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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ748

「モリヤ検事、今日はこちらに来られませんか」志緒大尉からの電話を終えて梢と遅れ気味になった朝餉を食べていると再びスマートホンが鳴った。今度の着信はラベルのボレロなので身内や友人ではない。最近、スマートホンに掛けてくる第3者は中央警務隊本部の鬼頭3佐が多いが案の定だった。
「立ち入り許可がもらえるなら今日から行くけど海自が中国艦を撃沈した事案は詳しく状況を教えてもらわないと見解を示せないな」「その情報もご存知なんですか」梢は相変わらず加倍派叩きの政治スキャンダル以外の話題を取り上げない日本のニュースは見ないでAFNにチャンネルを合わせている。鬼頭3佐にもスマートホンが拾った英語が聞こえているはずなので「情報源はAFNだ」と思ってもらえると有り難い。
「中国艦が漁船団と合流してアメリカ軍機を撃墜するのを指揮したのが原因だとしても今の外務大臣にそれを中国に認めさせることができるかな」「現状ではいくら外交官が頑張っても外務大臣は昔の外交貴族の感覚でご機嫌取りを始めるから台無しになってしまうようです」私がオランダに赴任したのは加倍政権が復活した直後だったので外交官の世代交代が始まってヨーロッパの主要国の大使に収まっていた外交貴族たちは実際の外交には影響を及ぼさない閑職の天下り先を斡旋されて次々に姿を消していった。そうして中曽根政権で種を蒔かれながら日陰に置かれていた戦略的外交の担い手たち舞台の中央に踊り上がった。その結果、ヨーロッパでも民政党政権の時には「もう終わった」と見限られていた日本の評価は反転急上昇して私の国際刑事裁判所の検察官としての仕事にも大いに力を与えてくれた。実際、日本では全く報道されていない紛争の現地調査で戦地に赴くと外交官と思われる日本人の姿を見ることがあった。
「それじゃあ何時もの時間に顔を出すから昨日の朝からの事態を時系列に沿って説明してくれ。日本の新聞とテレビは全く報じていないからな」「CNNもね。BBCは少し触れてるけど」私の返事を聞いて梢が声量を押さえて独り言を呟いた。梢はA日新聞の夕刊で加倍派叩きが始まった翌日から日本のニュースは天気予報とローカル・コーナー以外は見ていない。代わりに衛星放送の海外ニュースばかり点けているが、それでもアメリカのCNNはパレスチナ問題が中心だ。ロシア軍が北海道と新潟で敗北してからは日本での武力紛争を報道することは殆どなくなっているらしい。一方、BBCは新潟での戦闘が終結したイギリス人義勇隊員たちが西部方面隊への配置換えを志願している話題を紹介して九州でも取材した結果、中国の脅威の高まりを実感して追跡報道を怠っていない。中東のアルジャジーラがパレスチナ一辺倒なのは仕方ない。
「昨日の午後、下甑島の手打地区で42即機連隊(第42即応機動連隊)の1個中隊がトラックで移動中を待ち伏せされて全滅したのはお知らせしましたね」「続報はなかったが」「先遣隊が現場に引き返して襲撃部隊を壊滅させました。その後、8飛行隊が高遊原から空輸した42即機連隊の待機部隊が手打地区一帯を捜索して発見した残存部隊100名前後を各個撃破して下甑の事案は解決したと見ています」最高検察庁から市ヶ谷地区の中央警務隊本部に向かった私に鬼頭3佐は要望通りに昨日の朝から発生した中国軍の漁船団による事態を時系列に沿って説明した。つまり甑島群島では上甑島北部の東岸に於いて上陸を図った漁船団を壊滅させた一方で下甑島南部に上陸させた中国軍に待ち伏せされて1個中隊が全滅させられたことになる。その上陸した中国軍100名前後も各個撃破したのだから事態は解決したと見るのは常識的判断だろう。
「次に五島列島ですが福江島南方の玉之浦沖で再集結した中国漁船を目達原の陸自西部方面航空隊のAHー64が攻撃して全滅させました。ただし、別行動を取っている漁船が五島列島内の無人化した島に接岸していますが対馬警備隊が各個撃破しています」これは聞いていない。五島列島には航空自衛隊の福江分屯基地の第15警戒隊に新田原基地で待機している第1空挺団の普通科大隊と対岸の竹松駐屯地に移駐している対馬警備隊を派遣する作戦計画は聞いているがマスコミが加倍派叩きを始めてしまったので実戦が始まってっからの推移は承知していない。何にしても志緒大尉が関わった昨夜の戦闘に辿りつくまでには随分と紆余曲折があるらしい、
  1. 2024/02/27(火) 15:56:50|
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