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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ738

鹿児島地方検察庁に電話をして私がコートジボワール内戦の裁判に敗訴した体験談を語った後、中国軍の弁護団が同じ法廷戦術を採ることを想定して証拠固めを進めるように助言した。すると電話に出ている若い次席検察官は想定外の楽屋ネタを説明した。
「大丈夫です。呂論島では警察官も殺害されているので鹿児島県警は組織ぐるみで立件と勝訴に向けて全力を投入しています」確かに公判記録に添付してあるリストには大量多数の証拠物件が羅列してあり、普通の犯罪捜査以上に気合いを入れて探索し、鑑定したことが判った。しかし、そんな鹿児島県警を以てしても双方が銃を無制限に乱射し合ったコートジボワールでは立件するだけの証拠固めは無理だろう。
「札幌でも裁判が進んでいるんだよな」鹿児島地方検察庁が自信満々なのを確認した私は次の茶封筒の束を机の上に広げた。今度は北海道に2方向から上陸したロシア軍との交戦を裁いている札幌地方検察庁だった。北海道では主に第2師団と第5旅団が任務を遂行したが、司法警察としての業務は第2師団が旭川駐屯地の第119地区警務隊、第5旅団は帯広駐屯地の第121地区警務隊が担当している。以前、梢を連れて北海道へ現地調査に赴いた時、両警務隊長の司法警察としての方針を聞いたが第119地区警務隊の隊長は「現在の武力行使が戦闘であることに疑いの余地はなく、戦闘であれば戦争法を適用しなければ国際社会に説明がつかない」と言って第2師団には降伏したロシア兵を捕虜として処遇させていた。一方、第121地区警務隊長の隊長は「防衛出動が発令されていない以上あくまでも平時であり、平時であれば刑事犯罪として処理するのが法理だ」と述べて第5旅団には捕獲したロシア兵を不法入国、武器と弾薬の違法携帯、爆発物取締罰則違反に始まり、住居への無断侵入、器物破損、窃盗から野生動物の狩猟による鳥獣保護管理法違反まで適用して第2師団の俘虜収容所と同様の施設を臨時拘置所に指定させて刑事被告人として収容させている。
「結局、121の隊長の意見の方が通ってしまったけど常識的に考えれば今やってるのは戦争だよな・・・」札幌地方検察庁の公判記録は告訴している違法行為が多岐にわたる上、同一人物の事案でも時間と場所がバラバラなので読んでいて判らなくなる。おまけに事情聴取には通訳が介在しているため日本語として少なからず変なところがある。何にしてもこれを読破・理解して論戦を展開している検事、弁護人とそれを聞いて正否を判定する判事の文書の理解力は「流石」と感嘆するしかない。
「防衛出動を命令しないことを石田首相の職務放棄として行政訴訟を起こせないかな」札幌地方検察庁の公判記録を半分読んだところで嫌になってきた私は頭をほぐすために毎度の馬鹿な考えを始めた。我が国の平和と独立を守るための公共の組織である自衛隊が実際の戦争を治安出動による警察権の行使で対処させられているのは石田首相が防衛出動を発令する職務を放棄していることが原因だ。その前に日本国憲法第9条2項が国の交戦権を認めていないことも大きいが憲法の規定の可否は裁判所の審理ではなく国会の改憲手続きの議論の中で明らかにされることだ。
「しかし、自衛隊法76条では総理大臣は『出動を命じることができる』と規定してるから『嫌だよ』と言う奴に強要することはできないな」これが「出動を命じなければならない」なら話は早いのだが自衛隊法が成立したのは敗戦から9年目だったので国民は東條英機内閣の閣議決定でアメリカ、イギリス、ついでに中国の国民党政権に宣戦布告した歴史を忘れておらず政治家に開戦する権限を与えることを許さなかったのだ。
「憲法73条の内閣の事務は使えないかな・・・1項の『法律を誠実に執行し、国務を総理すること』、2項の『外交関係を処理すること』、4項『法律の定める基準に従ひ(条文は『い』ではない)、官吏に関する事務を掌理すること』・・・2項は使えそうだ」私も一応は司法試験にマグレ当たりしているので日本国憲法は前文から全て丸暗記している。こうしてオランダで勤務している間に仕舞い忘れてしまった法律を引っ張り出しても石田首相に防衛出動の発令を強要する行政訴訟はできそうもない。戦時中に独裁者・東條英機首相が退陣したのは絶対防衛権と公言していたサイパン島の陥落で昭和天皇に不信感を突きつけられたからだ。今の天皇では無理だ。
  1. 2024/02/17(土) 15:47:20|
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