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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ714

「ディス・イズ・ソリタリー(孤島・第9警戒隊のコールサイン=仮称)・CP(指揮所)、カムイン(どうぞ)」東シナ海のEEZ付近で中国の大漁船団と海上保安庁が接触したとの通報を受けて 中山1尉は警備職の空曹の指揮官と台湾人の義勇隊員による上陸阻止部隊に出動準備を整えさせながら指揮所で情報の収集に当たっていた。すると鹿屋基地を飛び立った海上自衛隊のPー1哨戒機が福江島の第15警戒隊と下甑島の第9警戒隊の指揮所を呼び出した。
「イエス、イエス・・・ラージャ」兵器管制幹部の運用班長が指揮所にも設置してある警戒管制無線のヘッドセットをはめて応答しているのを分屯基地司令の第9警戒隊長と総務人事班長の横で中山1尉も聴いているが次第に表情が険しくなってきたように見える。やがて運用班長は振り返ると3人に交信内容の説明を始めた。
「中国漁船が10数隻こちらに向かっているようです。先行していた船団は携SAMを取り出した時点でPー1にエスコート(随伴=護衛)していたギャオス(第8航空団のコールサイン=仮称)が攻撃しましたが、後続の船団が分散して回避しながら1部がこちらに向かっているようです。こちらはまだ敵対行動を採っていないのでギャオスは攻撃できないそうです」「それでは各展望所に監視の強化を指示しなければなりませんね」そうだな」中山1尉の応答に警戒隊長も同意した。第9警戒隊警備隊=下甑島守備隊は当初、上甑島の縄瀬鼻、田之尻、長目の浜、中甑島の鹿の子大橋、帽子山、木の口、下甑島の鳥の巣山、八尻、松島にある各観光用展望所の大型望遠鏡を下甑島の東シナ海側に移設していたが、それほど高くない場所では視界が確保できないことが判明したため元に戻して監視要員を配置することにした。これで甑島群島の全周に監視の目が届くようになった。やはり観光用でも視界が効くから展望所になっているのだ。
「しかし、ウチの上陸阻止部隊22名では10隻の漁船が数カ所に分散して着岸すれば対処できません。少なくとも1隻に5名以上は乗っているでしょう」「陸自にもらったランクルにはキャリバー50(M2・127ミリ重機関銃)が載せてあるだろう。あれで着岸前に銃撃するんだ」「それでは警察権の行使から逸脱します」「これは戦争だ」中山1尉と運用班長の問答に警戒隊長が結論を与えた。警戒隊長は春日基地の西部航空方面隊防衛部長から「総隊司令部には航空幕僚長から『今度は戦争だ』と言う指示が届いている」との電話を受けていた。戦争として攻撃を加える以上、先手必殺が常識になる。
「陸自の増援部隊がヘリで来ることになっているはずですが」「陸自としては高遊原のCHー47で先に高機動車を運んでから人員の輸送に当たる予定らしい。万が一、上甑島に上陸されれば8飛のUHー1で空輸した先遣隊が急行することができると言うところだ」「馬鹿な、飛行場がある呂論島や福江島と違って甑島群島で上陸する価値があるのは空自がある下甑だけでしょう」「その裏を掻いてくるのが中国じゃあないか」中山1尉の反論に運用班長が痛烈な再反論を返した。しかし、考えてみれば甑島群島には犠牲を払ってまで上陸する戦略・戦術的価値があるとは思えない。強いて言えば九州本土への侵攻の中継拠点にするくらいだが兵員を待機させ、物資を集積する用地が確保できない。それでも1997年2月3日に発生した下甑島への中国人の不法上陸が事前偵察だとすれば中国側は何らかの価値を見い出しているのかも知れない。
「やはり陸自は五島列島を主戦場だと考えているようだな。2番目に大きい中通島には山猫軍団(対馬警備隊)が派遣されている。ニュータ(=新田原基地)の第1空挺団も間もなく福江空港に移動する。さらにAHー64で接近する漁船を阻止するつもりだが相手が漁船では迂闊に発砲できないそうだ」「ウチもヘリボーンで兵隊を運ぶよりも8飛(第8飛行隊)のUHー1のドアガンで機銃掃射してもらいたいと思っていましたが、戦争は侵略されてからゴングなんですね」警戒隊長の説明に中山1尉が秘していた腹案を披露すると運用班長と総務人事班長が顔を見合わせた。中山1尉はこの日の数時間前に反日漁民から提供された漁船で山口県萩市の見島に向かっている韓国海兵隊の脱走兵を防府飛行場から発進した13飛のUHー1が機銃掃射していることは知らない。偶然にも発想が数日前の陸上幕僚長と一致しただけだ。
  1. 2024/01/23(火) 12:05:37|
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