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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ745

「サクラ(モリヤ志緒大尉のタックネーム)、ディス・イズ・シーガル(かもめ=同僚パイロットのタックネーム)、ハウ・ドゥー・ユー・リード・ミー・オーバー(感度はどうだ)「ディス・イズ・サクラ、ラウド・アンド・クリア。ハウ・ミー・オーバー(感度、明度共に良好、こちらはどう)」東シナ海上空では嘉手納基地を飛び立ったモリヤ志緒大尉が先に哨戒に当たっていた同僚・シーガルと交代していた。
「中国艦が北上しているのを追跡して奄美海域まで入ってしまった。岩国のオルカ(シャチの学術名=同前)とレイ(魚のエイ=同前)に引き継いでからそちらに戻るから夜間飛行を楽しんでいてくれ」アメリカ海軍が岩国基地にPー8哨戒機を派遣したのは韓国軍の脱走兵の漁船を使った侵攻に備える海上自衛隊からの要請に応えただけではなく独自の運用も考えていたようだ。日米ネービーの役割分担で中国海軍を担当する以上、北海艦隊の軍港が集中する黄海の沖にまで監視空域を確保する必要がある。
「奄美海域ではペガサス(海上自衛隊沖縄航空基地の第5航空群のコールサイン)が中国漁船を監視しているでしょう」「うん、鹿屋のPー1と那覇のオライオン(Pー3C)が仲良く飛行している。中国漁船が引き返すまで監視を継続するらしい」福生市ではサクラの父親が元航空自衛官、それ以上に元海軍少年とは思えない素人染みた見解を述べていたが、アメリカ海軍や海上自衛隊の哨戒機は高性能なレーダーとソナー(音響探知)で監視するので当然夜間も継続できる。中国漁船が離島への上陸を目的にしていることが判っていて引き返すはずがない。
「中国艦が漁船に接近するぞ」「どうしたの」「正確に言えば漁船の船団の行動海域に入ろうとしている」今夜は月齢が若いので上空から目視するには月明かりは十分ではない。つまりシーガルはTACCO=戦術航空士からの情報を請け売りしているのだ。
今朝、中国漁船の大船団が黄海から東シナ海に出てきた時にこの中国海軍の駆逐艦は福建省の福州基地から単独で姿を現して東シナ海を大陸沿いに北上してきた。福州基地であれば東海艦隊に所属していることになる。一方、漁船団が出航した黄海は北海艦隊なので護衛・掩護と言う任務は考えにくい。
航路から言えば尖閣諸島は通り道にあったが中国共産党は日本の海上保安庁に相当する海警を海軍に編入し、海軍の巡洋艦の兵装はそのままに塗装を白く塗り替えただけで警備船にして実態は海軍と同等に強化する狡猾な手法を弄しているので、警備船よりも小型でも軍用艦を接近させるような失策は犯さない。これまでも日本を挑発して対応を強化させることで海警の行動をエスカレートさせてきた。
「Pー1が来たぞ。このままではランデブーになるな。ネーバル・ジエー隊(海上自衛隊)としてはサクラの希望だろうがそこはクジ運が悪かったと諦めてもらおう」母親似で美人に分類される志緒大尉は厚木基地への飛行で海上自衛隊のパイロットたちにも人気者になり、自衛隊の情報共有でサクラのタックネームと共に陸将補の娘、アメリカ空軍の輸送機パイロットの孫であることまで知れ渡っている。その頃、私はオランダ在住だったのでアイドルの情報には加えられていない。
「おッ、漁船で照明が点いたぞ。高度を下げて目視で確認しよう」「ラージャ」シーガルは志緒大尉と通話状態のままコパイ=副操縦士に声をかけた。これでは実況中継を聞くことになるが第三者に事態を把握させるには適切な処置だ。
「わッ、フレアを放射しろ」「ラージャ」「ECM(電子戦装置)を作動」「ラージャ」「回避行動をとる。搭乗員は身体を確保しろ」唐突にシーガルの音声が緊迫した。状況から推察すれば中国漁船の乗員が海上自衛隊機と誤認して携帯式SAMを発射したようだ。シーガルのPー8哨戒機の高度は判らないが携帯式SAMは停止状態で発射されて上昇しながら加速するが重量は軽くても推進力が弱いため速度は比較的遅く到達までに時間的余裕がある。ただし、原型は旅客機のPー8哨戒機は急上昇、急降下、急旋回などの飛行性能が劣り、戦闘機のようにはいかない。
「初弾回避、フレアに引っ掛かりました」「2発目視認、フレア放射」「ECM作動」・・・「オー・マイ・ブッダ」この戦闘の実況中継は5発目で途絶えた。
  1. 2024/02/24(土) 15:33:10|
  2. 夜の連続小説9
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