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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

2月19日・「人生劇場」の作者・尾崎士郎の命日

昭和39(1964)年の明日2月19日は出身地の矢作川の下流の幡豆郡を舞台にした長編小説「人生劇場」を執筆した尾崎士郎さんの命日です。66歳でした。
野僧は嘉手納基地内在住のアラスカ人の彼女が珍しく那覇市まで出てきたので丁度上映していた映画「人生劇場」を見に行ったのですが、「故郷を舞台にした文学作品」と説明したにも関わらず中井貴恵さんが松方弘樹さんや風間杜夫さんに抱かれる性交シーンの連続で「これはポルノなの」と怒り心頭に達してしまい、仕方ないので「あの女性は娼婦で客を取っている場面をリアルに描いているんだ」と補足すると「貴方の故郷には売春街があるの」と怒りが心頭を突き抜けて天井まで達してしまいました。
確かに早逝した人気2枚目俳優のお嬢さんで清純派のイメージがあった中井さんが娼婦役でヌードを公開して濃厚な性交シーンを演じることは雑誌でも取り上げられていましたが正・続・続々編の原作の濡れ場はそれ程の頻度と長さではないので油断していました。それでも吉良で上演される忠臣蔵が名君だった吉良上野介義央さまが殺されるのではなく赤穂浪士が返り討ちにされる粗筋になっていることなどの地域の特色は紹介されていました。
そんな尾崎さんは明治31(1898)年に江戸時代から吉田藩(現在の豊橋市)と名古屋を海沿いに結ぶ街道沿いに商家が店を連ねる幡豆郡横須賀村でも煙草の製造や木綿の卸しなどで財を成した富豪の家に生まれました。尾崎さんが生まれた明治31(1898)年には地域の信用を集める名士が委託された郵便局を開業しましたが、公金を横領していたため尾崎さんが大学生だった時期に後を継いだ長兄が拳銃自死しています(映画でも三船敏郎さんが演じていた)。
旧制・愛知第2中学校(現在の岡崎高校)に在学中に「いかにして選挙権を拡張すべき乎」と言う政治論文を雑誌に投稿すると評者だった早稲田大学の教授の目に留まり勧誘されました。実際、早稲田大学政治学部に進学しましたが社会主義運動に関わって中退することになり、その後は共産党系の出版社に入って皇族に危害を加える刑法の大逆事件の真相究明に取り組みますが、やがて異流で右翼の国家社会主義に転向しました。
大正10(1921)年に雑誌の懸賞小説で大逆事件を題材にした「獄中より」が第2席で入選したことで本格的に作家になりました。そして昭和8(1933)年から都(みやこ)新聞に「人生劇場」の連載を始めると大ベストセラーになり、数多くの番外編を含めて昭和34(1959)年まで続きました。
国家社会主義に傾倒したため作家には珍しく右翼で戦前戦中は愛国心を強調し、戦意を煽るような小説や評論を連作しましたが敗戦後は戦争協力者として公職追放になったこともあり、歴史に主題を変更して「石田三成」「真田幸村」「塙団右衛門」などの武将や相撲好きだけに「雷電」の伝記小説を発表しています。中でも昭和27(1952)年の「吉良の仁吉」は清水の次郎長さんの兄弟分=盟友として映画にもなり、地元では「観光の目玉」として売り出した時期もありましたが(国道沿いに「仁吉の里」と言う看板が出ていた)最近は消えてしまったようです。
中井貴恵1983年公開「人生劇場」より(中井貴恵さん)
  1. 2024/02/18(日) 15:36:33|
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