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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ715

「UHー1が4機、鹿島港の桟橋と道路に着陸、人員と弾薬を下ろしました」「先遣隊の到着だぞ」監視小隊と熊本空港と同居している高遊原分屯地から発進した第8飛行隊のUHー1多用途ヘリコプターとの交信をモニターしている運用班長の説明に警戒隊長は「予定通り」と言う口調で答えた。
「続いてCHー47が4機、入れ替わりに鹿島港の桟橋と道路に高機動車を4両下ろすようです」「要するに中甑、上甑に上陸してもすぐに駆け付けられる位置を選んだと言うことだな」この説明にも警戒隊長は自分を納得させるように答えた。
鹿島港は下甑島でも北の端にある連絡船の停留港で中甑島へ渡る甑大橋にも近く、島の中央を縦断する道路を抜けて鹿の子橋を渡れば中島、甑大明神橋を通って上甑島だ。
「UHー47が離陸しました。これから部隊主力を空輸して来ます」「4機なら重武装した隊員を1個中隊と言うところだな」「8師団は奄美群島も担当していますから戦力の一括投入は不可能なんでしょう。小出しにして各個撃破されるのは愚の骨頂ですが、陸自が考えている甑島群島の優先順位はそれほど高くないと言うことです」警戒隊長の口調に不満を感じ取った中山1尉が弁護するように戦術論を解説した。勿論、警戒隊長も戦力の集中発揮の原則は承知しているが、守備隊長と呼ばれるべき下甑島分屯基地司令としては以前から陸上自衛隊に陣地構築のための施設部隊の派遣と普通科部隊の常駐を要請したが黙殺された。その代わりのように訓練を終えて即応自衛官に指定された台湾人の義勇隊員を譲られた。確かに台湾人の義勇隊員は徴兵経験がある即戦力で、中国の軍事的恫喝と脅威を日常的に実感しているため極めて士気が高く大いに役に立っているが20名では少な過ぎる。その20名は上陸阻止要員として中国漁船の行先が特定でき次第、現場に急行して戦闘を実施させることになっている。
出入国を統括する法務省としては法的根拠がない外国人義勇隊員を認めるつもりはなく入国自体を拒否することを決めていた。しかし、オーストラリアからイギリス人義勇隊員を乗せて飛び立った輸送機が燃料補給の名目でフィリピンと台湾に立ち寄った際に現地の志願者を同乗させて在日アメリカ軍の厚木基地に着陸して各国の大使館と代表事務所に引き渡されてしまった、そうして当時の双木外務大臣が発案した「即応予備自衛官に指定する」と言う裏技を釜田防衛大臣が後押しして義勇隊員が採用された。
そのため本来は東部方面隊に配属されて新潟での戦闘に参加したイギリス人義勇隊員のように非戦闘的任務に限定するべきなのだが、不俱戴天の仇である中国が相手ではどちらの義勇隊員も納得しないのは明らかだった。
「中国船14隻確認、7隻ずつに分かれて上甑と下甑に向かっています」「こちらの人数が少ないことを見越しているな。それを分散させれば人数では互角と言うことになる」「部隊を乗せたCHー47はまだ到着しないか」「只今、高遊原を離陸したところです。所要時間は30分を予定。漁船の着岸には間に合いません」警戒隊長の質問を運用班長が監視小隊に取り次ぐと若手兵器管制幹部の3尉が回答した。
「先遣隊に連絡は」「警備隊が地上無線で交信しているので私から逐次情報は送っています。陸自としては部隊主力が到着して編成を執らなければ行動できないと言っています」「あんぽんたん・・・」中山1尉の情けなさそうな説明に誰からともなく九州では肥前の佐賀と肥後の熊本で用いる蔑称が聞こえた。
「下甑分屯基地司令として指示、鹿島港の先遣隊の高機動車2両は上甑島の中甑浜に急行せよ。現地で展望所からの情報で上陸地点を推定して対処せよ。残り2両は当分屯基地に向かえ。4機のCHー47のうち2機は当分屯基地に着陸せよ。残りの2機は1機が上甑島中甑浜、もう1機は里港の集落内に着陸せよ。当部隊から2箇所に車両各1両を派遣する」警戒隊長は掲示板の甑島群島の地図を見ながらこれまで頭の中で考えていたらしい戦術的指示を滞ることなく口にした。
「確かに42即機連隊の派遣命令には『細部は航空自衛隊下甑分屯基地司令の指示を受けよ』とありますから隊長の指示は適切です」ここで聞き役に徹していた総務人事班長が防衛用秘匿メールで届いた北熊本駐屯地の第42即応機動連隊の派遣命令を解説した。
  1. 2024/01/24(水) 15:22:19|
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