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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ706

閣議室に防衛省・自衛隊中央指揮所から「中国の漁船の大船団が出航して東シナ海を東進して来る」と言う緊急情報が入ったのは「今回の武力衝突は終息する」と言う前提で築木(つずき)財務大臣が提起したロシア軍を制圧するために陸上自衛隊が破壊した新潟市中心部の復興予算の捻出方法と古泉法務大臣の自衛隊、警察、海上保安庁によるロシア軍、中国軍の将兵殺害の実態調査について長々と議論した後、上山外務大臣が中国とロシアに先立って行う韓国との外交交渉を説明し始めたところだった。中央指揮所では閣議に出席している大原防衛大臣に代わって宮谷防衛副大臣が指揮を執っている。
「Pー1が現場海域に到着しました。送ってきたレーダー情報を解析すると数は100隻を超えています」この説明に閣僚たちは中央指揮所でも見慣れた航空自衛隊の航空機の速度を表す線を引いた航跡ではなく海上自衛隊の海面を航行する船舶の存在を示す画像に切り替わった閣議室のモニター画面に注目した。確かに胡麻粒のような光の点が広がりながら西に向かっている。漁船であれば各々の漁場を目指して分散するはずだが指揮を受けている艦隊のように直進している。進路には福江島がある。
「海保の巡視船は何隻出ている」「第7管区の門司と福岡、唐津、佐世保、長崎の巡視船が25隻です。五島と長崎近海では乗組員に武装させた巡視艇が警戒に当たっています」西藤国土交通大臣の質問にもモニター画像の音声の海上自衛官は答えた。これで海上保安庁と海上自衛隊が連携して対処していることが判る。おそらく海上自衛隊は鹿屋基地のPー1哨戒機だけでなく佐世保地方隊でも護衛艦が待機しているのだろう。
「韓国の漁船も日本海を南下しています。進路から見て山口県の見島と島根県の隠岐島を襲撃するようです。こちらは仙崎と萩署の巡視船艇3隻が対処しています。岩国で待機しているPー8に発進を要請します」「Pー8って」「アメリカ海軍の哨戒機だ」画面の音声の説明にこの事態になっても防衛問題に関心を示さない閣僚が疑問を口にすると大原防衛大臣が苛立ったように説明した。
「Pー8からの情報が届きました。韓国の船団は10隻が先行して本体が続行する陣形を取っているようです」間もなく画面は対馬の西の日本海に替わった。こちらの光の点は中国の半数ほどだが、高速度の漁船10隻が先行して残る本体が遅れて続行している。その10隻の前を巡視船を示す航跡表示が遮るように横切ったのが判った。
「漁船の乗組員が銃を構えたようです」「こっちも呂論島の二番煎じか」「応戦させろ」画面の音声の担当者は海上保安庁の交信も傍受しているようで高速巡視艇が萩海上保安署と仙崎海上保安部、門司の第7巻管区海上保安本部に発信した報告を説明した。それを聞いた大原防衛大臣と西藤国土交通大臣が大き目の独り言を呟いた。
「韓国の漁民を殺したら外交交渉で解決できなくなるじゃない」停戦に向けた議題でぬるい安堵感が漂っていた閣議室に緊張感の冷気が吹き込むと上山外務大臣がただのヒステリー婆さんになったような金切り声を上げた。机の上には読み上げ始めていた外交交渉の日程表と説明資料が広げられ、拳を握った両手で押さえつけている。
「漁船から発砲して来ました。応戦するようです」「よし」「第7管区から防府の陸自13飛(陸上自衛隊第13飛行隊)に派遣要請が入りました」「アメリカ海軍は海上における警備行動に介入できないんだな」画面の音声の説明に西藤国土交通大臣は相槌を打ち、次の説明に大原防衛大臣が解説を加えた。
「大体、陸上自衛隊は海上における警備行動の対象外だろう」「ヘリが防府飛行場を発進しました。武装はドアガンとしてM2を1門」石田首相は苛立ってくると左手の指で唇を摘まむ妙な癖があるがそれは脳を刺激して思考するための仕草のようで唐突に発進を制止する理由を思いついた。しかし、陸上自衛隊も準備万端整えていたらしく設置に時間がかかるドアガン用の銃架にM2重機関銃も装着した上、下手すれば弾薬まで搭載して待機していたUHー1J多用途ヘリコプターは航空自衛隊の緊急発進並みの迅速さで発進して現場に急行した。M2重機関銃の口径は12・7ミリなので高速巡視艇の13ミリ機銃と大差はない。この水も漏らさぬ対応も非合法海外情報員・本間郁子が台湾海峡の金門島から発した中国の悪足掻きの警告の成果なのは言うまでもない。
  1. 2023/12/23(土) 14:44:32|
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