながら銃撃を加えている高速巡視艇に岩国基地から発進したアメリカ海軍の対潜哨戒機から周辺海域の状況が届いた。
防衛省・自衛隊中央指揮所は鹿屋基地の海上自衛隊は東シナ海を東進して来る100隻以上の中国の漁船団と済州島から南下している韓国海軍の艦艇を担当しているため三沢基地から岩国基地に移動して待機していたPー8対潜哨戒機に発進を要請した。一方、第7管区海上保安部も九州地区の海上保安部と海上保安署が保有する巡視船と巡視艇は東シナ海に指向しているので日本海は山口県長門市の仙崎海上保安部とその隷下の萩海上保安署に一任していた。仙崎海上保安部には高速巡視艇以外に全長56メートルで335トンの小型巡視船と全長20メートルで23トンの固定武装がない近海用小型巡視艇しかない。今回は小型巡視艇も乗組員が64式小銃を携行して出動している。
「アメリカ海軍では海上における警備行動が適用されないから漁船に武力行使はできないな」「漁船が対空ミサイルを発射すれば正当防衛が成立しますが」アメリカ軍の場合は敵対行為と判断されれば警察官職務執行法ではなく交戦規定=ROEで攻撃が許されるのだが海上保安官はそんな軍事知識を持ち合わせていない。
「そうなると仙崎は防府の陸自のヘリの出動を依頼するように門司(第7管区海上保安本部)に要請するんでしょう」「門司が陸自に出動を要請するルートがあったかな」「海難事故でも経験がありませんね」第7管区海上保安部の担当海域ではヘリコプターの性能や海猿こと救難員の体力・技量の限界で対応できない時には福岡県芦谷基地の航空救難隊に出動を要請している。しかし、中国地方の日本海側は石川県の小松救難隊と芦谷救難隊の間が抜け落ちていて島根・鳥取県境の美保基地にも新設する必要がある。
「目標が射程距離内に入りました。相変わらず必死に逃げています」「停船を通告しろ」おそらく航空自衛隊のレーダーサイトが所在する見島に潜入する特殊部隊が乗っている先頭の漁船団も高速巡視艇の銃撃で次々に漁船が航行不能になると分散して逃走を図るようになり、追跡しながら銃撃するには時間を要するようになった。ただし、1隻を追跡している間に残りの漁船が見島に向かう囮戦法には要警戒だ。
「チョンソナラ(停船せよ)」通信員は何度も同じ通告を繰り返しているので片仮名の台本は必要なくなり、スラスラと韓国語で通告した。それにしてもこの光景は機銃の射撃を準備して追いかけている武装した船が「止まれ」と命じているようなもので喜劇の一場面に近い。それでも漁船では船尾に3人の乗組員が移動して小銃を構えているのが見える。韓国軍のK2小銃はアメリカ軍のM16のライセンス生産なので5・56ミリNATO弾だ。当然、射程距離は高速巡視艇の13ミリ機関砲とは比べ物にならない。
「しかし、乗組員が操舵室付近に集まっていると船体だけに命中させるのが難しくなりますね。側面なら目標が大きくなりますから何とかなりそうですが」「それじゃあ追いついて横からやるか」「構わん、射て」「了解、射撃用意」射手が遠隔操作の装置で射撃準備を進めながら呟くと航海長が海上保安官的に回答した。すると船長が戦時の対応の命令を下した。確かにこの1隻に無用の時間を掛けている間に他の漁船が見島に接近すれば取り返しがつかないことになる。
見島も村山山口県知事が佐渡島に倣って隊員の家族を含む全島民を避難させているので呂論島のような悲劇は起きないが、残った航空自衛隊員たちは芦谷基地・第3術科学校の教育職の隊員の増援を受けて見島守備隊として全島を警備している。見島は周囲19キロの小島だが対馬海流が洗う韓国側=西側の海岸線は断崖絶壁になっていて港があるのは東側と南側の2カ所だ。それでも韓国軍の特殊部隊であれば断崖絶壁を登攀して潜入することも容易なはずなので断じて接近させてはならない。
パパパパパ・・・、「何だ」「ヘリです。陸自のヘリが空から機銃掃射しました」射手が引き金に当たる発射スイッチを押そうとした時、黒い影が上空を通過して漁船の周囲に水柱が上がり、小銃を構えていた乗組員が海に投げ落とされた。
  1. 2023/12/22(金) 11:35:31|
  2. 夜の連続小説9
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