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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ725

「藍より青き大空に大空に たちまち開く百千の 真白き薔薇(ばら)の花模様・・・」「副島1尉、この曲は何ですか」「これは『空の神兵』、第1空挺団の部隊歌だよ」福江空港は副島1尉が指揮するフィリピン人義勇隊員を主力とする第15警戒隊警備隊が防備を固めていた。その福江空港の場内放送が最大の音量で景気の良い歌を流し始めたので分隊長の警備職の空曹が空港ターミナル1階の事務室で機械を操作している副島1尉に質問した。すると久しぶりに教育幹部に戻ったような顔で解説を始めた。
「『空の神兵』、つまり日本軍の落下傘部隊は大東亜戦争の緒戦にオランダの植民地だったインドネシアを攻撃した時に海軍陸戦隊がセレベス島に、陸軍挺身団がスマトラ島に空挺降下したんだ。それが日本でも大評判になって発売されたレコードがこの歌だ。戦後には歌詞を変えて「落下傘」って言う童謡になった名曲だけど作曲した高木東六は『軍歌とは聞かされていなかった』って戦争への協力を否定したそうだ。実際は先にできた歌詞を渡してたんだから見苦しい言い訳だな。昔は航空教育隊でも『空の兵隊の歌だ』って教えていたらしいが『空の新兵』と読み間違えたんだろう」やはり副島1尉の説明は最後に航空教育隊への嫌味になった。
実は副島1尉は第1空挺団が前身としている陸軍挺身隊ではなく海軍陸戦隊の空挺作戦を指揮した堀内豊秋大佐を教育者として尊敬している。堀内大佐はデンマーク体操を独自に研究して海軍体操、現在の海上自衛隊体操を考案した。幹部候補生学校から江田島研修に行って習った海上自衛隊体操は陸と空の自衛隊体操に比べて動作に無理がなく習慣にすれば健康体になれそうだった。また作家の阿川弘之が予備学生として海軍に入った時の教官だったが、中国戦線で占領地域を統括した経験から「五欲を抑えよ」と指導していたと言う。特に性欲については強姦された女性だけでなく家族や恋人にも深い恨みを残すから兵の指導に当たる士官は厳しく自己を規制しなければならないと強調していた。副島1尉は健軍駐屯地の西部方面隊総監部に研修に行った時、熊本市北区にある武家屋敷の堀内家の旧宅を訪ねたが、最後の当主の堀内大佐の資料が展示されていて非常に感銘を受けた。ただし、昭和54年に放送された堀内大佐が主人公の土曜ワイド劇場の終戦特集ドラマ「遥かなる海の果てに」が紹介されていたがインターネットのDVDの通信販売サイトを検索しても見つからず、動画も投稿・掲示されていなかった。昭和54年では副島1尉が生まれる前なので是非見たいものだ。
「だから歓迎の歌として流してるんですね」「うん、今回は空挺降下しないで滑走する機体から飛び降りるそうだがフィリピン人の兵隊たちには感動ものだろう」五島列島は陸上自衛隊西部方面隊も主戦場と見ていて漁船団に乗せた地上部隊が上陸する前に指揮権を移譲されている第1空挺団を投入する。ただし、空挺作戦と言えば輸送機から次々に飛び出して大空にOD色の花を咲かる落下傘降下が見せ場だが、今回は地上からの攻撃はないにしても降下中の事故は否定できず、何よりも落下傘を使用しなければ荷物が減って搭乗者数が空挺隊員の64名が一般隊員の92名になるので滑走路に着陸して速度を落としながら走行する輸送機の後部扉から地上に跳び下りる見たことがない技を披露するらしい。それでも通常の自動車よりも高速度で走行する輸送機から固いコンクリートの滑走路に跳び下りる秘技は一見に値するのは間違いない。
「来たぞ、Cー130だ」空港ターミナルの屋上で義勇隊員たちの勤務状況を監視している警備職の空曹が爆音に気づいて双眼鏡で南西の空を確認すると2つの点がこちらに向かって来ていた。今回、第1空挺団が待機していた新田原基地は開戦前、陸軍挺身隊が落下傘降下を訓練した聖地であり、そこから出撃してきたのだ。
「オー、ハーキュリーズ」やがて胴体上部に直線の主翼を背負いプロペラのエンジン4発を付けた独特の機影がハッキリして機種が判るとフィリピン人義勇隊員たちは拍手歓声を上げた。同時に副島1尉は場内放送の電源を入れ、CDデッキを操作して繰り返し再生にした「空の神兵」を流し始めた。この曲は前奏から景気が良い。
ゴー。副島1尉が事務室からロビーを通ってエプロンに向かうと2機のCー130がターボフロップ独特のエンジン音を響かせながら低空で通過していった。
  1. 2024/02/03(土) 14:36:45|
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