fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ743

自動販売機で缶コーヒーを買って部屋に戻った私は帰宅準備を始めた。普段は市ヶ谷地区から戻ると大した仕事はないがそれでも配布されている書類には目を通して必要な処理をして帰るので少しは残業になっている。本当は梢が待つ自宅に一刻も早く帰りたいのだがこの職場に籍を置いている以上、責任は果たさなければならない。それが今日は定時に帰宅できるのだ。金庫に仕舞う前に茶封筒を整理していても鼻歌が出てしまう。
「ただいま」「おかえりなさい」今日の帰宅が早いことは今も梢の精神と結ばれている赤い通信回線で伝わっていた。最近の帰宅の挨拶は額にキッスか、頬と頬をくっつけるスキンシップになっているが今日は何故か強く抱き締めて濃厚なディープ・キスになった。梢も私の胸の中で燃え上がっている炎に熱せられたように舌をからめてきた。
「あッ、起った」「ウン(何)・・・ウウウウウ(どうしたの)」私は突然、20数年間で1回だけ発生した股間の変化に困惑した言葉を梢の口の中で呟いた。当然、梢の返事は言葉にならない。それでも手を股間に持っていくと理解した。
「ベッドまで行くと萎んでしまうだろう。ここでやるぞ」「風呂、洗面台・・・」「その前に鍵を閉めよう」私の指示に梢は玄関の脇の洗面所を見回した。どうやらその気になったようだ。若い頃、私は梢のアパートに泊まって帰る通い同棲をしていたので清く正しく美しい関係ではない。おまけに梢とはオランダで寝ている時に唐突に男性自身が臨戦態勢になってそのまま性交渉を持ったことがある。あれで梢が生涯最後の女性になったと思っていたが思いがけず期日を更新できそうだ。
幸いなことに今日も作務衣を着ている。これが洋服であればベルトとホックを外し、チャックを下げて膝まで下ろしている間に儚い奇跡は終わってしまうかも知れない。その点、作務衣であれば下ろすだけだ。しかもズボンと違って圧迫感がない。
「鏡に顔がうつるから恥ずかしい」「俺はお前が感じてる顔を見ると興奮するぞ」結局、移動距離を最短にするため洗面台に梢の手をつかせて背後から挿入した。その瞬間、梢は高く顎を上げ、背筋を仰け反らせた。
考えてみると善通寺駐屯地の第15普通科連隊で勤務していた頃、富士演習の帰りに守山駐屯地に宿泊して佳織と入ったカーホテル(他に入ったことがない)もベッドの周りの壁はガラス張りになっていたがあれも男性の興奮を誘うためなのだろう。
「これは夫婦としての・・・ウンッ・・・アン」確かに梢が言う通りこれは夫婦になって最初の性交渉、夫婦の営みだ。それにしても梢の女性器も性交渉はオランダ以来なので刺激に敏感になっているようだ。若い頃にはアメリカ海兵隊のジュディ軍曹を相手に22回連続の肉体関係を達成して風景が白黒になる煩悩が完全に尽きた体験をした私だが今回の男性自身は固くなっただけで勃起と言えるような状態ではない。
ジュディ軍曹と言えば那覇基地の隊員クラブ・ブルーコラルで催された普天間基地との日米協同訓練の打ち上げで知り合った後、基地内を案内していて体育館に行くと妙に怪しい雰囲気になって2人とも性的に燃え上がり、体育館の裏のスカッシュ・コートの建物陰で一戦交えたことがある。あの時はジュディ軍曹の方が足が長かったので後背位は厳しかった。その点、梢の身体は私に丁度良いようにできている。
「あーあッ、萎んじまった」私の臨戦態勢は何も発射することなく時間と共に停戦になってしまった。梢は洗面台を覗き込むように下を向いたまま深く溜息をついた。それでも梢が言う通り2人とも諦めていた夫婦の営みを経験することができた。
私たちは事実婚まで至っていながら愛知の親族の凶気によって引き裂かれた。だから結婚願望は誰よりも強く切実だった。オランダに梢が同行して事実婚が再開したが正妻の座は佳織が保持していた。梢がその正妻に勝ったのはオランダでの夫婦の営みで生涯最後の女の座を奪ったことだった。そして正式に夫婦となった今、再び奇跡が起こった。
「貴方の身体って優しいのよね。時々奇跡を起こして私を幸せにしてくれる」「そうなんだよ。今回も原因が判らないから『また次に』と言う訳にはいかないんだ」本当は衛生学校の中村昌代准尉が勧めたバイアグラと言う非常手段もあるらしいが副作用が怖い。それでも用意してあった夕食のオカズは何故かレバーのスタミナ料理だった。
  1. 2024/02/22(木) 17:04:52|
  2. 夜の連続小説9
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<2月23日・名誉革命でオランダ君主と妻がイギリス国王に即位した。 | ホーム | 2月22日・日本で最初に撃墜した生田乃木次ポツダム少佐の命日>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/8959-8304425b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)