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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

第133回月刊「宗教」講座番外編=四十九日の愚考察

116回までこのシリーズを続けてくると流石にネタ切れになり、苦肉の策として簡単な精進料理教室を開講したのですが、これが意外に好評で女性の閲覧者が増えました。確かに精進料理はダイエット効果が期待できる上、単なる菜食ではなく作務に励む雲衲のエネルギー源としても調理方法を工夫してあるため働く女性にとっては格好のオカズなのでしょう。ところが今回は唐突に考えることがあってネタができてしまったので本来は正編、精進料理教室としては番外編を割り込ませます。
実は9月上旬に敬虔なキリスト教徒の知人が亡くなったため小庵でも佛教式に四十九日までの追善供養を勤めることにしました。小庵では週1回ではなく四十九回まで毎夕の晩課で亡くなった人の宗旨の経典を詠んで追善供養を勤めています。ところが佛教徒であれば経本を四十九回に分割して詠むので間違うことはないのですが、今回は新約聖書の厚い本だったため到底読み切れず1回1ページとして読み進めていきました。
すると「亡くなったのが日曜日だから49日目も日曜日」とだけ意識していたので気がつけば1週間先の56日目まで読経ならぬ読聖書を勤めてしまいました。それでも「多い分には問題あるまい」と勝手に納得しています。
その時、妙なことに思考が回るのが野僧の頭で、「日本が欧米式の旧約聖書の創世記の天地を創造する仕事を終えた創造主が7日目に休んだ逸話に基づく週7日制になったのは明治9(1876)年でそれまでは4と9の四九日を休日とする週5日制だったから7日毎に僧侶を呼んで読経を勤め、四十九日に食べ物を振る舞う法要を行うようになったのは明治以降なのか」と言う疑問が湧いてしまいました。現在の佛教界では四十九日法要の意義を「冥界では7日毎に公判が開かれて死者の罪が審理される。だから7日毎に弁護として佛教を信じ、学んでいることを示す読経を勤める。そして7回目の公判で判決が下るので盛大な法要を勤めるのと同時に餓鬼に施す功徳として会食を催す」と説明していますから益々「明治以降の風習」と言う仮説が強まってしまいました。
佛教式の死後の世界観については中国に佛教が伝来して土着の道教と融合する中で成立し、四十九日までの法要には3日目が開蓮忌、初7日が初願忌、14日目が以芳忌、21日目が洒水忌、28日目が阿経忌、35日目が小練忌、42日目が檀弘忌、そして49日目の四十九日法要が大練忌と言う仰々しい呼称がありますが、これは佛教ではなく中国の道教の中陰節の用語の踏襲・模倣です。一方、前述の冥界の公判の判事は第1回公判の秦広(しんこう)王、第2回公判の初江王、第3回公判の栄帝王、第4回公判の五官王、第5回公判の閻魔王、第6回公判の変成(へんじょう)王、第7回公判の泰山(たいざん)王、第8回公判の平等王、第9回公判の都帝王、そして結審になる第10回公判の五道転輪王の十王になっていて現在では7回で終わってしまうため平等王は1周忌、都帝王は3回忌、五道転輪王は7回忌の法要を遺族が勤め、引き続き佛教を信じ、学んでいることを追跡調査する役柄にされています。しかし、これを日本古来の週5日制で考えれば5日毎になって10回目の50日を結審前日の49日に勤めるとすれば人数が合い、判事であるはずの十王に不可解な追跡調査を割り当てる必要はなくなります。
野僧が寺に住んでいれば保管している記録で江戸時代の法要の形態を確認するのですが、残念ながら小庵には古文書はなく推理の域を出ることはありません。
ちなみに冥界の十王の審理を受けて振り分けられる地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天界の六道は恵心源信僧都の「往生要集」の第1巻「厭離穢土」や六道で加護する延命能化地蔵願応尊の経典で詳しく説かれていますが、浄土としては阿弥陀如来が西方の極楽浄土、薬師瑠璃光如来は東方の浄瑠璃浄土、法華宗や曹洞宗などが奉じている妙法蓮華経では天竺の霊山(りょうぜん)浄土です。
知人が逝ったであろうキリスト教の冥界はダンテ・アリゲーリの「神曲」でオドロオドロしく描かれていますが、先ず三途の川と同様にアケローン川を渡って冥界に行き、そこで「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」と書かれた門を通って奥に進むと地獄の入り口で判事・ミノースが待っています。
東アジアの佛教でも人間が生前に犯した罪業によって区分された殺生の等活地獄、盗みが加わる(罪業の加算式)黒縄地獄、邪淫(性欲・快楽に溺れる)が加わる衆合地獄、飲酒が加わる叫喚地獄、妄語(嘘)が加わる大叫喚地獄、邪見(異端の考え方)が加わる焦熱地獄、佛戒を保つ尼僧やまだ性欲を持たない童女の強姦が加わる大焦熱地獄、そして父母や僧侶の殺害が加わる阿鼻=無間地獄の8大地獄が設定されていますが、神曲でも洗礼を受けなかった者が責めを受けることなく永遠に放置される第1圏の辺獄=リンボに始まって肉欲に溺れた者が荒れ狂う暴風雨に晒される第2圏、大食漢が鬼に引き裂かれて泥沼でのた打ち回る第3圏、吝嗇(りんしょく=物惜しみ)と浪費を続けた者が金貨を詰めた重い袋を転がしながら罵り合う第4圏、怒りに我を忘れた者が血の沼で責め合う第5圏、異端の教派の教組と信者が火焔の墓に葬られている第6圏、他人や自己に暴力を奮った者が3種類の責め苦に振り分けられる第7圏、悪意を以て罪を犯した者が十種類の責め苦に振り分けられる第8圏、そして裏切り者が永遠に氷の中に首を出して閉じ込められて凍え続ける第9圏のコキュートスがあるようです。
ところで日本語ではキリスト教の死後に往くカミの世界「ヘブン」を「天国」と呼んでいますが、ヘブンへ往生することは「ゴー ウェスト」=西の方角に向かうとされているので空の上を意味する天国では誤訳です。西方楽園と言ったところでしょうか。
閻魔王真言=なうまく・さんまんだぼだなん・えんまや・そわか
閻魔王庁図(聖衆来迎寺)滋賀・聖衆来迎寺・閻魔王庁図
閻魔王像(白毫寺)奈良・白毫寺・閻魔王像     
133・閻魔大王(エール・橋本じゅん)連ドラ「エール」の閻魔王=橋本じゅん
  1. 2024/02/01(木) 15:31:19|
  2. 月刊「宗教」講座
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