fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ728

「甑群島で戦闘が始まったようだ」第1空挺団が福江島の西岸の三井楽集落の小中学校に移動した頃、福江空港の副島1尉に第15警戒隊指揮所から連絡が入った。福江島の西岸にある福江島分屯基地の第15警戒隊指揮所には事前に配置されている対艦ミサイル連隊に続いて第1空挺団派遣部隊の指揮所も併設されることになった。
自衛隊としては対艦ミサイル連隊を中国から見れば表側になる西岸に部隊を張りつけたかったのだが海岸沿いに建ち並ぶカソリック教会の聖職者たちが「戦争に巻き込まれる」「世界遺産を保護しろ」「人殺しに協力しない」と反対し、それを日本のカソリック教会がヴァチカンの教皇庁に訴えたためカソリック信者の上山外務大臣が猛反対して却下されてしまった。そのため第1空挺団も見晴らしが効く教会の尖塔に歩哨を配置することもできず車両斥候を出す以外は麓の小中学校で待機することになった。
敗戦後、日本キリスト教会は反体制を公然化している改革派に加盟しているため活動は日本共産党と一体化していて教会のミサでは聖書の後に日本国憲法第9条を朗読している。中でもカソリックは豊臣秀吉による禁教と江戸幕府が継続した歴史を過酷な宗教弾圧と決めつけて反体制を先鋭化させている。しかし、豊臣秀吉の禁教は宣教師によるカソリックの布教がヴァチカンへの帰依によって精神的に服従させる侵略の前段階だと察知したからに他ならない。また江戸時代の禁教は豊臣時代のような拷問は影を潜め、代官や庄屋たちも働き手を失うよりも黙認するようになり、地域の寺の住職が年に一度、盂蘭盆会に檀家の家々を周って佛壇が祀ってあるかを確認し、正月の地域の寄り合いで踏み絵を踏むだけになり、隠れキリシタンと判っている住民の番になると確認役は目をつぶって振りをするだけだったと言う。
「甑群島って9警(第9警戒隊)がある下甑じゃあないのか」「上甑島らしい。漁船14隻が上甑の北を迂回して東側を通過していくのを監視要員が銃撃したんだ。ところが反撃されて隊員が戦死したから陸自の派遣部隊が携MATで全て撃沈したそうだ」第15警戒隊指揮所がこの情報をどこから仕入れたのかは判らないが華々しい戦果として大本営発表のように聞かされたようだ。
「上甑に向かったとなると中国軍はレーダーサイトの破壊には執着していないようだな」「それだと有り難いがね。空港はよろしく頼むぞ」「了解」副島1尉はこの情報を聞いて現在の西岸に集中させている対艦ミサイル連隊と第1空挺団の配置が不安になった。対艦ミサイル連隊はレーダーで海上を監視しているはずだが照準用だけに探知距離はそれ程でもない。そのため第15警戒隊の監視オペレーションに隊員を常駐させてレーダー情報を共有する態勢を作り上げた。一方、第1空挺団も海岸線に車両で斥候を出しているが双眼鏡による肉眼よりもレーダー情報の方が役に立ちそうだ。
「こちらも東側に迂回してくれば空港を放棄して迎え撃つしかないか。しかし、外務省はフィリピン人を戦闘に参加させるなって言ってるんだよな。中山1尉は台湾人を使ったんだろうか」変形した正方形のような福江島は西側の丘陵地帯に広がる円畑(まるばたけ=福江島特有の円形の畑)のド真ん中にレーダーサイトがあり、東側の平坦な地域に空港がある。その一方で西側の海岸線は断崖絶壁が続くため上陸には不向きだ。ただし、五島列島の福江島の北側には大小の島が連なっているため迂回するには南側しかない。
「ハイド(潜伏する・15警戒隊のコールサイン=仮称)CP、こちらテレサ(テレサ・テンのヒット曲から空港警備隊のコールサイン)、そこに空挺団の人はいるか」「今は中隊長が1人いるぞ」「変わってくれ」副島1尉も着任以来、甑島群島を遥かに超える五島列島の島々を見て回ったが、福江島は空港がある東側の平坦な地域に人口が集中していて道路は舗装されていても利用者は少ないようだった。仮に中国船がこちらが待ち構えている西側を避けて南側に迂回すれば上陸地点は選び放題になる。
「こちら2中隊長の永田3佐だ」「空港警備隊指揮官の副島1尉です。先ほどはどうも。実は甑群島に向かった中国船の動きを聞いて・・・・」副島1尉はCー130から下りてエプロンで編成を取っている時に敬礼を受けていた中隊長を見ただけだったが持ち掛ける話題が好感を持たれるとは思えなかったので念入りに挨拶をした。

  1. 2024/02/07(水) 15:57:07|
  2. 夜の連続小説9
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<何を今更!自民党の派閥の何が悪いのか。 | ホーム | 2月7日・「両舷直の親玉」・古村啓蔵少将の命日>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/8929-049276b2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)